TOPeAT`08'07`06`05`04`03`02`01`00`99`98`97
セミナーC
「ゲームは文化だ、産業だ」

中島信也(株式会社東北新社専務取締役CMディレクター)
宮本 茂(任天堂株式会社専務取締役)

TOPeAT`08 SeminarA SeminarBSeminarC08ゲスト一覧

■SeminarA



左中嶋さん、右宮本さん

 







●中島:あと一歩で大事な夜塾ですね。さて、アメリカの雑誌はで世界で9番目に影響力を与えている人?誰が決めたか知らないですけど、日本人は宮本さんだけですか?

●宮本:いや、トヨタの渡辺社長が。

●中島:何位ですか?

●宮本:知らないんです。(会場爆笑)

●中島:僕もいろんな方とお話させていただくこと多いんですけども、こんなビッグな人としかも二人で対決しろということで、いまでいう無茶ぶりに入るんじゃないかでしょうか?もう僕あがってるんですよ。
僕自身はCMディレクターという仕事をしていますが、宮本さんの肩書きがわからないのですけど。ゲームの神様というのはわかっていますが、神様は肩書きじゃないですよね。

●宮本:僕は一応プロデューサーということにしているんですけどね。

●中島:ゲームプロデューサーというと何するんですか?

●宮本:よくわからないんですけどね。要はチームに欠けていることをなんでもするということですか。

●中島:しりあがり寿さんからいただいたお題が「ゲームは文化だ、産業だ」ということで、あまり深く考えたタイトルではないという感じはしますけど。(会場爆笑)
我々二人とも専務なんですよね。東北新社の何千倍も任天堂は売上があると思いますけどね。東北新社はCMをつくる会社なんですけど、今日は専務つながりの経営セミナーということで、金沢市の産業局の依頼で経営の苦しみとかを話しても・・・・たぶんつまらないと思います。
僕はCMのディレクターという仕事をしているんですね。別名をCM演出家。朝のセッションではアニメーションの監督が登場しましたが、CMの監督をやっているということです。専務の仕事とは別にそういうことをやっています。CMというのは広告ですから広告主がいます。CM監督にできるということは実は小さいんですね。CMは広告ですから、商品を売りたい企業が売るのを手伝うのが広告の目的なんですけど、CM監督はたくさん売れないんですね。ちょこっと買うくらいです。
CM監督としての目標は「会社」とか「商品」とテレビを見ているお客様との間に架け橋つくる、コミュニケーションを結ぶということですね。CMを見てる人に「あっ」「うわっ」「おっ!」「ほ〜」「へ〜」「すごっ!」とか思ってもらうこと。見てる人の心をちょっとだけでも動かすこと。売るとかブランディングの前に僕はCM監督としてやらないといけないんですね。何が心を動かすかというと、これはまちがいなく「魅力」です。何か魅力がないといけない。辞書で「魅力」を調べると「心を動かす不思議な力」と書いてあります。魅力というのは、見てる人が得をするということ、おもしろくないコマーシャルを見せられた時ほど腹立つことないですよね。ちょっと得した感じ。何が得なのかというと「おもしろい」と感じることだと思うんです。なんかこう、プラスの方に心が傾く現象です。すべてのテレビCMは「オモロイ」か「オモロナイ」か、この2つしかないんです。このオモロナイものを僕がつくったらアカンと思ってます。この「オモロイってなんやねん?」ということを今日、宮本さんとお話していこうと思います。
宮本さんからはスケールの大きな話が出てくると思いますが、その根本には自分がオモロイと感じることとか、これはCMだけじゃなくて、ゲームも同じなんじゃないかと。これはCM、ゲームに関わらず、「ガニゲ」全部に関わることじゃないかと思います。

●宮本:なんとなく察していたんですけど、そうきましたか。結構ぶち壊しなこといえば、おもしろいって何なのかは説明できないんですよねー。

●中島:あれっ!それでもう終わりじゃないですか。

●宮本:僕がオモロイと思うからやってるわけなんです。ただ僕の場合は、自分がオモロイと思っても、他人がオモロイと思わなかったら、やり直すということですね。いつまでも自分ひとりで笑ってるのはさけるようにしていますね。

