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セミナーA
「今語る、シェンムーのすべて」

鈴木 裕(ゲームプロデューサー、(株)セガ・エンタープライゼス執行役員兼ソフト研究開発本部第2ソフト研究開発部部長)
コーディネーター:浜野保樹(東京大学大学院助教授)

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■SeminarA

鈴木 裕氏、浜野保樹氏

●浜野:鈴木さんの作品は、アクションにしてもレーシングにしても、すごいリアリティがあるのですが、今回も壮大なストーリーをもっていて、鈴木さんのイメージがすごく飛躍したゲームだったのではないでしょうか。それはなにか鈴木さんの中で新しいゲーム感とかがでてきて『シェンムー』に繋がっていったのですか。

●鈴木:ゲームセンターの稼働時間と考えると、一日に可能なゲーム数が 200回。100円のゲームだと2万円。 200円だと4万円です。ユーザーに気に入られる前に、まずゲームセンターの人が、お金が入らないと買ってくれないので自ずとゲーム時間3分になっちゃうんです。ただ、どうしても3分だとすごく辛いんです。83年にセガに入社してから、ずっと3分のゲームを作っていましたが、3分だといろんなことができないんです。それで一つだけ選んで掘り下げていくスタイルで、フライトシュミレータとか、ドライブゲーム、ファイテング・ゲーム等やってきましたが、そのSFみたいなシューティングも一通 り手をつけたので、そろそろ全ての要素を取り入れて総合力で総合エンタテインメントという形で一つチャレンジしたいといました。RPGというのは、お金がかかるわけです。ぼくの経験を総合的に生かして一つの作品を作ってみたいと、時間制約のないRPG的なもの、トータルのものを少し作ってみたかったんです。
『シェンムー』は本来、3部作位で作りたかったんです。なにぶん、あの手のものを作るのは初めてなので(笑)。ゲームを作るのは好きなのですが、僕自身はあまりゲームをやりません。そういうタイプの人なので、あんまり知らない。でも知らないことは武器にできると思っているんです。やっぱり作品で大事なことはオリジナリティだと思っているので、なるべく他の分野の情報を入れるようにしてますが、ゲームの方の情報はわざと遮断する場合があるんです。知らないと真似しようがないので、オリジナリティを大事にしようと思って、他のところから刺激を取るんですけども、ゲーム業界からなるべく刺激を取らないようにしているんです。

●浜野:将来クリエーターになりたいという人も多いので、『シェンムー』の中で、この辺はちょっと見て欲しいっていう技術的な部分等、お話しいただけますか。

●鈴木:技術的なところは、例えば今までのタブーだったことに挑戦しました。宮崎駿さんのアニメの中でぼくが一番好きなのは『ラピュタ』なんですが、本業の方たちの評価は、『もののけ姫』がすごく高かったりします。ユーザーの方とはちょっと違う観点で技術を切り取って『シェンムー』を見ていくと、いろんな技術にチャレンジしています。
まずコンピュータ・ウェザーシステムというのがあります。4WDの車の宣伝などで使われていて、雨から雪や嵐に変わったりするのですが、デジタル・ドメインがとりあえずノーインタラクティブで作ったもので、これをリアルタイムに変化させようと「マジック・ウェザー」という名前をつけています。 今、雲の形が変化していくところまでいっていて、空もすごいリアルになって、1章ではまだ入らなかった技術がどんどん膨らんできています。あと圧縮技術ですね。数式ですから、フーリェー級数とかを使って波を作ったり、そうなってくると、フラクタルの式を使ったりして、場合によっては50万分の1という圧縮レイトを実現できます。あとはポリゴンは頂点データを、テクチャのプリムティブなデータを持っていて、貼りつけながらレンダリングを自動でやると、種で持っておけるんですよ情報を。だからなんというのか薔薇の花束をトラック一杯持って歩いている状態が、ポケットに種だけを持って歩いている状態になるという、そのくらいの違いがあります。ただ技術的には、その種1000分の30秒以内で解凍して、そこに出現させるっていうのが気になるんです。プレイヤーがボタンを押してから、まあ『シェンムー』は秒間30枚ですから、プレイヤーがボタンを押してから30分の1秒の間に全てを計算して、そこに画像として結ばせる、出現させるっていう、そこの部分がやっぱり一番の我々のノウハウかなって。

