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セミナーE
Art1 「デザイナーの創るアプリケーション」

中ザワヒデキ(マルチメディア・アーティスト)
松本弦人(グラフィックデザイナー)

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■SeminarE

中ザワヒデキ氏

●中ザワ:それでは、アプリケーションということで、デジタルネンドという昨年、ア スク講談社から出したものを紹介します。私が、全体のディレクションをし、91年に 発案をしたものです。(デモをしながら)今、描いたものは2次元に描いています。 手前の面の平面に色を選んで、描くと2次元ですが、矢印のキーで、奥の方へも描く ことができます。回転させますと、3次元となっています。右のウインドウは、金太 郎アメのように、平面で切って、順次内部を動画表現しています。3次元のソフトは 、普通はこのような絵の具的な表現ができませんでした。2次元では、ドローツール とペイントツールがありますが、3次元では、ドローツールはありますが、ペイント ツールがなかったわけです。あってもいいはずなのになぜないのか、ということで作 りました。ビューワーモードでいろんな方向に回すこともできます。見え方は、今は 解像度が低い、つまり1個1個の粒がよく見えるような大きさの立方体になっているの でブロックのように見えます。でも、この原理を使って1個1個のブロックをもっと小 さくしていけば粘土のようになります。本当は、ブロックというより粘土のつもりで 作っていて、チューブツールでグジャグジャ描けるところが画期的だと思っています 。

●松本:例えば、粘土のように作ったものを普通のデータに変換するのは、将来的に可能ですか?

●中ザワ:可能ですが、今の段階ではその計画は進んでいません。 ジャギーを取ることは、イラストレーターとペイントの関係と同じで原理的にはでき ません。将来的にこのアイデアで使いたいというニーズは出るでしょうが、このソフ トに関してはしたくない。なぜなら、このソフトの概念は、第1回目のものですから 、原理に忠実でシンプルなものを作りたいからです。いろんな機能が付いているのが 便利な道具だという考えもありますが、例えば、はさみは1個のことしかできません が、使いやすいということもあります。シンプルな基本形を作っておけば、応用が利 きます。応用から先に作るのは何か変だと思います。

●松本:これを作りたかった1番の理由は、金太郎アメのアニメーションの部分じゃな いかと思うんですが。

●中ザワ:それは違う。僕にとってコンピュータ内でものを扱うのは2つの方法があります。グラフィックで言えば、ペイントツールとドローツールですけど、その対立は コンピュータ以前からあって、世界を原子論(物質)でとらえるか、イデア論(言葉 )でとらえるかということです。何か形を作れといわれた時に球を作るのが簡単だと 思うか、不定形、代表例はウンチだと思いますけど、どちらが簡単かは、人によって 違います。僕はウンチ派でした。だから、初めて3次元のソフトを触ったときに簡単 でしたが、球とか立方体ばかりできて、僕が最も簡単だと思っているウンチが作れませんでした。だから、ウンチを作るためのソフトを作ったわけです。考え方の基本として、本物の物質はカラー粘土を混ぜたようにいろんな色が混ざっていますが、外か ら見ますと1色でも中を切ってみますといろんな色が混ざっています。そのことをど こかに表示しておかなければなりません。その表示方法としてアニメーション機能が ついています。


松本弦人氏

●松本:個人的にはすごく好きだし、ポストスクリプトのようにすごいものだと思って います。将来、PICTのフォーマットとかテキストデータのように、もう1個、ボクセ ルというフォーマットができるかもしれない。例えば、1ボクセルが1ピクセルサイズ になったら、立体のアイコンのフォーマットが考えられます。アウトプットの方法が ありませんから、でき上がるものの中で1番魅力的なものがアニメーションの部分で す。しかし、立体プリンタがあれば、明解なアウトプットの形になります。

●中ザワ:要するにこれだけですと、ブロックに見えて子供のおもちゃだという話もよく聞きますが、ボクとしてはそういう概念をだしたかった。だからボクは、このデジ タルネンドというアプリケーションの概念で、作ったものが単にボタンを押すと平面 としてではなく、そのまま手のひらに乗るようにコロンとプリントアウトして出てく る、そうすれば子供のおもちゃじゃなくて産業に応用できるかもしれない。

●松本:それは、最初のアイディアの時に狙っていた?