●中島:人がオモロイかどうかですね。

●宮本:他人が見ていてオモロイと思っているようならOK。いくつかの技法はあるんですけど、基本的にはよくわからないので、今日は中島さんに引き出してもらおうと思っています。皆さんもぜひ見つけるように努力してください。

●中島:まちがいなくオモロイものをつくり続けているのが宮本さんだと思うんですけど、まずは現状といいましょうか、いま宮本さんがここにいるというところから行きましょうか。

●宮本:「ゲームは文化だけやおへん。大きい産業どすえ」と書いてみました。やっぱり任天堂が京都にあるというのも重要なコトだと思いますので。いまNHKの朝ドラ「ちりとてちん」で若狭弁が自分の中ではブームなんですけど。
eAT'05でDSを紹介させていただいた時に、ゲームはいま世間の人から関係ないものになっているんですよっていう話をしてたんです。昔はもっと皆さんがゲームに関心をもってくれていたのに、いつの間にかゲームをする人だけがゲームをすることになってたんですね。

●中島:僕もそうなんですよ。学生時代はゲームセンターでドンキーコングにはまり、ゲームボーイが出た頃はお風呂でやってましたけど、最近はちょっとおいてけぼりかなと。ドラゴンクエストも3くらいから、なんかついていかれへんなぁと感じていました。

●宮本:そうですね。任天堂も子供のものをつくっているといわれて、ゲームは子供のものとか、ゲームの好きな人のものという感じになってきていて、もう一度仕切り直しなんですよ。もう一度ゲーム機からつくり直そうということで、5歳から95歳までをターゲットにするということを世界中でやっていくという話を、まだ希望のようにここでしゃべってたんですけど。

●中島:一昨年のセミナーですよね。

●宮本:そうですよね。もうずいぶん昔のような気がしているんですけど。
ゲームマーケットはアメリカが2で、日本が1、ヨーロッパが1なんですが、DSは1:1:1で日本とヨーロッパがものすごく売れ、アメリカが普通に売れているという感じなんです。

●中島:僕、なんでかわかりますよ。ヨーロッパは鉄道網の発達やと思います。アメリカはみんな運転してるんで、やる時間ないですもん。ヨーロッパの人たちみんな、電車に乗っていると思うんですよね。「世界の車窓から」ってだいたいヨーロッパやもんね。(会場爆笑)

●宮本:今日午前のアニメーションの話で、ヨーロッパの受け方はアメリカと違って、日本と似ているというお話がありました。僕も少し感じることがあって、DSは非常に日本的なハードかもしれないんです。
最初のDSの発表からある「脳トレ」は海外では「ブレインエイジ」って名前ですが。これ日本のものとしてつくったんですけど、こんなに売れているから海外でも売らないともったいないということで。海外でも絶対うけるとおもったんですよ。脳トレはシリーズで2000万本くらい売れています。仮に1本売れて会社に2000円入るとすると400億円ですか。

●中島:まさか開発費に400億円かけてないですよね。そしたら、このゲームに登場する先生にギャラを数億は払ってやらんと。

●宮本:それなら僕もこの先生になりたいー!!(会場爆笑)

●中島:これってやはり、世界中のおっさんたちは脳がボケてると思っているんでしょうね。脳トレって子供とやったら絶対子供が勝ちますけど。

●宮本:小学生は別に脳は衰えるなんて思ってませんから。もともと任天堂の持っている市場の半分をしめる子供たちを除外しても新しいターゲットをどれだけ取れるか勝負に出てるわけですよね。なのに2000万本売れたということは、やっぱりマーケットは無限にあるなぁと。

●中島:すごいですね。

●宮本:nintendogsなんかは国内は200万本ですけど海外は1700万本で、発表からまだ売れ続けているんですよ。

●中島:さすがに日本でnintendogsをいま買う人はいないでしょうかね?

