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セミナーB
「みかんとサムライのルール」

佐藤可士和/アートディレクター
      クリエイティブディレクター
曽我部昌史/建築家(みかんぐみ)
      東京芸術大学先端芸術表現科助教授
中島信也/CMディレクター
     株式会社東北新社 取締役兼上席常務執行役員
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■SeminarA

セミナー会場風景
●中島:今日はもういつもの僕と様子が違う、何かちょっとお洒落な感じ、がするのは、一番向こうに座っている可士和君がいるからですね。可士和さんは“可士和”の“士”を取って“サムライ”。
曽我部さんところは、“みかん組”でございます、みかん組とサムライの可士和君。今日は2人で、テーマ、タイトルになっています「みかんとサムライのルール」てね、何か掴みのいいタイトルになっていますが。可士和君はもともと博報堂という広告会社でアートディレクターをやっておられたんですよ、もともとアートディレクターなんてデザインとかばっかりやってんのかなって、平面の仕事ばっかりやっているのかなと思うんですが、博報堂にいる時からテレビであるとか、そういう様な仕事をやっておられたんですよね。まずは、このお二方に近況というか、「ルール」というテーマではあるのですが、今やっておられる仕事をご紹介いただたきたい。佐藤さん、よろしくお願いいたします。

●佐藤:いろいろやっているんですけど、すごく最新のプロジェクトを一つ。僕も佐藤卓さんに引き続き、携帯電話をデザインしました。これは2年ちょっと位前から実はやっていて、やっと先週発表したので出来立てのホヤホヤなんですけど。

●中島:2年ちょっと?普通のグラフィックデザインやアートディレクションと比べたら長い・・・

●佐藤:長いですね。

●中島:今までで一番長いくらい?

●佐藤:一番長いかもしれない。

●中島:2年ちょっと前って言ったら、随分昔の負けてられんぞ、が今ようやく出てくるんだな。結構掛かるんやねぇ。

●佐藤:僕はプロダクトデザイナーではないので、もともとCMとか広告のほうをやっていたので、プロダクトのデザインから中のインターフェイスの方のデザインをしました。こういう感じに、見やすくすると、これ今ウェブサイトの表示になっているんですけど。ミュージックプレーヤーにもなりますよ。曲名が出たり、時間が出たり、iチャネルていうニュースが流れてくるサービスがついこの間始まったりして、それを全部ここで取れるような。

●中島:一番最初はこれを思いついたわけ?

●佐藤:こういうことをやろうと。発表前の時に使った映像だから1月17日とここに入れたんですけど、iチャネルってサービスが2年前は無かったんですけど、2年後くらいに始まりますっていう、ニュースとか天気予報とかどんどん流れてくるような

●中島:リアルタイムってことだよね

●佐藤:そうです。だから、それが面白いなと思って、そこを積極的に使うようなデザインにしようと思って。こういう窓がある、みたいな。

●中島:一番最初はどっちかというと2次元?

●佐藤:そうですね、2次元。そういうことからスーパーフラットというか、スクエアなものを作りたかった。

●中島:なるほど。卓さんのやったのも、意外とスクエアだったけど。出っ張りはあるけどね、その時意外と無かったんだよ、2年前とか。

●佐藤:そうですね、無かったですね。INFOBAR。

●中島:INFOBARもスクエアだったっけ。

●佐藤:それでできあがったのがこれだから、ラフ通りですよ。

●中島:最初から赤?

●佐藤:最初は色は銀、黒、白、は決まってたんですよ。最後の色を何色にしようか結構悩んだ。中を開けるとこういう感じです。タイポグラフィー、書体を全部この為にデザインして。色展開はこういう感じですね。

●中島:電話マークとかもそうなの?

