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セミナーC
「V・J」

平野友康((株)デジタルステージ、メディアクリエイター)
ヒロ杉山(ディレクター、イラストレーター)
宝生さふか(映像作家)
コーディネーター:池田洋一郎((株)ブラックブルー代表取締役)

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■SeminarC

池田洋一郎氏

●池田:クラブシーンを中心に、どんな若いクリエイターが育っているのか、実際に「motion dive」の開発に携わった平野友康さん、テイ・トウワさんのツアーにVJとして参加されているヒロ杉山さん、VJ活動をしながらインパクの編集の仕事もされている宝生さふかさんの3人の方に、現状のクラブシーンを紹介していただきながら、お話いただきたいと思います。最初に平野さんに実演していただきます。

●平野:僕は「motion dive2」というVJソフトを作ったり、VJをやったり、映像関係の仕事をしています。まず、VJ自体がどんなものか、漠然としている方もいると思うので紹介したいと思います。 (映像)
これは「motion dive2」のプロモーションビデオなんですが、この中に映像がいくつかでてきます。何人かのVJやモーショングラフィックスで活躍している個人・グループの作品を入れた形で出しています。セミナーAの原田大三郎さんの映像も入ってます。


平野友康氏

「motion dive」を作ったきっかけは、単純に映像を作りたかったからです。ミュージッククリップとか映画をやりたかったのですが、そういう仕事をしている人たちには「やめておけ」といわれました。その時にVJというものがあると聞いて、ちょっとやってみようと始めました。
家のMacで仲間うちのデザイナーと映像を作っていたのですが、どうやって映像を出すんだという話になり、VJと呼ばれる人に聞いたわけです。ビデオテープにデュープして、それを3台くらいで切り替えると聞いて、面 倒くさくていやになり、パソコン上でできるソフトを作ったのが「motion dive」の最初です。ビデオの場合、基本的に静かめのムービーと激しいムービーを何種類か用意しておいて、それをビデオミキサーで何となく切り替えてるだけなんです。タイミングなんて合わせられない。だけど、パソコンでやったら一瞬にしてタイミングが合うわけです。単純なVJの仕組みなんです。あとはミックスする。これをパソコン一台でやっています。2年ほど前はアナログのビデオミキサーが主流だったんですけど、一台20万円近くしました。遊び半分ではなかなか買えません。それが功を奏して、「motion dive1」「motion dive2」を出したらいろんな賞を総なめにして、ちょっとちやほやされました。そうなると、新しいソフトを作ってやろうとか映像を作ってクラブで気持ちよくなろうと思った人たちが悔しがって、その後いろんなVJソフトが出てきて、いろんなVJの人たちも去年当たりから騒がれるようになりました。基本的にクラブの中で、音楽に合わせて気持ちよく踊るために、DJや照明と一緒になって、映像を出すのがVJです。実際に音楽をかけながらやってみましょう。(映像)
クラブシーンでは踊っている人の気持ちになって映像を変えていきます。音楽が静かになったら、VJはいつ激しくなるかを待って、あうんの呼吸でやっていきます。

●池田:大金をつぎ込まないとできなかったVJ環境が、平野さんの開発された「motion dive」なら学生でもちょっと頑張れば使えて、しかも映像体験みたいなことを自分のパソコン上でできる。これはおもしろいと、はまっていく人がどんどん増えていると聞いています。それでは、ヒロ杉山さん。


ヒロ杉山氏
●ヒロ:僕はイラストレーションとグラフィックデザインをやっていて、仕事は家で一人でこつこつ描いたり、Macでデザインしたりなんですが、クラブでリアルタイムで音と映像を流すと、お客さんと一体化したり、盛り上がったり、リアルタイムで帰ってくるのがそれまでにない経験だったので楽しくて興奮しました。今日はVJと関係ないのですが、この一年くらいのCMとかプロモーションビデオの映像関係の仕事を持ってきたので、見てください。 (映像)
僕の場合、テイ・トウワさんのクラブイベントで初めて映像というものに関わりました。最初は既存にある映画のシーンを細かく編集して持っていったり、手がきのアニメーションでオリジナルの映像を作って会場に流したりとか、そういう所から映像に入っていきました。それがだんだん、仕事としての映像に近づいていったという感じです。それまで一枚絵ということでイラストレーションが完結していたところに時間軸が入ってきて、時間軸で絵が変わっていく。そういうことに興味を持ち始めて少しずつ映像関係の仕事が増えてきました。テイ・トウワさんのVJが先行して、それが大きかったですね。それまで家で一枚をしっかり仕上げる感覚だったのが、映像になると完成度よりか時間の流れでどう変化していくかということが、変ないい方ですが、一枚絵のクオリティはあまり重要視せずに流れという感じが大切になってくるのではないでしょうか。 テイさんの場合、帰ってきた当初はハウスミュージックだったんですけど、だんだんドラムベースに移行して、いまは2ステップなんです。そうすると使う素材も変わってきて、ハウスの頃の素材は全然使えないんです。2ステップは合わせるのが一番難しくて、いま苦労しています。
僕たちの場合は、いかに笑わせるかというのがテーマにあって、いかに変なネタを見つけてきて流すか。友だちみんながネタを持ち寄るんです。一回はまったのが、ドラムベースの時にふんどし姿で和太鼓をたたくビデオを持ってきて、それがドラムベースにぴったりあうんです。それがはまった時の気持ちよさは・・・ あとはいかに裏切るかというのもあります。ここでこれを流すかみたいな、そういうシャレですよね。その場の乗りとか、用意していったネタも流すタイミングがないと使えなかったりしますし、その場の雰囲気とか、やはり一番はライブなんです。お客さんがどういう状態かをDJと一緒に読みとる、そこが一番おもしろいし、気を使うところでもあります。