●宮本:いや、うまくCMつくってもらえば、日本でもまだまだ売れると思いますけど。東北新社に替えようかな。

●中島:えっ!!なんかすごくいい感じ。ベリーグッドなアイデアですね。さすがアイデアマンですね。社長〜!!いや、ちゃう、専務か!?(会場大爆笑)

●宮本:日本の典型的なゲームの売れ方というのは発売前に予約が集まって盛り上がって、開店と同時に列ができて一週間で100万本、200万本売れて、次の週に半分になって、その次の週に4分の1になって・・・次の月にはほとんど売れてないという。これをなんとか長く売れるマーケットにしたいなと。いうのは簡単なんですけど、じゃどうしようかということでロングセラーのnintendogsとか脳トレが売れ続けていますね。

●中島:2年間も売れ続けるってすごいですね。お国柄もあるんでしょうか。ヨーロッパの人たちはブランディングにもコマーシャルを長く打つんですね。日本は一週間で終わりというのもあるんですけど、じっくりと腰を据えたものをつくって長く使うという、モノに飛びついていくやり方が冷静で、じっくり考えてから来るのかもしれませんね。

●宮本:そこで、今度はWiiで同じようなことをやっていこうということなんです。Wiiがちょうど1年になるんですけど、日本で約500万台、世界では約2000万台、これもまたおもしろ現象で、アメリカでものすごく売れているんです。アメリカは据え置き型のゲーム機がよく売れる国なんですね。やっぱり電車がないから(笑)。ずっとアメリカの店頭は品切れが続いていますね。ソフトは累計で1億本を超えましたね。

●中島:しかし感心しますのやけど、よく同じものを2000万台もつくれますなぁ。考えてみると、これすごくないですか?つくるの難しいんでは?

●宮本:これは月産約180万台くらいつくってるんですか。DSは月260万台つくってるんですか。でも売れなくなったら1ヶ月でそれだけたまっちゃうんですから、経営者の悩みはそこから始まるわけですね。日本の場合は新しいゲーム機が出たというよりも「遊び方が出た」という感じで売っていくんですけど、アメリカはまだ新しいゲーム機が出たということで売れるんですよね。「はじめてのWii」と「Wii Sports」はWiiの楽しさを伝えるためには大切なソフトなので、ゼルダを買った人につけたんですね。そのうちにゲームのコミュニティーでも話題になって、接待ツールとしても優秀だということになったんですね。

●中島:アメリカはホームパーティな国ですものね。僕も友だちにすすめられて、とにかく3ヶ月に1回Wii大会やる人がいるんです。

●宮本:僕も昔モノポリー大会で集まったりしましたけど、「おもしろいゲームをつくっている」というより、「おもしろいモノをつくっている」という感じでいいんじゃないかということで。そしてこのWii Fitがでたんですけど。

●中島:いよいよ身体全体に広がってきましたね。昔からコントローラーでゲームやってると身体倒したり意味なく動いたりしてましたけど。

●宮本:伝えられない思いというのを身体を使って表現しようとするということなんですけど。Wii Fitをつくってからは、これまでお付き合いのなかったお医者さんに会いに行ったりとか、新しい経験をさせてもらいました。いまWii Musicというのもやっています。
パーティを楽しむ「パーティパック」とスポーツならなんでも入れた「スポーツパック」と今度の「ヘルスパック」に「ミュージックパック」の4部作で一応完成だということで設計をはじめたんですけど。このWii Fitは僕にとってはギャンブルで、こんな大きなものを日本の家に置くのはいやだと言われる可能性もあるし、重いんですよ。4kg以上あるんで。お店から持って帰るのに本体が2kg以上あるので、両方で7kg近い重さですから、家に持って帰るとすでにフィットネスのトレーニングが始まっているという・・・えらい落ちをつけてますけど。(会場爆笑)

●中島:なるほど!●宮本:まだ販売は国内だけなんですけど発表1ヶ月で約120万台です。これまでのゲームマーケットとは違う年代層に売れているんです。

●中島:それ、思わく通りなんでしょ?

●宮本:お母さんがターゲットです。子供のおもちゃを買うのを誰が決めているかというと日本は圧倒的にお母さんが決めるということで、まずお母さんがおもしろいと思うものをつくろうと。アメリカはこれからなんですけど。

●中島:昔は、例えばファミコンの野球ゲームをやると、その中では自分がプロのプレーヤーになれて野球という誰もが知ってるスポーツを体験できるという原始的なおもしろ味があって、だんだんゲームが複雑になって、中世の騎士にならないといけなくなって、お城なんていったことないけどいかなアカンという――もう、竜とかいらんわーっていうところから、久しぶりにゲーム機の中にあるもんじゃなくて、世の中にある魅力的なものをゲームで味わえるということですね。DSもそうですね。

