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セミナーC
「緊急会議 アニメーション・エンタティメンとどうなっちゃうの」

石川光久(株式会社プロダクションI.G代表取締役)
川井憲次(作曲家)
押井 守(映画監督)

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■SeminarC









●石川:セミナーCの事前打ち合わせは、いろいろ考えていたんですけど、昨日のフォーラムで押井さんと「白と黒」で言い合ってからまったく会話をしていないんです。川井さん、昨日はイート'09名人賞受賞おめでとうございます。

●川井:ありがとうございます。(会場拍手)

●石川:押井さんいわく、石川がやたら金沢に行くのは怪しいと、何かあるんじゃないかと言いましたよね。今回のテーマは白と黒なのでこの際はっきりしておきたいのですが、まず私が金沢・石川県になぜ来るかですが、私の名前が石川というのもあるんですが、兄の名前が石川ケンというんです。(会場爆笑)

昨日はずいぶん、フォーラムでプロデューサーの白と黒について話しましたが、ここでぜひ会場から質問を受けようと思います。どうでしょうか?

昨日のフォーラムでは、神山健治監督と石井朋彦プロデューサーと私の3人が白と黒について語り合いまして、なかなかいい話だと思いました。もう一度紹介させていただきます。

組織の中で白い意見と黒い意見がある時、たいていの場合、グレーの決断をする人がいるんですが、私の経験では100%に近くうまくいかない。そういう場合、石川ならどうするんだということなんですが、白か黒か迷ったら赤を目指すと言いました。なぜ赤かと言うと、情熱の赤だと言ったんです。そこで押井監督は何と言ったんでしたっけ?

●押井:そこまでの1時間の議論は何だったんだと言ったんだよ。

●石川:そこは無視して次へ進めましょう。
ちょっとフリップをつくってきました。まず、1987年ですが我々3人の出会いがありました。その時の「赤い眼鏡」を昨年発表された川井さんのDVDからご覧いただきます。

(「赤い眼鏡」上映)


実はこの1987年に我々3人の赤い糸が結ばれていたんですね。先ほどの質問を受けた時に、まさか本当に手を挙げる人は少ないだろうと思っていたんですが、プロデューサーに足りないものは情熱だけでなく謙虚さだと言いたかったんですが、なかなか思うようにいかないものですね。

●押井:最初、石川に会った時は、バカなんじゃないかと思ったんですが、後に、もしかしたらバカの振りをしている間に本当にバカになったんじゃないかと――。最初はバカでいることを楽しんでないかって。いずれにしても、その周辺を結構くるくるいってる感じ。そのへんが石川という人間を理解するきっかけになるんじゃないかと思います。
川井くんと最初に会った時は「この人大丈夫?」と思った。いままで会った作曲家とかアレンジャーというのは、みんな音大とか出てて、難しい言葉で話して、スコア持ってきて――川井くんはそういうのがことごとくなかったので。最初、スタジオにくわえタバコで来た気がする。で、「この人大丈夫かな?」と。ただ、最初の「赤い眼鏡」のテーマの時は一発で気にいっちゃって。「赤い眼鏡」は川井くんの初期の達成だと思う。川井くんにとってコアになってるんじゃないかと。いま聞いてもしびれるよね。いい曲だと思います。たまに機会があって聞くと身体の芯が震えてくるよね。そういう意味では僕と川井くんが出会った曲でもある。

●川井:あのコンサートの経緯は文化放送の方からやらないかと言われたんですが、僕のコンサートはいろんな楽器が必要になるんで人数が半端じゃなくなります。絶対赤字になりますから止めた方がいいと誘われるたびにお断りしていたんですが、「それでもいいからやりましょう」と言われて――。その人はとてもいい人なので、その人に損害を与えちゃいけないと思ったんで「本当に止めた方がいいです」と何度も説明したんです。でも「どうしてもやりたい」とおっしゃってくださって、やる運びになったんです。

●石川:押井さん、いまプロデューサーに聞かせたい言葉がありましたね。プロデューサーに損させちゃいけないと。ここ、ちょっとメモリーに強く入れたいと思いますね。
その文化放送のプロデューサーは「それでもいいからやりましょう」と言ってくれたんですね。こんなふうに言われて、川井さん、どうでしたか?

●川井:グッときましたね。

●石川:この人は、押井さんに紹介した方がいいんじゃないでしょうか(会場笑)

●押井:もう2年前に仕事してるよ。ラジオドラマ46本つくってる。ラジオドラマで僕が使いたい役者はみんな高いですよ。効果も入れたいし、川井くんが曲をつくることになるから半端じゃないですよと。それでも「やる」って言うんで、ドラマの内容は第二次世界大戦中の東部戦争「独ソ戦」の話なんですね。独ソ戦の話なんかしてる日本人いませんよと。それでも「やる」って言うんで。川井さんのコンサートはこの計画から出てきた話なんです。

●石川:その後、そのプロデューサーの方がどうなったかというと調べたんですね。彼、いま文化放送を辞めてますね。(会場爆笑)
これが一つ、白黒はっきりさせたことじゃないかと。

●川井:辞めてないです。重要なポジションです。

●石川:これは情報が錯綜している。ちょっとここで切り替えて、セミナーBがあまりにも刺激的だったんで対抗して私もスイッチ入れ直します。

「他力本願」これは押井さんの本のタイトルにもなっていますね。押井さんは若い時は、自分は天才じゃないかと錯覚したこともあるらしいんですけれども、押井さんというのは、ある才能を見つけて、これを映像に引き上げる天才じゃないかと思ってるんです。本当の天才というのは、押井さんみたいに他人の力を引き上げられる力があれば、本物じゃないかと思ったんですね。

押井さん、どうですか?私の意見。

●押井:天才というのはレオナルド・ダ・ヴィンチ、そういうレベルの人の話。500年とか800年に一度しか出てこないんだよ。世に言う天才というのは天才でも何でもなくって多少秀でてるだけ。僕は明らかに凡人なんで、人をうまく動かす力というのは、我々は芸術家じゃなくて、人に作品を見てもらって、そのお金でまた次のものをつくって――。パトロンからお金をもらって作品をつくっているわけじゃなくて、あくまでもメディアの世界で仕事をしている人間だから、メディアの世界に天才なんかいないし、いらないんだと。

大事なのは、人と人がどこで繋がって、それこそプロデュースするか、それがすべてであって、プロデューサーは監督とお客さんを作品でどう繋げていくのか、そういうことがすべて。自分でなんかやるんじゃなくて他人の力でなんかやるんだと。

「他力本願」というのは編集部がつけたタイトルなんだけど、それでいいじゃないかと。他力本願というといい加減なヤツの代名詞みたいになっているけど、僕らは人を頼ることでしか作品をつくれないから。石川もそうだし川井くんも。

川井くんは自分で楽器も使うし何でもやっちゃう人だけど、実際は優れたスタジオミュージシャン使った方が間違いなく川井くんの音楽が膨らむと思う。そういう意味では。みんな似てると言えば似てる。

「どうやって人をうまく使うか」しかも大事なのは、その人間にとってのメリット「その人にとって何が幸せなのか」を必ずつけてあげること、そうしなければ次はないから。人の才能を収奪することの違いはそこにあるんであって、という話をした。

●石川:私が何を言いたかったかというと「馬鹿がアニメ界を元気にする」ということを私の身をもって自分をさらけ出したということですけれども。後は夜塾で。

 

(文責:編集部)


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