eAT'12 セミナーA

「t テクノロジー」

 

eAT'12 seminarA



















































































セミナーA「technology」

モデレーター
宮田 人司(株式会社センド取締役)
ゲスト
小林 弘人(株式会社インフォバーン代表取締役CEO)
林  信行(ITジャーナリスト)              

金沢市民芸術村のパフォーミングスクエアで二日目のセミナー。
最初のセミナーAのテーマは「テクノロジー」。
 モデレーターはクリエイティブディレクターの宮田人司氏、今年のゲストにはインフォバーン代表取締役CEOの小林弘人氏、小林氏は伝説のインターネット情報誌「ワイヤード日本語版」の初代編集長時代、第1回のeATにも出演いただいています。16目のeATまで、激しくコンピューターテクノロジーも変化し、映像やインターネットも様変わりしていています。もうひとりのゲストITジャーナリストの林信行氏は、コンピューター情報誌に目を通したことある人ならお馴染みの人。今は亡きアップルコンピューターのCEOスティーブジョブズ氏にもインタビューしたことのあるiPadの最先端情報を発信している人気ジャーナリストです。
 eAT'12の開催テーマである「センス・オブ・ワンダー」を発案した菱川総合プロデューサーによるセミナーAのテーマは「テクノロジー」ということで、テクノロジーが変えたコミュニケーションの世界やクリエィティブワークの現状と将来や、最先端の世界で、今なにが起きているのかといった、最新情報を、eAT実行委員の宮田人司氏が、これまでの変化、コンピューターネットワークの誕生や、iPodによる音楽市場の変化、iPhone、iPadの登場による、新しいモバイルコンピューティングの世界を振り返りました。

■セレンディピティとテクノロジーの発展について

宮田●セレンディピティ(Serendipity)という言葉があります。日本語では偶察力と訳されていますが、偶然のできごとや不思議に思うことから、偶発的なヒントを得て、まったく別の新しい価値を創出したり発見する能力を指します。日常の思いがけない発見、気づきが、やがて様々な世界や、わたしたちの生活を変えていくことにつながるという意味です。
 特に今、この偶然を見つける機会が、これまでの学者、研究者のような特定の誰かにだけではなく、誰でもの日常の中で、加速度的に増えているのではないかと最近思います。偶然を見つける機会がいまなぜ増えているのか? そこには「我々の生活や日常に一気に浸透してきたスマートフォンやタブレットといった新しいコンピュータの形と、ツイッターやフェイスブックに代表される新しい情報流通が起因していると感じます。クリエイティブやITの仕事に関わる人、あるいはその世界で仕事をしていきたい人たちにとって、この日常の変化はとても重要なアイデアや気づきにつながるのではないでしょうか?」

小林●実は、欧米だけでなく、例えばマレーシアといったアジア圏でも『借金してでもスマホは買え』といわれるぐらいスマートフォンは広がっています。少し前に米国のワイアード誌で『Web is Dead』というセンセーショナルなタイトルの特集が組まれましたが、要するにこれからは、PCからのインターネット接続ではなく、スマートフォンといった移動体通信端末からのインターネットアクセスが主流になると予測されています」

林●とにかくいま、情報もモノも溢れている時代です。少し古い話で恐縮ですが、2009年に発表された日本のある統計によると、我々が情報に触れる機会は12年前に比べて673倍に増えています。人間の脳の処理能力がその間に673倍増えているわけではないから、そのほとんどを我々は毎日捨てていかなければいけない状態。ではそんな時代の中で、逆にどうすれば情報が届けられるのかが重要になってきます。インターネットが普及したこの15年で、我々のワークスタイル、ライフスタイルは大きく様変わりしました。一方でそれらの情報流通量が増大したことにより、今度は情報を得る・情報を届ける手段にも大きな変化が生じています。簡単にいえば、場所やスペースに縛られることのないスマートフォンやタブレットをはじめとする移動体通信端末の台頭によって、我々はいつでもどこでも情報にアクセスできるようになった。ここを考えるうえで大切なことは、日常における時間軸、人との軸、空間軸(位置情報)がポイントになると思います。この3つの軸から生まれたアイデアや発見が、結果として新しいサービスやビジネスにつながっている例は枚挙にいとまがないでしょう。例えば、カーナビはわりと前から身近にはあったものの、スマートフォンの登場で一気にもっと一般化しました。
 