●宮本:僕らの世代は子供の時にスパイ手帳が欲しかったり、大人の持っているトランシーバーが欲しかったりしたでしょう。DSをつくる時も大人が見ると、二つ折りでペンがついててダサイやんとか言われたんですけど、子供にとっては憧れのマシンになりますよっていうことをいったんです。僕が子供だったら欲しかったなぁって。

●中島:娘と姪が通信しながら遊んでいて、車同士でも通信して遊べますもんね。通信が切れるとこまでいって「きゃー切れた」っていう、夢の機械ですね。DSの時は大人が持つには大きいかなと思いましたけど、DS Liteになってからはいいかなと。海外ではなんていうんですか?

●宮本:DS Lite、同じです。nintendogsもそのまま。Wiiという名前にした時も最初はさんざんいわれましたけど、「オシッコ」って子供がいう時にウィーっていうらしくて。決める前にも随分いわれたんですけど、世界中で使えるならこの名前にしようよということで。

●中島:開発途中ではレボリューションと呼ばれてましたよね。

●宮本:ゲーム機の市場がどんどんパワーゲームになってきていて、ハードがどんどん高性能になっていく中で、レボリューションというのは随分世間に注目されていて、海外でもこの名前が結構知られていたので・・・いま聞くとおかしいんですけどね。レボリューションじゃアカンやろなと思いながら、これでもいいかと思いはじめた時に、Wiiという名前があがってきて、その頃は結構勇気がいったわけです。Fitみたいなことをしようとすると、しっくりこないので、女の人でも呼びやすい名前にしようということでwiiになったんです。昔からダメっていわれる名前で始めるといいことがよくありまして。ドンキーコングにはじまり――

●中島:ドンキーコングもアカンかったんですか?

●宮本:全然ダメでしたね。誰が考えたんやと・・英語全然わからんヤツが考えたんじゃないかとか言われて・・・その通りだったんですけど。

●中島:なぜダメだったんですか?●宮本:意味がわからないらしいんです。辞書でみるとドンキーというのは「トンマ」

な意味があると書いてあったんですけど、ネィティブの人にはドンキーにそんな意味はないといわれてしまって。しかも「コング」はゴリラではないと。(笑)確かにゴリラはゴリラでコングじゃない。たまたまそういうプロレスラーがいただけだったとか。いまWiiも皆さんがそう呼んでくれますから、最初にいやがられる名前の方が喜んで使う傾向があるのかと思っています。
DSの年代別の売れ行きを見ると、街頭調査では男女共に74歳までユーザーが広がっています。15歳くらいでいったん卒業しますけど、また戻ってきています。Wiiのユーザーの年代層も74歳に振り切って、これからは5歳から95歳に広がるかなという伸びです。以前は「おもしろいゲームは何か」ということに偏ってたんですけど、それよりも「世の人がおもしろいと思うことは何か」という視点で進めていったことに結構手応えを感じているんですよね。
午前のアニメーションのセミナーの時にも話題になっていましたけど、アニメの好きな人のためにつくると、その人たちだけの世界に入ってしまうけど、もっとマーケットは広い。マーケットは無限にあるので、よりたくさんの人に届くものをつくればそこにマーケットが生まれると思います。

●中島:先程のグラフを見てましてもゲームが産業であるのはまちがいないと思いますが、「ゲームは文化だ」というところが「遊びは文化だ」ということなんでしょうね。宮本さんの今後の展望は?

●宮本:まだまだインタラクティブな道具ってものが、生活の中に使い道があるなと思ってまして、そういうことを試していこうかなと思ってます。

●中島:なるほどー、だんだん生活そのものが任天堂に取り込まれていく感じがしますけど。(会場爆笑)

●宮本:楽しくなる道具をつくっていきたいと思ってます。

●中島:いや、楽しみです。人々の幸せがそこにあるから、みんな飛びついていくんだと思います。宮本さんに新しい、みんなを巻き込んでいく何かをつくっていただきたいなと思います。
おしまいに「遊びは文化だ、産業だ」にテーマを置き換えて終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

(文責:編集部)


TOPeAT`08 SeminarA SeminarBSeminarC08ゲスト一覧