●佐藤:やりました。サムライ702って書体にしたんですよ。

●中島:サムライ702

●佐藤:あとこれは、状態表示っていう後ろ側の窓のところに、電話が掛かってきたりとか、メールが来たとか、データを取っていますっていうのが、あのタイポグラフィーで出るようになっていたりとか。結構その状態もかっこ良いですよ。

●中島:未来っぽいね。

●佐藤:ダイアルしたりメールしたりとか、これはモーショングラフィックスの書体で作ったんですよ。sendingとかメールを送ると文字がクルリッと一回転して

●中島:それをこういう風に、ここまで手をいれられたら、音は?

●佐藤:音もやりました。そして待ちうけ画面。普通子猫の写真とかじゃないですか。夜景とか。

●中島:いいよね、夜景とかね。

●佐藤:ちょっとこのデザインに合わないかなと思って、瀧本幹也ていうカメラマンとコラボレーションしようと思って、瀧本君の写真集のバウハウスが、ちょうどこれを頼んだときはバウハウスが出る直前くらいで、瀧本君に撮影するか、今までの作品でもいいよ、と言ったら、ちょうどこれが出るから携帯に合うからこれでやりたいと。

●中島:お爺ちゃんとかに見せて、写真やとか言ってもわからへんやろな。

●佐藤:そうですね。こういう待ち受け画面がデフォルトで瀧本君のものが付いていると。あと、僕、広告の仕事と別にアートデザインっていうのをやっているんですよ。音楽と映像の実験みたいなことをやっていて、その時に作った映像作品みたいなものも待ち受けで入っています。これは iモーションと言って、着信があるとアニメーションが流れるんですけど、僕がギターを弾いているのが入っているんです。着信音は全部はやってないんですけども、オリジナルでドラムとかピアノのものを作ったり。

●中島:全体的に、トータルでディレクションしていくという

●佐藤:そうですね、面白かったですよ。

●中島:単に色と形をやるだけでなく。自分の気にいらないのも入ってる?

●佐藤:いや、気に入らないのはあんまり入ってないですね。気に入ったというか、使う人をあんまり限定したくなかったから。

●中島:限定してるけどねぇ・・・。すごいですね、アートディレクターってね、だいだいポスターのデザインとか考えてそれだけかなって

●佐藤:あ、これポスターですよ

●中島:これがポスターだ

●佐藤:携帯って今まで、「ルール」の話で言うと、携帯電話って縦じゃないですか、それを横にしたんですね。横位置で見ると言うか、すごい単純なことなんですけど、中を横では使わないですけど

●中島:中を横にすると困るやろうな。

●佐藤:そういうルールを変更しましたね。

●中島:だんだんテーマに入りそうになってきているんですけど。ちょっとまた後でね、これについてはお話を聞きたいんですけど。僕は曽我部さんとはこういうイベントでお会いすることが結構あって、僕の話を聴きに来る人は、曽我部さんの読みでは建築の話は聴きに来ないだろうという話で、いつも何か僕変なのばっかり見せてもらっていて、何する人だろうとかよく知らないんですね。ここにお呼びしておきながら知らないという、まず建築家としての、建築家って呼んでいいんですか?

●曽我部:まぁ、とりあえず。皆さんが異論が無ければですけど。

●中島:では曽我部さんのお仕事を改めて紹介してください。

●曽我部:これで写っているんですが、この写真に。ポンポンポンと建っているのは、山本理顕さんという非常に有名な建築家が造った集合住宅で、足元に、ここからは見えてないですけど、商業建築の部分、天窓にお店が並んでいるんですけど、そこがそうですね。この低い部分ですね。低い部分を全部やることになっているんですが、商業建築っていうのは、いわゆるテナントが入る建物なんで、あんまり中の設計とか空間とかでやれないんですよね。僕らがやったのは外壁のデザインだけやったんです。中の図面も書くんですけど、中の空間構成とかエレベーターとか階段とかは建築士としてやって・・・