●中ザワ:最初のアイデアは、世界初のビットマップ3Dです。ピクセルにボリュームを 持たせたボクセルを編集するというアイデアは、初めてで誰も実現していないので特 許を申請しました。ボクセルを使ったタイプのペイントツールとして、何が必要かと いう基本を押さえたのが右側の2つのウインドウです。本当はだだのペイントツール の3次元版というだけですが、マックペイントが世界初のペイントソフトですばらし い概念を提示したのと同じように、できれば3次元の中でマックペイントと同じよう な存在になりたいと願いました。ビットマップ3Dということで、いろんな使い方がでてきます。例えば、この犬のスタンプですとアニメーシ ョンになっています。これは、アニメーションで見ることを前提とした立体物でパラ パラ漫画立体と自分で呼んでいます。平面という2次元はX軸とY軸しかありませんが 、そのほかにZ軸という奥行きを加えたのが3次元です。そのZ軸をどう表現するかと いうことで、左側で奥行きを擬似的に空間モードとしてやっています。アニメーショ ンはそのZ軸を時間軸に置き換えることによって出力しています。コンピュータの中 では3次元として平等なのに、我々が見るときには違ったアニメーションになったり 、立体物だったりします。立体物とアニメーションは実は同じものだということです 。

●松本:同じシリーズでボクが作ったポップアップメーカーは、エンターティメントな 部分でアプリケーションという概念があまりありません。アプリケーションはツール であって、例えば、ネンドを作るアプリケーションであれば、ネンドでできることは 何でもできなければいけない。デザイナー気質というか、質感というものもできるん だったらする必要があると思っています。  また、エンターティメントとして楽しめる、作る行為自体が楽しいというアプリケ ーションにしたいと思って作りました。今やろうと思っているブックメーカーは、そ の逆で造本おたくのような人たちが触っても大丈夫なようなアプリケーションを作ろ うと思いました。これはデジタル写真集か何かのおまけのCD-ROMについていたもので 、カメラマンの井上という人が撮った海の写真集です。紙の斤量とか質感、そういっ たものまで全部自分でデザインされたものが造本されます。実際の本でない部分を、 例えば、丸い本を置いたらどこからでもめくれるような感じのものとか、そういった ところまでちゃんとケアをしたものがアプリケーションだと思います。しかし、マッ クペイントとかキットピクスとかいったものも、すばらしいアプリケーションですが 、エンターティメントとして完成度の高いアプリケーションではないと思います。 では、ジャングルパークのディレクター・データがどうなっているかお見せしたいと 思います。
最初にスコアを触らなければならないというのでなく、ウインドウに絵を描くこと から始まってキャスト、ペイントスコアの3つを使っていればよくて、ロールプレイ ングゲームの様に最初からやることによって順序を経て覚えるようになっています。 最初にマックを買った88年には、ここまでちゃんとデザインされたものは他にはあり ませんでした。その時すごいショックを受けて、将来アプリケーションのデザインを やるぞと誓いました。

●中ザワ:ユーザーインターフェイスがいいというのは。

●松本:例えば、ジャングルパークのシーンですが、キャストの運動でマップが描けて しまい、ここからジャングルパークの地図が決められています。10個表示して一番小 さいサイズにして何度もデータを変換するので、これより長い地図は作ってはいけな いというルールで作られています。そういう使いやすい形で作って、ジャングルパー クができました。

●中ザワ:ブックメーカーを実物に近づけたい、ポップアップメーカーを実際のポップ アップに近づけたいという話は、アプリケーション自体が作品だと思っているのでは ないでしょうか。それは、アプリケーションを使って何かを作るというのと違うレベ ルの話だと思う。

●松本:例えば、ブックメーカーを作ったときに、取材がボクに所へ来るようではまだ アプリケーションではない、つまり作品性が皆無に近い位じゃないと、アプリケーシ ョンではないと思っています。

●中ザワ:エンターティメント性はどうなるの? 本当は、エンターティメント性も作品性もないものを作りたい、それが本当のアプ リケーションだと思っているということですか。

●松本:ええ。でも中ザワ君は違うでしょ?

