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セミナーA
発掘せよ! 才能
「学生対抗アニメーションバトル」

秋草 孝(金沢美術工芸大学教授)
河口洋一郎(東京大学大学院教授、CGアーティスト)
片山雅博(多摩美術大学助教授、アニメーション作家)
細田 守(東映アニメーション、アニメーション演出家)
原恵一(アニメーション監督)
コーディネーター:浜野保樹(東京大学大学院助教授)
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■SeminarA

セミナー会場風景
●浜野:本論の学生作品に入る前に、今回特別に現在活躍中の二人のアニメーション監督にお越し頂きました。まずは、原恵一監督「クレヨンしんちゃんモーレツおとな帝国の逆襲」劇場予告編をご覧ください。
(上映後)学生からいきなりプロに転向した原さんから学生へのメッセージを自己紹介もかねてお願いします。
●原:(クレヨンしんちゃん風に)皆さん乳首立ててますか?立て乳首!(講師・場内ズッコケ)
昨夜中島総合プロデューサーから頂いた言葉です。昨日から中島さんに弟子入りした次第です。
よろしくおねがいします。
●浜野:次に、デジモンアドベンチャー、それから一躍脚光を浴びる作品となった村上隆さんとルイヴィトンや六本木ヒルズのプロモーシオンムービーを作った細田さんです。細田さんは、金沢美大ご出身です。
(デジモンアドベンチャー劇場予告編上映後)
●細田:原監督ともなると、予告編が本編からの映像が使われていますが、デジモン劇場予告編は実は本編とはぜんぜん違った映像が使われていて、予告編は本編の前に作るくらいスケジュールがタイトなんです。
●浜野:それではいよいよ本編に入りますが、まず金沢美大の秋草教授、多摩美大の片山助教授から学生の映像をご紹介頂き、ゲストの皆さんに忌憚のない批判を加えて頂く形で進めます。まずは、金沢美大の秋草先生から自己紹介もかねてお願いします。
●秋草:金沢美大では、20名が視覚デザイン専攻で3年の後期で映像の作品を手がける。映像に特化した専攻ではなく、広くグラフィックデザインを扱う。まずはグループ制作から実施し、卒業制作を行う者もいる。あくまで平面のビジュアルデザインが中心で、ついでに映像のデザインもできるが、映像専門ではないという形でやっている。
今回は、卒業して2,3年たった人の作品から、現役の学生の6作品を紹介します。それぞれ違うテイストのものを持ってきたが、どちらかといえば手書きのアナログが中心。テーマは自由につくってもらったものです。
(6作品上映)

左から、浜野先生・細田監督・原監督

原恵一氏
●浜野:ぜひタイトルと名前のクレジットを入れた方がいいですね。どこでだれがみているかわからないから。
それでは、先輩でもある細田さんいかがでしたでしょうか。
●細田:実は自分は大学時代は油画が専攻でした。だから映像やっているデザイン科がうらやましかったですね。実際に作っても見ましたが、だれも見てもらえず無視されましたけどね。
みんなの作品は、映像が専門ではないというわりにはきちんとしていた。やりたいことを映像できちんと表現しており、見ていて楽しかった。お金を取る作品はきちんとしなければならないが、こうしたショートフィルムを楽しくやっている部分では、悪い点やしょうもない点がむしろおもしろいし、楽しめる。肯定しすぎかな。
●浜野:先輩として後輩に甘いんじゃない? 原監督はいかがでしょう。
●原:僕自身は下品なアニメを作っているので、アカデミックな評価はできない。ただ、やろうとおもってもできないので、うらやましい。自分はアカデミックな教育を受けていなくて、卒業制作もセルアニメのできの悪いものを作っていただけ。だから、幅広い素材やテーマを自由に使えるのはうらやましい限りですね。
●浜野:脱線しますが、原監督の「クレヨンしんちゃん」はPTAが子供に見せたくないTV番組のずっとベスト1ですが、どうやって耐えているんですか。
●原:かなり譲歩してます。始まった頃をご存じの人もいると思うが、ずいぶん上品にはなった。(笑い)
●浜野:文化庁メディア芸術祭で、去年のグランプリが原監督、今年のグランプリはこれから紹介する片山さんも参加した「冬の日」。文化庁も昨年の原さんでかなり非難を浴びたようで、「冬の日」は連句アニメーションということでいかにも役所受けしたようです。片山さん、学生のためにも厳しいお言葉を
●片山:私は原則、ほめ殺しておだてて成長させる。学生からももっときつく行ってほしいと言われるが、正直言ったら「悪いところを言ったら、いいところなんかひとつもないんだから」(笑)むしろ、小さないいところを拡大して育てるのが大切。ほめてダメな人はけなしてもダメになる。金沢美大の作品ですが、絵がよく描けていて迫力がある。造形力、描写力、表現力に優れている。ただ、デジタルで軽くこなしている点が気になる。もっと描ける絵をどんどん使っていくべき。アニメは絵の連続なので、基本はあくまで絵がかけること。プロにはやれないものをやっているし、1つの作品となっている。基礎ができている。演出と切れはいまいちだが、それはやれば出来てくる。積み重ねが大切。それからいい作品をどんどん見ることも重要。あとは、人形を使うなら人が出来ない独特な動きをさせるべきでしょうね。
●浜野:多摩美大関係者は中島信也さんといい片山さんといい、芸術もさることながら話術に長けたひとが多い。多摩話術大学?のほうがふさわしい。
●河口:自分も学生の2,3年生のときに結構短編を8mmを使って作成した。もちろんそのころはパソコンはなかった。実験映像やコマドリ実写を駆使して作った。抽象から具象へどう持って行くか、得意技を2,3年で追求し4年で完成し極めることが大切。自分も実写を極めてCGにたどり着くことができた。実写の限界が見えたので、CGで自分の考えを0から作った。若いほど才能にしゅうちゅうできるので、美術的にも造形的にもきわめるなら2,3年の時期が大切。4年になってしまうと、卒業制作が目的になってしまうから。
●片山:(多摩美大について)中島総合プロデューサーとは入試の審査をしている。中島兄いはデッサンの鬼で画家をめざしたくらいの方です。多摩美大は、1998年から映像教育をやっていこうということで、中谷日出さんや水口克夫さんたちと自分たちなど集まり、今年で7年目を迎えるに至った。
3年から選択制になっており、3,4年を中島さんが映像を、自分がアニメを担当している。自分の講義の進め方は、とにかくコレクションの名作のアニメ短編をどんどん一年間見せる。いいものを見せる。悪いものを見てもなんにもならない。一流をみせるとなにが三流かわかる。アニメはもともと1906年頃から米仏で始まった。人は動くものに興味をもつ。また動かす想像力・欲求本能を誰もがもっている。その基礎をみっちり一年生から行っている。全体で200人いて、6,70人が選択してくる。制作は3年から年に1,2本課題を出してコツコツ作る。最初は全員に対して広く教えようとしたが、今は、センスのある学生に対して教えるスタンスを取っている。それは、芸術系の学生はひとりができるとみんな刺激しあい、すぐ影響される。手と頭と心を使って書くことを覚える。
(作品上映)