●中島:中は建築士としてやって、外は建築家としてやると

●曽我部:外壁は建築家としてやると。今これは北京なんですけど。行ったら、クライアントの人が北京の人はお店に入ると、とにかくどんなに綺麗なガラス張りとかモダンな建物を造っても、ネオンサインとか電光掲示板とかでメチャメチャになるので、それは制限をしますから気にしないで造ってもらいたい、って言うんですね。その時に思ったのは、それだけ有り余るエネルギーがあるんだったら、そのエネルギーを使わない手はないだろう、と思ったんですね。これは市松というか千鳥に凹んでいる部分があるんですがそこは、広告を好き勝手出していいと。照明も当てやすくしてあげるし、最近出来た土地計画法の開発地域は、ブロックの周りに30メートルくらい緑地を造らなければいけない、っていう法律があるんですけど、その法律だと割りと離れたところから見るようにして、あと足元から見ると、商業地区だからカフェとかあるから、足元から見上げる視点っていうのと両方あるんですけど、その両方の視点に対して広告を出しやすい凹みを造った訳です。
次ぎにbankartっていうギャラリーが横浜の馬車道っていうところにあるんですが、これが非常に分かりにくいということで何とかしてくれって言われて、いわゆるクリーニング屋さんがくれるワイヤーハンガーを使ってトンネルを造るっていう。展示のオープニングに合わせて造るはずだったのですが、紆余曲折しているうちに展示が始まってしまって、ワークショップっていうか造っている風景を展示にするということで、展示しながら造っていったんですね。
今、黄色く示したところがハンガー3本分で平たい三角錐ができますね、この三角錐をある部分が垂直になったりとか非常に数学的なんですが、これらを2つ組み合わせると四角錐が生まれると。四角錐で立体トラスを造りあげると。さわだひろゆきがこれを見て、万博公園って言ってました。

●中島:懐かしい。お祭り広場。トラスっていうとお祭り広場やからね、僕らの最初の体験はね。

●曽我部:これをユニット化していく時に、演劇に使ってもらったんですけど。これ全長40メートル。これ右側にチラッと見えているのが神奈川県警なんですけど。ここの、いかにも刑事っていう方がよくこのワイヤーで信号待ちしているんですよね。いかにも刑事っていう方が見て「ハンガーだな」。

●中島:すぐに見破ったんです、刑事だから。

●曽我部:何かに気が付く瞬間っていうのが彼らの仕事の勝負なんですね。そういう人たちにもヒットする。信号待ちしているおばちゃんも「これ○○ハンガーよ」って。つまり建築とか美術に全く興味のない人たちがそちらを振り返って。そして、これは同じギャラリーの中にあるカフェですが、これは100円ショップのまな板で作っていますね。まな板を横に倒すと棚になったりとか、引っ掛けてあるだけなんで、すぐに外せるんですけど。カウンターも2枚重ねで張っていて、取りあげるとトレイ代わりになると。もちろんまな板としても使えます。

●中島:これもはっきりルールがあるということやね。ハンガーでやるんだ、とか。

●曽我部:そうですね、ハンガーでやる、とか、日常的なものでやるとか。

●中島:ありがとうございました。可士和さんに戻りましてね。一緒にみかん組の話をしたいんですけど。もともと建築家って、僕らがイメージするイメージとは曽我部さんって外れてますよね。

●佐藤:視点がやっぱり面白いですよね。

●中島:そうですね、その辺って曽我部さんは、今回「みかんとサムライのルール」って、「サムライのルールって切腹とかかなぁ」って「みかんのルールって皮を剥くことかなぁ」って想像させるんですけど実は「ルール」という問題提起が佐藤卓さんからあった時に、ルールってものは何だろうって考えていくときに、僕達ってやっぱり、僕は昭和34年生まれ、可士和さんが?

●佐藤:昭和40年

●中島:曽我部さんは・・・昭和37年。近いですけど。どっちかというと真面目に教育を受けてきているというか「ルールに縛られる」というイメージのほうが強い。無意識的に僕もCMディレクターってこういうもんだっていうルールを外すっていうか、少しずつズラしていく、と。
これは多分3人に共通していて、特にお2人、可士和さん、電話機なんてねぇ、アートディレクターやデザイナーなんかが電話機の文字のことなんかさ、無視だろう普通は。そういうところが、あり方としてね、その辺「ルール」を変えていこうと、常に僕は可士和さんにも曽我部さんにも感じるんですけどね。それは可士和さん、意識されているんですか?

