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セミナーD
「デザインするのはどっち? クリエイター or ユーザー」

八谷和彦(メディアアーティスト)
福冨忠和(マルチメディアプロデューサー、ジャーナリスト)
宮崎光弘((株)アクシス、アートディレクター)
コーディネーター:中谷日出(映像デザイナー)

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■SeminarD

中谷日出氏

●中谷:今日は難しいインタラクティブデザインというテーマですが、八谷さんがアーティストの立場から、福冨さんがジャーナリスト、宮崎さんがデザイン的なアートディレクター、私がテレビ媒体におりますので、メディアという形でインタラクティブをどう捉えていくか、4人が集まるとインタラクティブな情報としては完璧になるので、片時も皆さんを飽きさせないようにしますので、パッケージとして捉えていただいて、隣りへ行かないようにお願いします。まず、八谷さんからお願いします。

●八谷:アーティストとして活動しています。デザイナーかアーティストか判別 がつきにくいのですが、アーティストは頼まれもしないのに勝手に作りたいものを作る人のこと。デザイナーの場合は、普通 はクライアントがいて、この予算でこういうものを作ってくださいという話があってから作り始めます。この違いだと思っています。
僕の作品の中で皆さんが一番知っていると思われるポストペットから説明すると、ピンクのテディベアがメールを運ぶという電子メールソフトです。So-netから発売されていますが、依頼されて作ったのではなく、こういうものを作りたいと持ち込んだものです。



八谷和彦氏

僕はMacユーザーですが、96年に作り始めた当時はEUDORA PROというソフトくらいしかなく、もともとエンジニアが作ることが多いから、設定が細かくて初心者にはわからないことが多かったんです。それで設定数を最小限度にして普通 の人が使いたくなるようなメールソフトを作りました。その裏にもいくつのか動機あって、自分の分身となるような存在をネット上でなら作れるのではないかと思ったりもしました。ポストペットを英語で説明する時に、こいつはバカエージェントなんだといっています。まったく役に立たないけど、人間と人間の関係を変えるくらいの力を持つ、かわいいエージェントキャラクターを作ってみたかった。知らない方のためにどういうものかお見せします。(映像)
ポストペットというのは要するに勝手にメールを出すソフトなんです。普通のメールソフトでは、自分が書いてないメールを人に出すのは許されないことです。でも、やってはいけないことでも、そこにキャラクターがいると成立すると思ったんです。僕の分身が勝手にメールを書くのはありだと思った。そいつがかわいいと許してもらえるのではないかと思ってます。
メールソフトであると同時に、自分のペットのデータを送ることができるソフトでもあります。ポストペットのクライアントが、あるメールアドレスにペットを送ると合コンをするというイベントを時々開催しています。ペットは50個くらいのパラメーターを持っていて、それで相性をみて、カップルが成立するとペットは宝物を持って帰り、同時にメールアドレスを交換します。
ポストペットは僕の作品の中では特殊で、基本的には一点ものの作品が多いのですが、いつくかマルチプルのシリーズがあります。要するに一点ものばかりを作っていたら食べていけない。でも自分の作りたいものを作ってなんとか食べていこうと考える時に、たくさんの人が使ってくれるものをメーカーと協力して作ればいいのではと思いました。マルチプル三部作の1つ目がポストペットでした。
2つ目はサンクステールです。これは、自動車にしっぽをつけようというプロジェクトです。例えば、道を譲ってもらった時に後ろの車にありがとうといいたいのですが、いう手段がありません。車はワーニング機能はいっぱい持っているのにありがとうの一つもいえないのはおかしい。車がありがとうとかごめんという機能をつけよう。その時にテキストで出すのではなく、もっとみんなに伝わるもので言語的でないものをと考えたのがサンクステールです。犬のしっぽをメタファーにして、ありがとうの気持ちを伝えよう。そうすれば、全世界の人が意味がわかります。これも量 産して初めて作品として成立します。(映像)
もう1つは、エアボードという作品です。これは一点もので作っています。ポストペットを作っている頃に、コンピュータの仕事はちまちましていてつまらないと思い、どうせなら野蛮で怖いものをと思って作り始めた作品です。といっても、実際には安全性は最大限に追求しています。「バック・トゥ・ザ・フュチャー」に出ていた地面 から浮いてすべるスケートボードを実現してみたいと作っています。半重力装置のかわりにジェットエンジンを使って宙に浮く形になっています。(映像)
僕らが子どもの頃の未来は、車が宙を飛んだりしていましたが、そういう未来はあり得ません。でも個人的に作るのはOKでしょう。作ろうと思えば何でも作れると思って始めたプロジェクトです。 ポストペットを作り始めた時、ある会社から出すプロダクツなんだけど、シェアウェアやフリーウェアに近い考え方で作ろうとしていたんです。なるべく安くしたかったのでSo-netと組みました。アプリケーションを販売しているところだとパッケージの値段が上がってしまうのですが、プロバイダだったらインターネットを使えば使うほど儲かるから、パッケージで回収しなくてもいい。ポストペットで良かったと思うのは、友だちと一緒に使ってねとパッケージの中にCD-ROMを2枚入れたことです。普通 は売上が半分になるのでやりたがらないのですが、So-netの場合は、その方がユーザーのためになると乗り気でした。コンピュータソフトがみんなの生活に入り込んできて、その辺の考え方がいままでと変わって来ているのではないでしようか。20世紀は企業とか株式会社の世紀だったと思います。大きなメーカーが大量 にものを作って使ってもらう。21世紀はそうじゃない。米なら「○○さんが作った米」とディストリビュートされたり、コンピュータのソフトでもフリーウェアやオープンソースの例がたくさんあります。それは画期的だけど、よく考えると19世紀はそんな世紀でした。作り手と買い手が密接で、ひょっとすると20世紀の作り方がイレギュラーで、今後資源等も少なくなるのなら、19世紀的なものと20世紀的なものとのミックスが、21世紀的なものの作り方なのではないかと思っています。だから、クリエイター or ユーザーではなく、ユーザーであり、クリエイターであるというようになってほしいと思います。