 
 

●浜野:それで鈴木さんが『バーチャファイター』で革命を起こした。これまでのゲームは基本的に紙芝居です。絵をぱっと出してキャラクターのぺたんとした絵を切り替えながら動いているようにごまかしていたんです。『バーチャファイター』で本当にリアルタイムで三次元で初めて家庭用のゲーム機の中で実現しました。『シェンムー』っていうのはそれをリアルに、紙芝居でなくて全部リアルタイムで3Dでやっているわけですか?

●鈴木:全部リアルタイムです。それで1秒間30フレーム。ムービーは使っていないですね。

●浜野:デジタル・ドメインと違うというのは、その用意をしてなにかじゃなくて、リアルタイムで天候がゲームする毎に変わっていくわけですね。

●鈴木:言い方を代えると、あるものの元になるものがあって、それを凝縮させてから、例えば生のものを冷凍して解凍してからっていう形なんだけど、その生のものっていう状態をなしにしてジェネレートするんです。だから無から有を産むみたいなものです。『シェンムー』では、それに対する研究を随分しました。例えば半径10キロの迷路を作っても、半径 100キロの迷路を作っても、それはデータがほとんどない状態で、その迷路を遊ばすことができるということです。その技術をどうゲームの中で生きるように企画するのかというのが一番大事なんです。ですから技術だけあってもゲーム的に楽しいところとちょうど重ならないと。一応エンターテインメントなんですね。技術と感性の融合がないとちょっとまずいです。 映画の場合でも、雨はカメラで撮っても実際には見えないらしいですね。だから映画では実際の5倍位 降らすといいます。
ゲームの場合も一緒で、普通の雨を作っても見えないんです。こういう粒の表現をパーティクルと呼んでいるんですけども、雨のパーティクルはいろいろ研究した結果 、長さが15cmで幅が1〜1.5cmのものを上から降らすと一番雨っぽくみえます。あとは半透明を使ったり、柔らかい感じを出したり、外のエッジを削って表現したりしています。雪なんかもちょっと大きめの雪を使った方が効果 があるみたいです。だいたい直径5cm位のものですね。その辺がノウハウかな。あと1粒ずつクロスしたり数式で空から降らすといった感じです。 リアリズムの追求じゃなくてリアリティーなんです。どこか一個だけ完全実施、現実と同じようにできる箇所ってあるんです。全部は無理です。現実は振り向けばそこにも景色はあるし、コンピュータで用意された以上にたくさん降るし。だから、スーパーリアリズムを求めているわけではないんです。リアリティーです。現実感の方、それが大事なんです。現実よりも少し上げてトータルバランスで、実際にリアルと感じるところに、あえて強く表現してバランスでリアリティーを求めていくというやり方です。 黒沢さんの場合もフイルムという限定条件下ですから、やはりそこでの調整をやってらっしゃると思います。 『バーチャファイター』の頃でも、おそらくモーション・キャプター・システムは世界でも我々が一番進んでいたと思います。このところ他の会社もモーション・キャプターズ・スタジオを作って、そこでノウハウを貯めてきていますから、そのスタジオを使うとかなりいい動きができるようですね。我々も人物用に新型システムを用意してテストを繰り返しているところです。キャプチャリングしたデータとデータがそのまま繋がらないんです。全ての動きに繋がるようにするというのは、データが増えてしょうがないんです。 『バーチャファイター』のパンチって1個のデータしか持ってないんです。1個のデータから相手の、そのどちらかというとインバスキマルティックという技術で、その相手の行って欲しい位 置の方を最初に、目標のポイントとして空間にセットすると、1個のモーションがそこに行くように変化してそこに届くんですよ。
簡単にいうと、結局インバスキルマティックという技術は、その支点と作用点みたいなのですが、専門用語でいうとリーフというんです。セブンリーフで動かすんだけど、動かす目標地に対して向かわせるポイントをリーフといってて、そのリーフをコントロールします。だから足の先とか手の先、頭のてっぺんというのが『バーチャファイター』のリーフなんですよ。そうするとリーフを移動したい時にはリーフを動かして、逆演算して出してくるというやり方ですね。これがインポーズといって、これでデータの量 を減らせるんです。計算の処理時間がすごいヘビーなんですけど、これをきちんとやるときれいにとれるんです。 例えば、ドリームキャストのCPUでどれ位の計算ができるのかとか、ハードウェアのパワーが上がって、ソフトのアルゴリズムを最適化するとどんどん良くなるんです。肘をこっちから先の向う側に曲らない情報とか、筋肉の計算、緊張度とかそっち側にいかないというそれぞれの制約条件を全部入れていくと、どんどん人間らしい動きになっていくんです。
このところいろんな会社が、いろんなハードを投入してきますから、一番皆さんが気になるところは多分ポリゴンスだと思います。ただ、ポリゴンがたくさんでた時に、データベースとしてその頂点データをモーション分、フレーム倍フレームで持っていたら、どんなメモリがあっても絶対に足りない。だからあの計算でリアルタイムでやるようなことを考えないと、それだけハイパーフォマンスなゲーム機の能力を引き出せないですね。メモリばっかり食う構造になって、結局引き出せなくなるんですね。これからは、データ量 を減らさないと。プログラムというのは5万桁書いても、よしんば50万桁書いても、50万ステップのプログラム書いても全然平気なんですよ。メモリに対してはすごく小さいですよ。データというのはばかみたいに大きい。だから何10メガ積んでも全然足りなくなります。ですからその辺ね、計算で、いまみたいなことやっていかないと、おそらくハードの能力というのは、もうそこがボトルネックになってできなくなります。だからよく言うのは、そこの研究をしていないところは、おそらくハードを投入してから本当のそのハードの能力を引き出すのに3年から5年かかるとよくいわれるんですよね。