●佐藤:しているでしょうね。多分、ズラそうっていうか広告の仕事とかはものを創る仕事だから、必ず。僕の場合やっていることは全部ひっくるめてコミュニケーションのデザインみたいな感じかなと。電話を作ったり空間をやったり、映像もグラフィックも全部コミュニケーションと言ってしまえば一つになってしまうんで、その時に広告だと必ず人の目を引かなければいけなかったりするじゃないですか、目立ったりしなければいけないとか気づいてもらうとか色々、それ自体が大変なことなんで。普通人間って生活していると自分のバリアがあるから、そのバリアをぶち破って飛び込んでくるものっていうのは、余程でないと来ないですよね。

●中島:そうだよね、できれば触れたくないくらいに思っているからね。

●佐藤:街中に広告と建物とか電話だって山のようにある訳じゃないですか、すごい情報の洪水の中にみんな生きているんだけど、割と平気じゃないですか、脳がパンクしたりしないっていうのはバリアが遮断しているんですよ。そのバリアをぶち破ってくるものっていうのは、余程新しかったり変わっていたりしないと、日常のルールを逸脱したものでないと、飛び込んでこない。

●中島:ちょっと意外性があって、驚くような

●佐藤:僕は広告から仕事を出発したからかもしれないですけど、人の意識の中に飛び込んでくるようなことをどうしたらできるんだろうと、ずっと考えていたから電話とか最近は空間のディレクションとかもやってますけど、そこはもうあまりメディアは関係ないというか

●中島:コミュニケーションということで、常に見る人であるとか使う人であるとか相手がいる

●佐藤:相手がいて。あとものを創っている、電話とかポスターとかをデザインしたりしているんだけど、意識としては現代美術とか学生の頃に影響されているので、状況をデザインしようと思ってやっているんですよね。ポスターのデザインをするんだけど、そのポスターが街に掲出された時に、どうそこの街のルールが変わるか。だからスマップの3色の時はあのグラフィックがやりたかったというよりも、あれが東京中にあふれたら、すごく面白いだろうな、とかそうやって考えていますね。
こうベタ面の色でも、ある一定の量街中にあふれるとその風景自体がすごく面白いビジュアルになるっていうか

●中島:いわゆるインスタレーションとしてってこと?

●佐藤:インスタレーション的な考え方が多分もともとあって、というか。建築とかも好きで、空間からくる感じとかインスピレーション

●中島:曽我部さんが建築をやっておられる方と、よく分かったんですけど。そういうヤングだったんですかもともと、建築を志した時から。既成のルールにとらわれない少年だったんですか?

●曽我部:いや、もともとそういう子のところは、ちょっとあったんだけど要は普通の人と同じのは嫌なんですよ。事務所の人たちと昼飯食べに行って、向こうが同じの頼んでいると絶対変えたくなっちゃう。そういう性格が微妙に働いていると思いますけど。そんなことよりは多分、仕事をして最初はそれなりに普通の住宅とか造ってたりしている訳なんで、今も気持ちはそう変わってないんだけど、例えば今日の話の中で可士和さんの仕事の中でスマップの広告の時にこう駐車している車にカバーを掛ける、ああいったやり口を見ていると、周りの人たちがどうやっているか、ってすごく興味があるんですよ。いつも隣の芝生が青くてしょうがない

●中島:あ、いいな〜って思った?

●曽我部:羨ましくてしょうがない。例えば、可士和さんのそういう話を聞くと、この手は使えるよな、となるんですよ。何で使えると思うんだろうな、って考えると、あれ当たり前に停まっている車が広告になっているというと、日常的な風景がズレたことによる驚きがあるじゃないですか。そういう点を使っちゃいけない理由はないな、と。まともなやり方じゃなくて、考え方とかその方法に対して人間がとるリアクションの仕組みみたいなもの、そういうものを僕が取り込んでいくっていうことをやっていい、というか、やり得るコマとして使っていいんじゃないかな、っていう風に思い始めたっていうことですね。

●中島:可士和さんは出会ったとき、大貫卓也さんてすごい人がいて、これの反対行くべ、みたいな感じがしたんだけど、自分の中での「ルール」っていうものを取り扱ってきたやり方って、なんか僕はちょっと普通よりも見方をズラしてやれとか、いたずらとかやっちゃう感じに見えるんですけど。自分ではどういう風な意識を持って、「ルール」と付き合ってきているんですか?