●池田:宝生さん、いまどのようなことをされているのかお願いします。
 

宝生さふか氏
●宝生:私は紹介できるほどのプロフィールではないのですが、もともと映像を始めたきっかけは、フジテレビのCGセンターでバイトをしていて、3DCGとか描いていました。その当時まだ、NT上で3Dソフトが全然走らない時で、それにも慣れてグラフィックソフトを使えるようになったんですけど、15秒の3Dアニメーションを作るのに半日はレンダリングにかかるような時期でした。2〜3年は続けたんですが、こんなのやってて何になるんだと思って挫折して、そのあと実写 に入りました。あと、クラブが好きで行き続けていたらDJの友だちがパーティをオーガナイズするようになり、VJをやってみないかということで始めました。

●池田:踊って初めてわかることってあるんですよね。すごく本能に目覚めるというか、クラブシーンは社会を変えつつあるようなパワーを持っていると思います。宝生さんはそういうところにいらっしゃるわけですが、これからそういうシーンはどうなるのでしょう。継続していくのでしょうか、どういう新しい流れができているのでしょうか。

●宝生:クラブに行くというクラブカルチャーが定着しましたよね。

●ヒロ:いまはパラパラが流行ってますが、そういう流行り廃りじゃなく、クラブカルチャー、クラブシーンみたいなものが日本に定着したと思います。宝生さんが女の子だけのパーティを開いたり、テイさんが18歳未満の子だけを対象にして、お酒もタバコもなしで夕方から9時10時に終わるような、そういう子どもナイトを企画して、若い子たちに本能的に音楽に接して気持ちよくなる感覚を味わわせてあげたいということも考えていたりしています。そういう子たちが大人になってくると、自分たちの文化でクラブシーンを捉えたり、西洋とかNYからくるクラブシーンだけじゃなくて、日本独自のシーンがどんどんできてくるのではないかと思います。

●池田:VJも自分の素材をどんどん作るというの方向はあるのでしょうか。

●ヒロ:それはあると思います。コンピュータや映像機器の発達で、ここ数年すごく簡単に編集ができたり、CGが作れたりするので、若い子はオリジナルの映像でVJをやっていますね。

●宝生:素材の話でいうと、私も結構自分で作ってるのですが、月に何本かVJスケジュールが入ると素材が追いつかないんですよね。それにあわせて一生懸命作ると割に合わないんです。ギャラは安いので仕事にはならないんです。

●ヒロ:みんな基本的にはちゃんとした仕事を持っていて、デザイナーなり他の仕事があって、VJは遊びですよね。おまけみたいなもの。

●平野:不思議なことに友だちがVJやっているとネズミ講方式に増えていくんです。あんまり難しく考える必要はなくて、僕も「motion dive」を作った後にびっくりしたのは、高校の時は、ビデオカメラとかを回して一生懸命作品を作っていたのに、家にあるパソコンで何でもできちゃうって気づいた時から変わっていきました。

●池田:「motion dive3」になると放送できる企画に近づいてくると聞いたのですが。

●平野:僕自身はVJは遊びとしておもしろいし、そこからプロがでてきたり、仲間が増えていったりするのがすごく楽しいのですが、もともとはインタラクティブなエンターテイメントをやりたかった。ソフトもインタラクティブ、VJもそうですね。お客さんとの対話だし。ソフトというのは、作る時にお客さんがどんなことを考えてボタンを押すか、どんなことをやりたいかとかを考えますが、ソフトを作る上で一番大事なことは“お客さんのいうことを信用しない”ことです。これは僕の持論で、ユーザー登録ハガキは全部読みますが、こんな機能がほしいという要望を鵜呑みにしません。「そういってるけど本当はこれが欲しいんでしょ」という提示が、ソフトで一番大事なんです。VJの場合は、VJソフトがいっぱい出てたり、VJ自体の発表する場所が増えてきたりとか、VJソフトとしては円熟期に入ってきています。6月に「motion dive final」という最後のバージョンを出すんですが、脱VJを裏テーマとして、家で友だちとプロモーションビデオを簡単に作れる。それが放送クオリティでも出せるという一歩進んだ形のソフトで、もっと安価で出そうというものです。いま皆さんが買うマシンは、WindowsだったらPentium3、MacだったらG4です。となるとプロと同じです。それなのに、なぜかみんなインターネットとメールをやって終わりなんです。20〜30万円出してそれはないだろうと思うんです。結構高度な遊びもできるんです。プロ用ソフトと似たようなことができたら、絶対プロになりたい人は物足りなくなるんです。そうなった時に、そこまで連れて行ってくれるソフトはないんです。ユーザー登録ハガキでこういう機能がほしいと皆さんが出したアイデア以上のものは出してくれないわけです。それで「motion dive」という名前で全然違うコンセプトのソフトを出すことにしました。