●浜野:鈴木さんも時代の先をいって、逆に他のゲームデザイナーがついていけないような状態です。若い人たちがいらっしゃるので、ここでしか見られないメーキング映像を使って、『シェンムー』について、是非お聞きしたいんだけれども。

●鈴木:いまメーキングの映像がちょっと出たんですけれども、ストーリーボードっていうことを開いたことがあると思うんですけど。その演出する際のやり方とか音から先に作るやり方とかというのは、やっぱりいままでぼくの作ってきたゲームじゃなくて、少し映画的な演出もこの先入るだろうし、いろんな人達と一緒ににジョイントして仕事しなくちゃいけなくなるだろうということで、『シェンムー』が始まる前からずっと、いつかそういう時が来るだろうといって意識していました。よくディズニーからゲームを作りたいんだけれど、テーマパーク作りたいんだけどどうしたらいいかなあと相談があったり、ディズニーのイマージニアの人からもMGMスタジオの人とか、あとスピルバーグとか、ドリームワークスというところ作ってずっと交流があったもので、映画の勉強はもちろん、作っているところも見たいので、ディズニーなんかには良く顔をだして、どういう作り方をしているかなあとか、スピルバーグが『ジェラシックパーク』を作っているところへ行ったら、やっぱりすごい模型作っていました。いろいろ作り方とか見ていてゲームに応用できるものはなんなのかということで、まず真っ先に応用したのがストーリーボードなんですよ。ただストーリーボードというのは、由来がまさにストーリーを貼りつけるボードですね。1フイートで30センチ位 でしよう。そうするとなんか日本の昔の言い方である1尺に近いですよね。1間1尺というスケーリングとあの向こうのフイートというのが合ってて、ちょうど彼等が使っているストーリーボードの大きさが日本でいうとたたみ一畳分の大きさに等しい。それに対して彼等がA4の場合もあるし、A5を使って1枚のボードに貼りつけます。ディズニーの場合はそれでだいたい2分から2分半のストーリーをそこに書いちゃうんですね。このやり方がいいとのでちょっとやろうと思って、絵を邪魔しちゃいけないからピンの色は銀色なんです。色が入るといけないし透明だと邪魔するし、銀色って絵に反射して、赤っぽい絵は赤に写 るから。絵を邪魔しないんです。銀色のピンを使ったり、そういうことから始めて作り出して、でも彼等と同じやり方をするとストーリーボードが20万枚いるという計算になるでしょう。だからゲームとは全然違う。ゲーム用にいろいろ直さなくちゃいけない。音楽から作るのもディズニーも時々やることですね。これはいいなあと思うことは試したりして、映画の方の制作の仕方もいろいろ勉強しつつ、初期の頃は作っていったんですよ。だからゲームの作り方ではなくて、どっちかというと違うところからのノウハウで『シェンムー』にチャレンジしたんです、昔は。