●佐藤:僕多分、昔からそういう刺激的なものとかが好きだったんですよ。音楽だとパンクとか、現代美術とかアートもびっくりするから好きだったんですよね。デュシャンが便器を作品だと言ったら「え?創らなくていいの?」と。新しいものに出会うとビックリする訳じゃないですか、そうじゃないと感動しないんですよね、それで新しいものを創らなくちゃって、ずっと思っていたんだけど、新しいものを創るって凄い難しいじゃないですか。

●中島:そうだね、全く今までないものね。

●佐藤:だけど、新しいとか古いって、何か比較するものがあるから新しく見えたりとか、そういうことだと思うんですよ。デュシャンの便器も、デュシャン以前の人たちはずっと真面目に画を描いたりとかしていたところに、自分で創らないものを持ってきたっていう、そういうことがアート活動になっていなければ、便器持ってきたって新しく見えないと思うんですよ。

●中島:ルールっていうか、凝り固まっていっているものかな。世の中って全部どんどん凝り固まっていっているから、一つの新しいルールができたら、それでパーッとこう意外と頭って固まっちゃうじゃない、それを右に全部行っちゃったのを左にやる、みたいなやっぱりちょっとアマノジャク・・・

●佐藤:そうですね、すごいアマノジャクな視点があるんでしょうね、でもあんまりこう斜に構えたような感じは好きではないんですね。

●中島:可士和さんはすごくポジティヴな意味で、デュシャンがポジティヴな人かどうか僕知りませんけど「便器を置くと最高ですよね」って言って「最高かもしれない」とみんなが納得して便器を置くみたいなのが可士和さんのやり方だよね。これは便器で最高なんだから従え、っていうやり方ではなくて、仕事ですから周りの人が色々いるなかで、結構みんなが納得する、納得するパンク。

●佐藤:納得するパンク。割と広告の仕事とか携帯でもそうですけど、ビジネスとしてやっているから動いているお金とか人数もすごいじゃないですか、相当ポジションの違う、年齢や性別やポジションとかが違う人たちが、みんながかなり良いと思わないと、プロジェクトは前に進まないじゃないですか

●中島:例えば、X-BOXのあの建物ね。1億5千万くらい掛かったんだっけ?

●佐藤:そうですね、上物だけで掛かりますよね

●中島:それで破格でしょ?

●曽我部:僕らが扱っている金額に比べると・・・

●佐藤:そういうこともどうやったらいいのかなぁって、ずっと悩んでいて、そうすると僕は何か、かなり人間ていうか国とかも超えて、本能的に共有できる感覚ってあるじゃないですか、夏は暑いとか砂糖は甘いとか

●中島:スタンダード?

●佐藤:スタンダードというよりも、かなり本能に近い感じのそういうところのコアをなるべくこう、掴んでこようって風にしているんですけど、そうするとかなりのところでみんな共有ができるのと、あんまりディテールのところでは話にならないっていうか。

●中島:ある意味、それはすごくサービスですよね、きっとお金を出す人とかそれに携わる人とか、沢山の立場の人が「確かに砂糖は甘いな」と

●佐藤:例えばスマップの広告も街中にあふれている広告ビジュアルの中で、ただ色面がボンとあれば、それは目立つ。ということはラフを作らなくても、かなりの人が分かる。それをもう、そのまま企画にしましょうとか。

●中島:じゃ、例えば、「ルール」っていうものをある種ズラして分かりにくくするっていうのは無いの?