●池田:ヒロさんはテイさんのライブの時に構成を考えてやられるのですか。

●ヒロ:全体の構成はあまり考えていません。テイさんの中には流れみたいなものがあると思いますが。優秀なDJはみんなそうなんですが、彼自身がお客さんの顔色とかを見ながらどんどん曲を変えていくので、最初の曲すら決まっていない状態で始めます。一番大事なのは、お客さんがいま何を求めていて、こういう曲は飽きてきているというのをいかに読みとっていくか、あくまで音に合わせての映像なので、テイさんが主導権を持っていて、僕はそれに合わせていくんです。

●宝生:私は音響も映像もDJ、VJも、その他のスタッフも全員女の子というパーティをやっています。女性は結婚すると家にこもってしまいがちなので、いつまでも魅力的な女性でいるために、音楽を楽しんだりできるように、パーティの会場に託児所を設置したりもしています。(映像)
最初は、ちょっと大きなプライベートパーティみたいな感じで600人くらい入ればいいと思っていたのですが、当日1500人入りました。

●池田:これから可能性として、音楽も映像も含めてどのようなことが予想されるのか、これからどうなっていくのでしょうか。

●平野:僕個人としては、VJはあまりやらないつもりです。VJというカテゴリーでは、だんだんなくなってくると思います。VJは一つの遊び方だと思うんですけど、今年は“おうちでVJ”という「motion dive final」と“デジカメでVJ”というのを出そうと思っています。とっても気持ちいいし、どうしても普通 の女の子にもデジカメでVJをやってほしいんです。実は「motion dive」を作り終えてすぐに思いついて暖めてきました。

●池田:ヒロさんは今後、どのようなことをやりたいと思っていらっしゃいますか。

●ヒロ:そうですね。VJというのは、僕の中では遊びの一つであって、仲のいい友だちがクラブイベントに集まって、DJやってVJをやる。それはそれとして、仕事にする気もないし、楽しめればいいというもので、それと同時にそこで得た映像の感覚とかを活かして映像作品を作ったり、そういう方向に意識が向いているのは確かです。VJはブームになりましたが、だんだん本当にやりたい人だけが残っていくという気がします。

●池田:本業のイラストの方ですけど、デザイン関係に進まれたい方も会場にたくさんいらっしゃると思います。アドバイスをいただけますか。

●ヒロ:一番は興味を持てるかもてないか。イラストレーションに関していえば、頭より先に手なんです。とにかく手を動かして描くということ。一番イラストレーターになれないタイプは、頭の中だけで終わっちゃう人です。どうなるかわからないけど、とりあえず描いてみる。描いて初めてわかることってたくさんあるし、頭の中ではこの色とこの色を組み合わせるときれいだと思っても、実際紙に描くと違ったり、その逆もある。描いている途中に絵の具が滲んだりとかの偶然的な失敗が成功につながったり、とにかく手を動かすこと。我々は頭でいくら考えても相手にビジュアルが伝わらないんです。頭よりも先に手を動かすことをやってほしいですね。

●宝生:VJの活動方針としては、考え方的に映像はおかずだと思っています。あくまでも音楽がメインなので、いかにおかずをきれいに作るか、環境としての映像をいかに効果 的に作っていくかっていうのが一つ。よくVJが前面に出たイベントがあるのですが、あまりそれは美しいと思えないんです。それよりも、野外パーティなら映像を木に映したり、照明さんと組んでみたらどうかというようなトライアルをいろいろやって、環境として美しいものを作って行きたいと思っています。

●池田:昨日、タナカさんがあいさつの中で、モノを作っているだけじゃなくて、コトとか状況を作っているんだということをおっしゃっていて、非常に共感したんですが、平野さんが「motion dive」を作って、ソフトを流通させるだけではなくて、それによって状況自体を作っているということが深く感じ取れました。作品が出されるたびに、その影響で社会が変わっていく。そんなことができる立場にある3人の方のお話が聞けて、とても意義のあるイベントだったと思います。
 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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