●浜野:実は日本の映画の制作って全然違うんですけど、アメリカは必ずシナリオができると、そのプリプロダクションという制作に入る前に、いま鈴木さんがご説明になった絵のコンテを必ず描いて壁に貼って、シナリオライター、監督、プロデューサー全部集まって時間の流れも全部計算してシュミレーションして、そこでやめる企画っていうものも山ほどあるわけです。
日本の映画は、もう現場に行かないと撮影のポジションもわからない。どういう絵になるかっていうのは監督の頭にしかないということがあるんだけど、作品を全部シュミレートしてみるためにストーリーボードってのはものすごく大切なんですね。イメージを決定するという。だから『シェンムー』のテストというのは、やっぱり映画のテストにすごく近いという感じしますよね。そういうところから始まったというのがね。
 
●鈴木:まあ、応用できるところとできないところがあるんで、試行錯誤して、これがいけて、これはちょっと使えないということが分かってきたので、やっと『シェンムー』あたりからまともに動けると思います。あとは地図みたいなものが出てきたんだけど、デザイナーに創作で作らせた。街というのはなんか歩いてみると嘘っぽいんです。ですからなるべく航空写 真を手に入れて、航空写真でゲームに都合の悪いところだけちょっと直していく。航空写 真というのは道幅からなにからもとにかくリアリティーがありますから、それをいじってゲームのあるものにしていくっていくという手法です。ただ実際の景色でゲームで一番使いにくいのは何かというと、ずっと見えている場合なんですよ。例えば4キロ先まで、建物があったらね、どんなハードを持ってきても距離の二乗で増えますから、そのポリゴン数が面 積ですから。

●浜野:奥まで情報がたくさんあるからリアリティーが無くなるんだよね、逆に。

●鈴木:そうすると同じポリゴンを、この60メートルまでで全部使い切るか、4キロ先まで使い切るかというと、もうリアリズムが逆に違ってきちゃって、だから遠くまで表現できるようになるっていうのは、CGの進化の、皆さんが見方のすごい簡単なことですね。いまのドリームキャストで自分が決めた距離というのは64メートルが限界で、海みたいに真ん中に何も無くて向こうに山みたいなのがあっていいんですけど、こう密集地の場合は『シェンムー』の場合は、64メートルが限度っていうことにしています。『シェンムー』の決め方は64メートル行くと必ずどこかで曲っています(笑)。曲げて建物で塞いで隠すんです。64メートルが遠くにあるように見せなくちゃいけない。そうするとカメラでいうと、一眼レフのカメラを覗くと実際の景色と近いのが50ミリのレンズといわれているんですけど、35ミリのカメラでね。広角レンズで撮ると実際の距離よりも遠くに見えるんです。
ですから『シェンムー』の場合は64メートルで、それでまともにやると手前しかでていないように見えちゃうので、広角レンズを使って距離感を出して、ポリゴンの数、密度感をやっていることですね。やり過ぎると今度は歪んで見えちゃって、気持ち悪くなっちゃうんですよ。28ミリ位 の感じかな。

●浜野:よく押井守監督が、人間はカメラの記憶を通して映像を見ているといます。だから裸眼で見ているものが映像で出てくるわけではないんですね。皆さんも何か映像を見ているというのは、ゲームにしても何にしてもある種の、皆さんが映像で慣れ親しんだカメラを通 したカメラのくせで映像を見ているわけです。だから、そういったものまで鈴木さんは、そのゲームの中で表現をして、カメラの28とか50とか。カメラのくせを使いながら、そういうものを見せているからリアリティーが出てくるんですね。そこまで考えてカメラの種類まで考えて映像を出しているわけですね。 それで、ちょっと個人的な興味ですけど、スピルバーグに会って得るところありました?