●佐藤:あるかもしれないですよね。

●中島:分かりにくくしよう、と。

●佐藤:今のところは、今仕事をしているフィールドだとそういうことは求められてないかもしれない。だけど、何でもかんでも分かりやすくしようと思っているのではなくて、そのプロジェクトに一番目的にあったことを、やれることが一番かっこいいな、と思っています。ものすごく分からないものを作るっていう

●中島:かっこよければ?

●佐藤:かっこいい、それも分かりやすいかもしれないですけどね。これは分からなくする、というくらいに、分かりやすくする。

●中島:分かりやすく分からなくするんだ

●佐藤:そういうことが求められていれば、やると思いますね。その、一発で理解できないような、伏線が全部張られているというか、解釈が色んな風にとれるようにするとか、そういうことが有効だと思えばやると思いますよ。

●中島:分かってきましたよ、段々。相手にちゃんとね、きちんと伝えていくっていうことを外して、むやみやたらと勝手なものを作っているわけではない訳ですね。

●佐藤:そうですね。一番肝心なことなんですけどね。

●中島:黄色と赤と青を並べた、みたいな勝手な。皆さん誤解しないで欲しいんですけどね、ゴチャゴチャしないで勝手な色並べれば勝ち、みたいなことの人じゃないみたいですよ、どうやら。やっぱり、ちゃんと周りの人と、でなきゃね。時間もだいぶきたところで、まとめという訳じゃないんですが曽我部さんは「ルール」っていうことを、自分にとっての「ルール」というところで、うまいこと言わなくていいですから、今回このようなテーマを踏まえて、自分が感じたこととかでもいいんですけど。

●曽我部:建築の仕事なんかやっていると、いわゆる常識とか社会制度みたいなものが、「ルール」になっている雰囲気がある訳です。玄関なきゃいけないとか、本当にそれが一番いいのかどうか分からないけど、それがそういうもんだろうみたいな、よく分からないのが当たり前になってしまっているのがあるんですけど、そうではなくて、その場所の面白さを一番引き出せる方法は何かっていう風に考えるのが「ルール」だと思いますね。いわゆる「常識に従う」のが「ルールに従う」のではなくて、そこの一番面白いことをどれだけ引き出せるかというようなことを引き出す引き出し方を考えるのが「ルール」なんじゃないかと

●中島:曽我部さんが、いつも仕事一つ一つにアプローチをしていくという時に自分の中で、「これがルールだな」というのを定めているというか、本能的に感じているものというのは何かなと。

●曽我部:毎回毎回のプロジェクトで全く違うことをたいてい考えているんですが、共通しているのはいわゆる住宅みたいなものから公共的な保育園とか小学校みたいなものまで共通しているのは「完成させてしまわないということ。」使う人が使いたおしたりとか、ちょっといじってみたりとかして初めて建築になる。さっきの椹木さんの家なんかもそうですけど、そういうのを色んなやり方で工夫する、ってそういうのが根底に流れているかもしれないですね。

●中島:生き物的なものだよね、形にしてその形を、「いや住んじゃダメ」みたいな人もいると思うんだよね、建築家では。できたけど「あ、置いちゃだめだ、こんなところにこんなもの」みたいな人。そうじゃなくて人が入って動き出して、動き出すのが自分にとっては「ルール」だぞっていう。結果として、今までの建築の概念が変わってしまったりとか、今までにあった「ルール」を結果として壊したところはある訳?

●曽我部:それはありますね。プロダクトみたいなものとは違って建築は必ず一品制作なので、使う人もその一品制作できたものに対して特定できるじゃないですか。その特定の人たちがそういう風にならない場合ってある訳です。つまり色々使いこなせたり、使いたおせたりするように考えてあるんだけど、そんな風にはしないと、これは単にボロいだけじゃないか、みたいな感じになって普通の小学校みたいにきちんとまとめてください、みたいな話になってしまうことも少なくない。そういう気持ちをひっくり返すというか、自由になれるような感じのことを考えた時に、まな板とかそういうものの活動はどっちかというと意識を緩めるというか