福冨忠和氏
●福冨:ポストペットで、テディベアを撫でれば懐くと誰でも考えますが、殴るというコミュニケーションもあるんです。テディベアは殴ってもいいんです。そういうコミュニケーションの凶暴なところと曖昧なところを両方入れるのが八谷さんのやり方で、普通 は殴るというのはディスコミュニケーションだと思うんだけど、八谷さんは殴るのもコミュニケーションとして作るんです。

●八谷:ディスコミュニケーションあってのコミュニケーションなので、ディスの状態の中にも面 白いものがあるのではと思ってます。普通、企業が作るとやばい部分は排除していく作り方になるが、アーティスト、ユーザーが作り手に参加する時は、企業の作り方と違うことが許されるのでやってもいいと思ってます。それを明示して、ユーザーが使いたくなければ使わなくていいわけですし。

●福冨:アーティストだということで、危ない部分も入れるというのを戦略的にうまく使っていると思います。

●中谷:最初の発想には、別にアートという感覚はないんでしょ。やっていくうちに、だんだんアートになっていく。アーティストが作るからアートだという感じですね。

●八谷:エアボードにしても、とんでもない乗り物だというのは作って初めて気づくんです。頭ではわかっていたけどやると全然違う。自分が体験しないとわからないから、体験自体が面 白ければアートとして成立するんじゃないかなと思っています。

●福冨:私は一般的にはジャーナリストとかライターということになっていて、仕事の半分はメディアに関連する原稿をコンピュータ雑誌中心に書いています。あとの20%は学校で教えて、30%は制作しています。専門はメディアミックスです。今日は、インタラクティブなコンテンツにはどういうものがあるのか、最近話題になっているものをたくさんお見せしようと思います。
(映像1) 最初は、マルチメディアグランプリのパッケージ部門のグランプリ作品「アルファベット」です。これは、子ども向けの教育用のコンテンツで、絵本がベースになっています。インターフェースが変わっています。
(映像2)同じく最優秀新人賞をとったクロックワークという作品です。時計の表示方法をいくつか考えたものです。学生が作ったものにしてはコンセプトがしっかりしていて、よく出来ています。
(映像3)東京タイポディレクターズクラブのニューメディア部門のグランプリをとったものです。タイポグラフィーをデジタルで表現するといろんな範囲がでてくるのですが、MITにいた人が作った「アルファボット」という作品です。要するにロボット文字です。キーボードでAを打つとロボットがAになります。リアルタイムCGなので、標示方法がいろいろあり場所を変えたりできます。この作品が面 白いのは、モックを作っているんです。つまり、実物を作って、それを三次元空間で動くようにしたんです。
(映像4)マルチメディアグランプリのパッケージ部門のアート賞をとった作品です。ドイツのZKNが、フランクフルトバレエ団がアーカイブを作る時に一緒に作った作品です。これはシンプルな作品で、フランクフルトバレエ団の基本テクニックを教えるためのものでしかないんです。単純なインターフェイスですが、ダンスのメディア化ということでは極めて高度なものです。ダンスはその場で消えるので、デジタル化が最近進んでいます。 イートは江並さんの命名ですが、もとは60年代にイートという運動がありました。ジョン・ケージという音楽家が中心で、当時の言葉でいうマルチメディア運動です。江並さんは、そのイメージから引っ張ってきたのではないかと思います。マルチメディアというのはメディアのところで終わるのではなく、その向こう側を意識したようなものでした。そういう意味では、ライブまであるメディアがいいと思ってます。
(映像5)ライブまであるということで紹介したいのは、P-MODELという76年頃のテクノのバンドで活躍した平沢進さんが95年に行ったインタラクティブライブです。いくつか仕組みがあって、平沢さんが自分で作ったCGをリアルタイムで表示し、制御しながら演奏するし、実写 映像を映すこともある。インタラクティブライブというのは、ライブの構成がストーリーになっていて、観客の歓声などによって進行を変化させる仕組みになっています。8〜16パターンあり、マルチエンディングなんです。ファンタジックで危なっかしい世界なので、どちらかというと観客は静か、客層は10代〜50代で幅があります。日常的にこういうことをやっているのはちょっと驚きました。