●鈴木:やっぱりなんたってスピルバーグですからね。うちの社員にも大フアンがいるわけです。サインを貰ったら一生鈴木さんについていくからと言って、とにかくサイン貰ってくれって。三人位 いるんですよ、サイン貰ってくれっていう人が。しかも、スピルバーグはサイン嫌いだという情報が。じゃどうしようかと、ずっと後ろに色紙を持って、いつ言い出そうかとやっていたんですけど、なにかひょんなことからスピルバーグがぼくにサインくれと言うんです。理由を聞いてみたら、10歳でマックス君という息子さんがね『バーチャファイター』の大フアンだといって、あのどこの世界もお父さんの職業には子供は興味ないんですね。うちの子も『シェンムー』よりも『セーラームーン』だったりしていますから。なんか、まあスピルバーグみたいな人が最新技術を常にSFXも実写 もやるんだけども、常に見ている方なので、『シェンムー』そのものじゃなくて、『シェンムー』がチャレンジしている内容の可能性に対しては非常に興味を持っているようです。ただスピルバーグの場合は、何やっても絶対売れちゃうのであれなんだけど。
個人的にはやっぱり新しい技術に興味があると。ただ、どちらかというとスピルバーグよりも、『マトリックス』のウォシャウスキー兄弟とか新鋭の人たちの方が、彼等のいうインタラクティブムービーに興味持っているみたいですね。ちょっとインタラクティブムービーの話していいですかね。ぼくは映画の専門家じゃないんで、ぼくが喋るのは変なんだけど、彼等から聞いた話を言えば受け売りになっちゃうかも知れないけど、だいたいスピルバーグとか、キャメロンとかのスーパーヒットメーカーは別 として、ハリウッドの映画の産業というのが、頭打ちしているっていわれているんです。マーケットをこれ以上に伸ばすにはどうしたらいいんだろうみたいな話になってきて、それで映画を上映してとんとんだったり、映画館で上映しても、開発費がでない場合も多々あるんですって。ですから、それで結局作品に対するコストをどこで回収しているかというと、セルビデオ、らしいんですよ。多くのハリウッドの産業に携わる人が、セルビデオが非常に重要な要素で、皆さんご存知のようにセルビデオは借りることができるんです。コピーできるから。するとなにか彼等はゲームを見ているんですよね。ぼく等は映画を見ている。 彼等の一部はすごくゲームに興味を持って見ている。ゲームは借りるという感覚じゃないですよね、売れるんですよ。買うんです。なんで買うのかというと、やっぱり圧倒的に映画との違いはリピート性にありますよね。『ぷよぷよ』を何十回何百回やるし、『バーチャファイター』も1回やって終わりじゃなくて、何回も何回も繰り返しできる。そのリピータブルだということに対してすごい興味があるんです。1回借りて返すんじゃなくて買ってもいいという感じになります。ですから、本当に買ってくれる映画というのは、コレクション相手になるのは日本でいうと宮崎駿さんのものとか、アメリカでいうとディズニーですよ。なんでかっていうと、お母さんが道徳とか教育のために倫理観を伝えるために買って、子供のためにと思って買ってもいいという。それ以外のところはセルビデオなんだけど。レンタルで済まされるんですよね。ゲームの場合はそういう道徳的な意味を持たなくても売れるので。どこで違うのかと見ていったらリピート性。どこでリピート性が違ってくるかというと、ゲームの場合は何回やっても変化するという部分にあるんです。まったく同じ展開にならないと。そこだと思います。だから映画の文化というのはなくならないで劇場上映は同じような形でいくんでしょうけども、セルビデオの方がDVDか何かになって、ストーリーかその本編を撮る時に何種類かカメラを回して違うストーリーを何種類かセットして、DVDでそのプレイヤーによって分岐させれば何種類かの変化になります。それで最終的には『シェンムー』みたいにプレイヤーの意志をこう即座に反映する形でこう変化するような状態に入る。
これからDVDの時代ですし、要はレンタルビデオの相手じゃなくなってコレクション相手に代わった時に、マーケットがでかく広がるということと、あともう一つ大きなところは、ハリウッドの映画の話も聞いてみると、すごいキャスティングにかかるお金がすごいらしいですよね。ものによってはもうだいたい半分位 、トム・クルーズとか、ビッグネームを使うとヒットの率が上がるんで、やっぱりキャスティングのお金がすごくかかっちゃう。
例えば、我々の『ハイポリゴンフェース』で皆さんご覧になったと思うけど、どんどん追い込んでいくと、『タイタニック』みたいにコンピュータ・グラフィックスのCGの人が実写 の人と一緒に動いてわかんない状態まできて、しかもインタラクティブにできるようになったら、俳優さんの肖像権だけ貰って契約して、それで俳優さんは肖像権と最後にできた時のチェックだけになるんで、俳優さんはもういろんな何社かに1年のうちに同時にライセンスして、その代わりにその肖像権だけなんで安く貰って、物真似さんを使ってモーションキャプチャして映画を作って最後に許可を得るということをやると、俳優さんもお金貰えるし、作る側も肖像権だけで6か月から1年拘束しなくなります。それで映画も安く作れるという。ですから製作費の削減ということと、我々がやっているようなインタラクティブなCGの可能性は、その映画に対する将来性に関して大きく関わってくるだろうということですね。
だから、『シェンムー』1個やりたいんじゃなくて、将来ハリウッドの人たちと一緒に仕事をする時代がくるであろうということを見込んで、ステップとして『シェンムー』を始めています。
ですから、その中ではそのためのいろんなチャレンジやっているんで、『シェンムー』1個を大ヒットに導こうとか、売ろうということたせけが目的じゃないところで『シェンムー』の開発がスタートしているので、やっぱり大きなマーケットで作りたいですよね。ゲーム業界もおなじマーケットだけで、ファイテング・ゲームのマーケットがあったら、どっかの会社が取るとどっかの会社が潰す。取りっこしてもしょうがないじゃないですか。新しいマーケット、ゲームでも映画でもない新しいマーケットを作るとそこでみんなが潤うので取りっこにならない。やっぱりそういうこと考えて『シェンムー』スタートしていますね。