●中島:堅くなりがちなものを自由にね。柔らかくしておくっていうことですね。その柔らかくすることによって結局は本当に求められているものを届けるっていうことはある訳ですよね。扉はここになくちゃいけないっていうことから逃れられる訳ですよ。はい、ありがとうございました。可士和さんは、どうですか「ルール」、今までの話をまとめる形で君にとっての「ルール」というか

●佐藤:「ルール」って結構難しいっていうか、ルールはね、さっき言ってるとルールを破っているような感じに思われるかもしれないけど、破ってはないんですけどね。

●中島:でも会社でスケボーしてたよね

●佐藤:うん。別に書いてないもん、しちゃいけないって

●中島:あ、そうか・・・暗黙のルールだな

●佐藤:ルールを破るっていうよりも、そのルールの見ている視点を変えているんです。僕はクリエイティブていうのは、そういう仕事だと思っていて、新しい価値の視点を提示するっていうか。さっき曽我部さんも同じことを言っていると思うんですけど、普通にやると必ず、ここにドアがあるっていうことが、それはある一定の方向しか見ていないんですよ。それを違う視点から見たら別にここにドアが無くてもいいんじゃないのと。今、僕は幼稚園を造っているんですけど、幼稚園をアートディレクションするっていう視点がなかったと思うんです。建築も手塚さんという建築家と一緒にやっているんですけど、それは要は園舎を巨大な遊具っていうことにしたんですよ。幼稚園っていうのは遊びに行くところだから、園舎自体が全部で一個の遊具になっているような。

●中島:基地みたいだな

●佐藤:巨大なドーナツ状のものができて、屋根の上にも上れて、窓も全部開いて、中の部屋を家具で仕切るようにしたり、屋根の上から滑り台があるとか、木が本当に部屋の中を突き抜けていたりするんですよ。そういう園舎を、設計するというよりも

●中島:見方を変えるってことだね。

●佐藤:そうですね

●中島:お忙しいお二人、何故そんなにお忙しいかっていうと、やっぱり色んな人のお仕事があるんですね。これだけ色んな仕事がどんどん増えていくと、新しいプロジェクトに取り組んでいくっていうところ、秘密が一つ明かされました。どう考えてみても、これは僕もそうなんですけど、大変「相手のことを思う気持ち」がありますね。つまり相手、人を大事にしている、周りの人を大事にしている。僕はやっぱり「コミュニケーションをつくるのは広告の仕事」だと思っているんです。テレビを見る人はどういう風に感じるのかな、ってところは、また一つ想像をめぐらせる訳ですね。想像するよね。

●佐藤:それが一番大事かもしれない。

●中島:イマジネーション。相手がどう思うかな、これを使う人どう思うかな、周りの人がどう感じるかな、これを一生懸命考えていくと、そこに新しい「ルール」ができていくっていう、それが目に見えないものかもしれないんですけど、そこが基準になっている。できたものの形とかそういうものではなくて、その後それをどう使うかっていうか、その後見た人はどう思うのか、テレビに流れたときどうなのか、っていうことを想像して創っていく、これは私の世界の言葉では「思いやり」という風に呼ばして頂いているんですけどね。やっぱり「人に対しての思いやり、人に対しての愛情とか、相手を想う心」というところに、正直に誠実に取り組んでいるお二人の姿が見て取れたんじゃないかなと。そういうところから「ルール」ができているんだと、自分で破るためのものであったり、「ルール」の為のルールでもなく、それは一つの人に対しての気持ち、「生きていくっていうこと」でございますかね。そういうものが「ルール」を作っているんだ、と大変貴重なお話を伺うことができたと思います。これでセミナーBの方を終わりにしたいと思います。最後に本当にお忙しい中来ていただいて、佐藤さんはトンボ帰りなんですけども、佐藤可士和さん、曽我部昌史さんにもう一度大きな拍手を。どうもありがとうございました。

(敬称略 文責eAT事務局)


中島信也氏

佐藤可士和氏

曽我部昌史氏

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