●中ザワ:そう。だからデジタルネンドを作っても満足できていません。ただし、作っ ていておもしろかったので、それは概念レベルでは満足しています。

●松本:ボクがデジタルネンドに期待している部分というのは、結果 的に中ザワ君にとっては副産物だったのかな。例えば立体アイコンができるんじゃないのというようなことは。
中ザワ:副産物というか、トータルの中の1つです。そのトータルを可能にする概念 があるわけで、その概念をきちんとすればいろんなことができるはずです。ポップア ップコンピュータは、ポップアップメーカーを作る前に、逆に作品を先に作ってしま った例ですね。

●松本:逆だったらよかったんですけどね。中ザワ君がアプリケーションを作った動機 は、3Dソフトをこうしたい、ネンドのように作りたいという正しい動機だと思います 。ボクがポップアップメーカーを作った動機は不純で、ポップアップコンピュータを 作って評価されて幸せだったけど、作った本人が作る行為がおもしろかったからこれ を提供できないかと思って、その方法は、飛び出す絵本を作るソフトがいいんじゃないかというところから始まっています。同時 期に思いついたのがブックメーカーで、これはそうあってはいけない。普通 に考えれ ば、飛び出す絵本のアプリケーションを作るより、飛び出さない本のアプリケーショ ンを作る方が簡単だと思いますが逆です。例えば1つはアプリケーションで、1つはエ ンターティメントである位、ものが違います。

●中ザワ:最初からプログラマーがアプリケーションを作るのはあたりまえで、我々の ようにデザインやアートという別のことをやっていたら、いつのまにか結局アプリケ ーションを作っていた。でも結果的に見ると、1つの例は、ポップアップコンピュー タを作って、そのあとポップアップメーカーという、要するに実際の作品の中にある 世界とその世界を可能にするシステムがありますけど、その世界を可能にするシステ ム自体も外に出せるはずというところからの出発ですね。 単純な質問ですけど、その紙の質感を出したいというのには、実物の本を作 る前のひな型としてこういうものを考えているのなら、シミュレーションとして意味 がありますが、そうじゃなくて実物をパソコン上でリアリティーをということなんじ ゃないんですか。

●松本:ボクの場合は、この中に1冊の本があるというオブジェクト感を1番作りたかっ た。中ザワ君はモニターをオブジェクトとしてとらえていますが、ぼくはそうじゃな くて中にちゃんとものがあってモニターだけで完結させたくない。それは、コンピュ ータを使って、グラフィックデザインをしているせいです。もし、この中に本が感じ られて、データだけど大事に取っておきたい、本棚に置いておきたいと思うようなア プリケーションができれば、書斎の1番いい位置や、ソファで読まれるような所にコ ンピュータが置かれるかもしれません。
どうして、ブックメーカーで紙の質感とかしなりとかにこだわるかといいますと、 ブックメーカーを使って自分で本を作った時に、本に綴じてあたかも出版ができるよ うな感じになるようなアプリケーションにしたい。エキスパンドブックで出版をした いと思った人はいっぱいいましたが、あれで本を読みたいと思った人はそれほどいま せんでした。でもそっちの方が重要で出版したい、なおかつ読ませたいという部分で いくと、当然綴じ方や、紙の質や量とかもやりたいと思います。本をモニターに入れ たいというのは、ポップアップコンピュータからポップアップメーカー、ブックメー カーに至るまで基本姿勢は変わっていません。ポップアップコンピュータは明らかに 3Dツールに対してテクニック不足で、逆にそれが功を奏した部分もあります。いまの テクニックなら紙がしなったり構造上正しいものができると思います。あれで質感が 出たのはマッピングのせいでなくてテクニック不足で、例えばサルの顔をアウトライ ンの板の上に貼り付けるのですが、正しいサイズで貼るとぴったりくるのに合わせ方 がわからなくてずれていました。2枚の板をぴったり合わせられないずれがかえって リアル感を出していた。普通は座標でやるからぴったりくるのに、それがずれたり、 浮いたりした分だけ紙っぽく見えました。これは、副産物かな。