●浜野:鈴木さんのおっしゃる肖像権だけっていうのは本当に技術的に可能な段階にきているから俳優協会の方でも、アメリカの俳優協会でも政府に働き掛けて、それができないような法案を作ってくれっていまやっているんですね。なぜかというと、トム・クルーズの顔は欲しいけど脇役やっていたりね、よく大部屋俳優の人の顔なんて欲しくないわけですよね。もうコンピュータで作ってやっちゃえばいいから、そうすると大スターの人達は顔を売っただけで、どんどん食えるんだけど、中級クラスの俳優が食えなくなるんで、人間が演技できる部分の役柄はバーチャルなキャラクターにやらせないという法律を作ってくれって(笑)。 いまものすごい働きかけしているんだね。かぶりものだったら、もうCGでも何でもわかんないわけですよね。やっぱり新しい技術が本当にリアリティーを持って、表現できるようになってきて、それでインタラクティブムービーというのは昔からルーカスも興味持っていたり、いろんな人がチャレンジしたんだけど。まあ成功してきませんでしたよね。

●鈴木:まだインタラクティブなノウハウは、まったくノーインタラクティブできていますから、ハリウッドの人達もないんですよ。まだインタラクティブなこと必要なかったですからね。いまからだと思いますよ。何人かは我々のところにアクセスしてきていますし。

●浜野:鈴木さんは勝算ありですか? 技術的にもちょっと稚拙だったという部分もあるし、いろんな問題あったんで、まあ映画人というリニアな時間軸を持った表現しか慣れていないんで、おっしゃるようなインタラクティブな文法みたいなものは知らなかったと思います。いろんなチャレンジがあって、ほとんどくだらない試みで終わっちゃったけど。 鈴木さんはリニヤな映像を作りたいとかいって、映画を撮りたいとは思わないですか?