●中谷:たまたまですが、95年1回目の時は私が演出したんです。初回ということもあったと思いますが、お客さんとの意識の乖離があったようです。その後、新宿のライブハウスでやった時は、コンパクトな感じで操作が客にわかったものはすごくうけていました。インターフェースをより認識させる展開に気を使うといいと思いました。福冨さんの中でいま一番旬は何ですか。

●福冨:ダンスもそうですし、演じられて消えてしまうものってあるじゃないですか。それをアーカイブしようというのがいくつかあったんです。その出し方。つまり落語なんかは、声だけ聞いていれば楽しめるので、実際はメディアにのせているので、いろんなものが間引かれていて、リアリティというか没入感がないんです。ダンスだと360度に情報をとぎれなく発していて、それを全部理解するというのと、CD-ROM上で見るというのは雲泥の差があるし、それをどうやって埋めていくのかが気になる。だから、ライブが面 白いのではないのかなと思います。
 

宮崎光弘氏

●宮崎:僕は10年以上グラフィックデザイナーをやっています。もともとは、雑誌のデザインやポスターのデザインをしていました。最近はWebやCD-ROMを作ったりもしています。いわゆるインタラクティブデザインといわれるものだと思います。インタラクティブデザインは幅が広くて、広く捉えるとどこまでも捉えられるのですが、僕が話す内容は割と狭い範囲です。つまり、インタラクティブなデザインを考える上で、そこには必ずインターフェースがあって、どうデザインするかというのが作り手にとって非常に大きなポイントです。インターフェースだけをデザインするのではなく、インターフェースを中心にしてAとBがやりとりをする。そのやりとりの関係をどうデザインするかが最近の私のテーマです。どういうものを作っているのか紹介したいと思います。
(映像1)書体メーカーのモリサワの依頼で2年前に作ったCD-ROM「人間と文字」です。人間と文字の関係の歴史を一枚のCD-ROMに収めようというプロジェクトです。どうやって見せるかがポイントだったのですが、ある意味、文字のデータベースみたいなものになっていて、データベースとしての見せ方をインタラクティブなデザインにしようというのが1つ。編集された内容をこうやって見てくださいという作り手からの1WAYのメッセージの見せ方が1つ。ユーザーが実際にマウスを操作して何かをつかんでいく見せ方が1つ。この3つのインターフェースデザインを考えようと思いました。デザイナーが作るとインターフェースは懲りすぎてしまう危惧があるので、わかりやすくしたいのですが、ただ発見する喜びみたいなものがインタラクティブなデザインの中に必要なのではと思ってます。
紙のデザインとインタラクティブなデザインを作る時に決定的に違うのは、ユーザーが操作すること。紙メディアであれば、こういうふうに見てくださいと、目次や台割りの中で決めやすいのですが、ハイパーリンクのメディアの中では、ユーザーの操作感をどうデザインするかが重要なポイントです。それを突き詰めて考えると、ユーザーとのコミュニケーションの距離をどうデザインするかということだと思うんです。これはCD-ROMなので一定の距離を設定してデザインしていけるメディアだと思う。それは印刷物も作り手にとっては同じ。毎号変わっていくという意味で、違う距離を毎回出せますが、一冊のマガジンでいえば、距離感は設定されていてその中でデザインするメディアだと思います。 次に見ていただくのはインターネットの最近のもので、オルカライブというプロジェクトです。カナダのハンソン島で30年間オルカの研究をしている博士がいて、その研究をサポートして1つのサイトにしたものです。生態研究のために海の中にマイクを仕掛けたり、ビデオカメラを置いたりしているので、僕らはそれをインターネットを通 じて配信できる形にしようと、島にパラボラアンテナを立てて、衛星にとばしてつないでいます。ただ、それだけを見せても面 白くないので見せ方を考え、画面の中でハンソン島にどんどん近づいてもらい、島なりオルカなり博士に対する情報を知ってもらうインターフェースになっています。小学生でもわかる内容を目指して作りました。コミュニケーションという意味でいうと、サイトに登録するとオルカが来た時にメールが届きます。何人サイトに入っているかというインターフェースもあり、リアルタイムで英語と日本語のChatが行われています。ここでは、画面 をデザインすると同時にユーザーとのつながりの仕掛けをデザインする。先ほどの「人間と文字」の場合は、パッケージメディアでユーザーとの距離が一定の中でデザインしていくわけですが、インターネットコンテンツはその距離が曖昧になり、コミュニケーションの距離の取り方自体を考えなければならないし、仕組みによってコミュニケーションの質も変わってくると思います。
僕に関して言えば、紙のデザイン、CD-ROM、Webデザインと、コミュニケーションの取り方をそれぞれに変えてインタラクティブなデザインをしています。それは、紙だからインタラクティブじゃないとか、CD-ROMだからコミュニケーションの距離が決まっているということじゃなくて、その都度コミュニケーションの距離を自在に操れるタイプのデザイナーがこれから重要になってくると思っています。
中谷:デザイナーのいままでの価値観とこれからのデジタルメディアによって、インタラクティブになった時の捉え方が、いままでのデザイナーではなかったジャンルも入ってきています。構造をデザインするとか、モノのデザインからコトのデザインみたいによくいいますけど、そのカテゴリーとしてデザイナーをどう捉えるか、整理しなければいけない時期なのかなって気がするのですが、いかがですか。