●中ザワ:ボクは飛び出す絵本自体がテクノなものですから、そこがちゃんとこんな風 にできているのかと思いました。

●松本:最初にテストでレンタリングしたときにそれに気づいて、紙なんだからこれで いいんだと、次は逆にギターとかを違う形の板に貼ったりしました。

●中ザワ:これは、名古屋のナディアパークで去年の12月から提示しているものですが 、インタラクティブ型の作品で、モニタが2台あって手前のモニタをいじると向こう のモニタに抽象画が描ける装置です。これが、手前にあるモニタです。例えば「ボン ジュール」というボタンを押しますと「ボンジュール」と音がして文字もでます。こ れを向こうのモニタで見ると押したボタンに対応した抽象画がでてきます。ボタンを 押すことによって、言葉によって抽象画を描いていくものを作って欲しいということ で作ってみました。1個1個のコマンドに対して絵が3つランダムに出てくるので何が 出てくるのかわかりません。また、前に出たものを動かしたりする機能もあるので、 前のものが小さかったりしますと動いたことがわからない場合もありますが、慣れて きますと効果的に使って絵が作れます。「これは抽象画を描くためのものです」とい う説明を付けるとツールになるので、アプリケーションと作品の中間の例です。

●松本:そのうち音声認識でということも考えられます。最近おもしろかったのは、ス キャントークで、特殊なペンで印刷物とかをなぞると声がでて絵本の1ページ分位 の 文字量を話してくれます。ついに印刷物がしゃべれるようになったということでびっ くりしました。今まで印刷物とデジタルデータは相反するものでしたが、それの中間 的な要素としておもしろい。今後この手のものができてくることによって、紙とデータが印刷という媒体によってつながっていくと、もう少しわかりやすくていろ んなことができる新しいテクノロジーじゃないかと思います。ボクにとっては、スキ ャントークは最近の画期的なアプリケーションでした。

中ザワ:スキャントークは、文字が音と視覚の両方の要素があって、それをコンピュ ータが計算によって等価に扱うためのヒントかなと思います。デジタルネンドに関し ては、デジタルネンドプロというのを出したいと思っていますが、予定はなくて、立 体プリンターも予定はなくて、デジタルネンドもあのままだと用途がわからない、パッ ケージ性が弱いと思っています。子供向きにして、マックペイントに対してキットピ クスがあるように、子供向きというのをアスク講談社は考えているようです。

●松本:これらの制作は、プログラマーと組んでやるのか、プログラムを勉強して自分 の知識でするのかについては、今は基本的に、C言語が書ける人と絵が描ける人が仲良く なって何かを作っています。

●中ザワ:本当は、全部一人でやりたい。ただしプログラミングとグラフィックみたい な分業の話じゃなくて、ボクにとっては多人数で作業をするか、一人かということ、 でき上がった作品に対して自分に著作権があると宣言するのか、ないのか。最近自覚 しているのは、自分の作品であると宣言したい。そのためには、プログラミングもお もしろいということがわかったので、Lingoを使ってこういうことができるとか、こ れはできないからC言語を覚えようとか、本当はC言語を覚える時間があったら、全部自分でや りたいというのが本音です。ただし時間が限られていますから、その中で何をしたい かというかねあいで考えると、毎日忙しい気持ちでいっぱいです。

●松本:ボクはC言語の勉強もしていますが、自分で書くためでなく、このくらいならでき そうだという勘をつかむためです。ボクは基本的にアートディレクターとしてものを 作っています。だからポップアップコンピュータも、作った名刺1枚も一緒だと思っ ています。アートディレクターという自分なりのポジションでやっていくのが1番や りやすい。 パソコンのよいのは、大変だった作業内容を、やろうと思えば1人でやることも可能 にしてくれ、インターフェイスですばらしいツールであるということ。例えば、Ling oでできる範囲が広がっているけれど、ディレクターでものを作っている人、デザイ ナーですけど、ディレクターを触るというレベルではできることの10分の1も得られ ません。Lingoも最近はC言語に近い形態になってきているので、普通はちゃんと勉強しな いとできない。

●中ザワ:いろいろ、作品を持ってきたのですが、時間も来ましたので、今日はここで 終わります。

 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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