●鈴木:ゲームの表現力がちょっとプアな場合、それもちょっと思うんだけど、いまの半導体の流れみていると、ある程度の表現はできるようになりますから。そうなると、その要素としてはゲームの方が多いんですよ。インタラクティビティとか、そのソフトウェアが介するという意味では、ただエンタテインメントに必要な要素の、非常にバランスよく入っているのがゲームなんで。そうすると、ゲームみたいなシステムを使って映画を作ることもおそらく可能になってきます。
ですから、別に映画がどうこうではなく、こっちの方が面白そうだなと。ただ映画のトラディショナルなノウハウとか歴史とか、いろんな販売ルートの件とかといろんな制約の中で、いまからぼくが作ったところで難しいですよ。いろんな面 でノウハウが違うし、それよりか、新しいこと仕掛けて、新しいマーケットを作るのがみんなのために一番いいと思う。新しいマーケットですよね。新しいジャンルですよ。こちらの方がいいと思う。そちらの方に意義を感じるんですよね。

●浜野:ゲームをやっている人もね。特にアメリカのPCパソコンを前提にしたゲームなんて特にそうですけど、まあほとんど、ほらネットワークってとこに目が向いていますよね。インターネットとどう連動させるかとか。まあ日本のゲームメーカーは、もう一つのモバイル系のゲームっていうふうにも言ってんだけど。鈴木さんは、そのネットワークとモバイルっていうのは、どういうふうにお考えですか?

●鈴木:ネットワークとモバイルは、まあ切っても切り離せないでしょうね。このところ、いろんなこと考えると5年前とは圧倒的に違うことは、まず携帯電話の普及とか、もちろんコンピュータもありますけど。インターネットと携帯電話なんですよ。やっぱり過去と大きな違いが。だからゲームの作り方も、謎解きを主体にしちゃうと5年前よりも情報がすごい早いですよ。インターネットと携帯電話によってコミニュケーションのスピードがすごく上がちゃっているから、謎解きを中心に作っても、謎が出た途端にばれてしまいます。
だから、どちらかというと作り方はこれからは謎解き中心よりも、教えられてもそこのシーンを体験して楽しくしとけば、体験した体験しないっていう点で、その話が展開するように持っていくのがいいと思っています。iモードもね、もう 500万台越えたっていいますし、おそらく今年中に1000万台越えるかも知れない。ある人の話では4000万台越える可能性もっているって。それでiモードはちょっと先にカメラを持って相手の顔がちょこっと写 るような形になってきます。そうなってくると、おそらく近々レゾリューションも 320から 200位にはなってくるので、簡単なゲームができるようになってきます。これで配信ができますから、例えばパントワイズも増やそうとしているし、レイテンシィも減らそうとしている。モバイルとはいっても、なんていうんですかね、結局ゲーム・ボーイみたいなタイプのものがおそらく携帯電話に変わっちゃうんじゃないかなと。
あとはそのノートブック型のコンピュータ、いま一番の問題はバッテリーなんですけども、ちっちゃく作る技術はもうできちゃっていますから、あとは値段とバッテリーの問題があるんですよ。バッテリーの寿命と価格の問題。でも、そろそろアメリカではパソコンをただで振りまく時代に入ってきます。そうなると、ちょっとPCはやっぱり先行き見ておかないといけないと思うんです。将来的には我々のやっているゲームコンソールというところが、こうPCの方とバッティングしてくると思います。だからPCのゲーム機もネットワークがあった方が絶対楽しくなりますよ、今後は。コンピュータ相手にやっても駄 目ですよ。コンピュータの能力って限られているから。コンピュータの能力と人間の頭とどっちが頭いいのっていうと、単純計算もそうだけど、ビット数からいろんな確率を考えると、人間の頭の方がよほどまだ利口ですから、人間の、相手の頭とこっちの頭が介して、それが複数になった時には、もう無限の展開になりますから、ゲームの奥行き考えたときには、おそらく、ネットワーク・ゲームというのはすごく大きなマーケットになります。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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