福冨:デザインの概念を広げすぎという気がしますね。デザイン学会というと何でも入っているでしょ。情報デザインと言い出した途端、それはデザイナーの仕事じゃないだろうということまでやるようになってます。

●宮崎:どこにこだわりを持つかが一人一人の問題で重要なポイントだと思います。僕は紙のデザインから入っているので割と古いタイプだと思いますが、スタッフは雑誌も当然コンピュータでデザインしています。そうすると、画面 ではきれいに見えたんですけどというんですよ。紙にアウトプットするのなら、インクがつく過程まで責任を持たなきゃいけないわけです。そこまでちゃんと自分の基礎だと思っていれば。学校でも教えているのですが、彼らは最初からツールとしてコンピュータしか使ったことがなく、いわゆる従来のデザイン情報がないところから始めています。それなら、彼らは全員ダメかというと、その環境の中ですごくこだわっている人たちは他のものをやらせてもできたりします。その世代、世代で本人が持っている基礎がしっかりできていれば、まずそこが重要だと思います。自分の守備範囲を決めて、本人の中で意識していればいいと思うんですけど。

●中谷:最後に今日のタイトルについて一言ずつコメントしていただけますか。

●八谷:どれだけ相手のことを考えられるかがものづくりの本質なのではないかと思っていて、ユーザーだったらユーザーにできることもあるし、作り手だったら当然作り手にもあるし、それはいつも自覚していた方がいいと思っています。先ほど宮崎さんの話にもあったのですが、紙にだしたら違ったというのは、本当にいいものを作ろうと思ったら自主的にそこまでやれる人になるわけで、メソッドはいっぱいあるんだけど、結局そういうことだと思うんです。なるべく僕自身は初心を忘れずにやりたいなと思います。

●福冨:テーマという範囲では難しいですけど、クリエイターとユーザーの境界例って昔から、プロダクトとコンシューマーとか、デザインの範囲じゃなくてもぬ え的なコンセプトがあったと思います。デザイナーも自分がデザインのユーザーなんです。でも自分がデザイナーだと思うことによって、自分はデザインを享受する人間だってことを忘れちゃう。生産者も同時に消費者だというのと同じで、そこをぬ え的に出していく。ポストペットでいうと、かわいいけど殴ることもある。両方を正直にだしていけるのは結構大きいと思います。危ない部分もいい部分もある。そういう両義性みたいなものが重要かなと思います。

●宮崎:いいたいことはたくさんありますが、それは夜塾でぜひその時に。

●中谷:テレビメディアも、BSデジタル放送が始まり、地上波のデジタル放送と激変するんです。その中でデザイナーがどういうふうに関わっていくのか、メディアの広がりとデザイナーの関係などについてもぜひ夜塾でお話ししたいと思っています。

 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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