細田 守氏

浜野保樹氏

片山雅博氏
●細田:最後の雨の作品が生々しくすばらしい。ずっと頭に残っている。技術ではなく、なにをどう見せたいかはっきりしてて優れている。
●原:作画力がすごいし、アートアニメの古典のにおいがするし、影響を受けた作品もわかる。
作品はひとりの狂ったやつがいるとできる。ぜひ理性を捨てて狂って制作してほしい。
●秋山:200人のうち、6,70人が映像を選択するのはすごい。人が人を刺激しているし、質の高さは競争によって生まれる。人を動かすのはアイデアと内から出てくる表現の力・本質・個性。多摩美大は造形力、描写力ともに本当にすごい。
●浜野:東大の河口さんからは学生の作品は無いようですが。
●河口:今後は東大でもアニメに取り組むよう学長から指示が出ている。これまでは研究は全くしてこなかった。やっても作品ではだれも単位を与えてもらえないので、論文にならざるを得なかった。今後の取り組みとしては美大と同じことをしていてもダメで表現技術・テクノロジー研究とマネジメント研究をしていく。アメリカではシーグラフで認められればそのテクノロジーで教授になれる。それが映画に応用できるテクノロジー研究に結びついている。アニメ空間とリアル空間を取り込む新しい空間を生み出していきたい。
●浜野:フランスは作家性よりハリウッドの下請になろうとしている現実がある。ぜひ日本の若い人にメッセージを。(デニス・ミューレン?の若い頃の作品を見ながら)
●河口:サイエンスと技術を捨てた国は滅びる。アニメでアジア欧米に勝つにはサイエンスが必要だ。
●片山:いい作品と出会い、コツコツ誠実に真剣にやっていくこと。それから見せる努力を。待っていても誰も評価してくれない。チェレンジ精神が大切だ。
●原:演出家としてアドバイスするが、きちんと緻密なものをつくるのも大切だが、欠けたものを埋めることでもいい作品ができる。奥行きがでてくる。
●細田:学生で吸収したものは非常に重要。早く世に出たいと思うのはもっともだが、ためて一気に出すために、ストレスがたまっても我慢することも大切。アニメの制作過程自体も、欲求不満が募る世界だから。
●浜野:以前に劇画作家の井上雄彦さんと押井守監督との対談をコーディネートしたことがあり、才能あふれた仕事をされる井上さんがうらやましいと話したら、なぜ今からはじめないのかといわれた。さすがに名を遂げる方は鋭い。下手でも継続することが大切で、やりたいときが出発点。志をもって続けていくことが大事です

秋草 孝氏
河口洋一郎氏
 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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