小林●一般化したからといって、進化が止まるわけではないのがテクノロジーであり、そこから新しいものを産むようなセレンディピティであると思います。カーナビでいえば「イスラエルでは、みんなで作るカーナビ『Waze』というサービスが始まっています。また、新興ビジネスのスタートアップに要する資金集めの場となる、クラウドファンディングも3つの軸が変化したことで盛んになってきていますね。
 では、スマートフォンをはじめとする情報流通テクノロジーの進化があったから、新しいサービスやビジネスが誕生しているのかというと そこにはもうひとつ、大きな要素が関係しているわけです。それが日常における3つの軸の変化と、結果として生まれた新しいサービスやビジネスの間には、リアルでバーチャルな人間というものを介したソーシャルなコミュニケーションが存在しているということです。
 このコミュニケーションにはある種の指向性があり、またどちらが発信者でどちらが受信者ということではなく、例えばソーシャル上で専門性や見識、有益な情報を発信すると、結果として自分に戻ってくる特徴があります。わかりやすくいえば、ネットの情報は、発信する人に、情報も人も集まってくるということです。ツイッターのフォロワーがよい例。情報流通のスピードが瞬時になりました。
ギブアンドテイクの法則では、まず最初はギブから始めることが大切です。それから、「感染」というキーワードもモチベーションの維持と拡大には重要だと思います。賛同者がいるとわかるだけで情熱を持ち続けられますし、一方で、なにかを伝えようとする際に気をつけなければいけないのは、わかりやすさ、シンプルなものであることでしょうか?

■モチベーションとリテラシーについて

宮田●世界で始まっている新しいサービスやビジネスの具体事例が、林氏と小林氏から数多く紹介されたました。フェイスブックのザッカーバーグといった起業家の話をはじめ、どれも関った人達のモチベーションが存分に伝わるものばかりでした。
 今の日本の状況を見るて、資本主義社会が行き着いた閉塞感が支配しているように新しいことをしていくうえでのモチベーションが、どこか持てない雰囲気があるように思えてならなりませんが、会場から質問ですね。

質問者「若い世代が、これからなにかに気づき、モチベーションを持って新しいことに取り組んでいけるためにはどんなことが必要だと考えていますか?」

小林●私は『失敗』だと思います。失敗することが許容される企業体質だったり教育環境だったり、そういう組織体系にならない限りは、例えば、なにかの新しいマーケティングをやるにしても、上司が『それ本当に売れるのか?』と懐疑の目でとらえ、なにもしないうちから、上司が見てきたものの延長線で物事を判断されてしまうわけですが、それがいけないと思います。
 だってやってみなきゃわからないんだから。で、結果、「今、これが店頭で伸びています、だからこれをやりましょう」となって二番煎じ的なものばかりが溢れることになる理由です。やはり新しいものを提示しない限りイノベーションは生まれません。それには失敗は必ずあって、成功には、たくさんの屍の上に旗が立っているはずです。だからその失敗や失敗した人も再び巡回できて、その失敗を許容できる環境が必要だと思います。そういう意味では今の日本企業はリスクに対する許容量が低く、失敗の経験は、本来とてもいいことなのに、失敗に対する恐れが強いのだと思います。

林●日本は失敗したチームはすぐ解散させられます。失敗は成功に至る過程でしかないのに。ただ、企業や組織がそういう体質を変えていくことも大切ですが、失敗した本人がそこでくじけるのではなく、どうしてもこれをやるんだという気持ちを持ち続けることが重要でしょうね。
実は、我々はとても狭い世界で生きていて、ほんの一歩外へ出るだけで、あるいは新しい人と出会うことで、これまで解決できなかったものが一気に進むことはよくあります。それがセレンディピティでしょうね。

小林●オープンである以上、それを使うにはリアルな社会と同じように責任が伴うし、ちゃんとしたリテラシーを持たなければいけないでしょう。この教育は最低限必要なことだと思います。そのうえで、自分のパワーを増幅してくれるテクノロジーをどう使っていくのかが大切だと思います。

宮田● 豊かなくらしの定義は、時代や個人の考え方でさまざまだと思います。
インターネットが今日のように短期間で発展してのは、共有・シェアといった発想や、オープンに誰もが利用し簡単に活用できる環境があったからだと思います。その意味では、いまの時代はこの環境が当たり前です。若い世代にとってはあたりまえの開かれた世界、シェアやオープンといった方式がもつポテンシャルパワーをどう利用するのかという発想こそが、新しいモチベーションになり、新たなビジネスモデルの構築にもつながると思います。テクノロジーやインターネットは、あらゆるものをパワフルに増幅させる側面を持っているということを理解しておかなければいけないでしょうね。チャンスをつかむ心構え、こころざしがセレンディピティを呼びこむのかもしれません。

                                       (文責 事務局)

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