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セミナーF
Art2 「サイバースペースにおけるアート」

アズビー・ブラウン(金沢工業大学助教授)
河口洋一郎(CGアーティスト・筑波大学助教授)
鈴木康雄(金沢美術工芸大学講師)
服部 桂(「DOORS」編集委員)

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■SeminarF

鈴木康雄氏(左)、アズビー・ブラウン氏(右)

●服部:今日は3人の先生方に、それぞれの作品を見せていただきながらお話をすすめさせていただきたいと思います。

●鈴木:金沢美術工芸大学も最近ホームページを立ち上げましたので、それはインターネットでご覧いただくとして、学生の作品をビデオで持ってきましたのでご覧ください。
(卒業生および学生のCM作品を紹介)
少し補足説明しますと、KAI、コーセー、FujiフィルムやホープのCMがでてきましたが、アロンアルファのCMは少し短くしたものです。後半の作品は、アルゼンチンから留学してきていたマリアーノ・アリヤス・ルーカスという学生が、日本語のOSのMacintoshを覚えて、一年間でいろいろな作品をつくった中の一部です。一年で帰ってしまったので非常に残念です。制作のプロセスを学生と共有している状態で、学生とかかわりながら、学生がつくりたいものを手伝いながらつくっています。
私自身は、大学を出てから造船会社にデザイナーとして入ったのですが、手違いから現場で溶接をやらされたので辞めまして、帰ってきてからは建築模型をつくっていたのですが、工房をつくるというプロジェクトにかかわり、一軒の家を設計からフィニッシュまでを手掛ける機会があり、その当時に美大が映像のポストに人を探していて、偶然かかわることになりました。学生の作品に関しては、本人の見つけたテーマから作品づくりを技術的にサポートしています。私自身が、もともと映像にかかわっていたわけではないので、本人のつくりたいコンセプトやイメージにそって、作業を手伝っています。

●ブラウン:私は、彫刻からスタートしたわけですが、コンピュータは4年前から使い始めました。以前にもワープロなどは使っていましたが、本格的に画像をつくり始めたのは4年前からです。マッキントッシュのフォトショップというソフトウェアがなかったら、コンピュータを使わなかったかもしれません。それほどまでに可能性というか、いろんなことができるようになったわけです。二次元のソフトでも光や立体をコントロールできるようになりました。コンピュータを使うと1からつくることもできますが、スキャニングしたイメージを利用したり、フォトコラージュとして過去のものを再加工したりすることに使えます。
(作品紹介)
いろんなことができるので、クリエイターの世界が広がると思います。CD-ROMやスキャニング画像といった二次元のデータだけでなく、3Dのデータを利用することもあります。これは、KPT BRICE でつくったQuick Time VRの画像ですが、ご覧のように空間を動きまわるような画像をつくれます。こういうソフトウェアは、どんどん自動化の機能が増えたので、いろんなことが肉体作業から離れてできるようになりました。


河口洋一郎氏(左)、服部 桂氏(右)

●河口:自分自身で自己創出する形や色や運動について、お話しさせていただきたいと思います。コンピュータの仮想世界が、どういうふうにしたらリアリティの世界にもっていけるのかと思って取り組んできました。これからご紹介する作品で、古いものは1970年代のものです。最初は、ハイビジョンでつくった作品です。当初は、C言語じゃなくてフォートランでやりました。まだ技術者がコンピュータで点や線を引くにはどうしたらいいのかわからない時代です。これは、先ほど言った自己増殖的な世界の実験です。時間の芸術といいますか。今、画像の中にどうやって密度感を表現するかに興味があります。根本的には、コンピュータで作品が自分自身の未来をつくるような世界を考えています。自然の生物が持っている遺伝子のようなものを、どうやってコンピュータの中に持ち込むかということです。どうにもハードウェアの進歩によって、次々と新しい分野に挑戦したくなってしまうんです。近い将来、リアルタイムに3D空間の中を自由に動きまわれるようになるでしょう。ご覧いただいているデジタルの世界は、とかくコピーつまり複製芸術としての側面 でしたが、これからの自分の課題は、コンピュータが自分たちをデザインし育てている「育成芸術」といった概念のものです。自己増殖できるサイバースペースをリアリティを持たせてつくっていきたいと思っています。今あるインタラクティブは、結局はプログラムをつくった人間の手のひらの世界でしかないのです。サイバースペースの世界というのは、私にとっては、近未来的にリアリティを持たせたいために、なるべく生き物に近づけています。生き物は成長するためにいろんな遺伝子などを持っていますから、そのリアリティをサイバースペースの中で再現したいと思っています。コンピュータが、速くなればなるほどクオリティをあげたくなってしまうのですが、メディアの中の探険といいますか、まだ未発見のサイバースペースの世界に興味があります。黒川紀章さんに聞いたのですが、昔、建築の世界でメタモリズムといって、同じように自己増殖的なイメージの考えがあって、未来の建築だそうです。20世紀の代表的な文化として、コピー文化がありますが、このような自己増殖的なアート、育成芸術といったものが、21世紀の芸術として生まれてくるのではないでしょうか。人間にとって、あくまで創造力に刺激を与えるための、感性の刺激を与える、能動的な自分で自分をつくりだす作品に興味があります。作品に自己判断するような部分も入れないと、本物じゃないと思います。

●服部:インタラクティブアートといいますか作家性といいますか、作る側と見る側に分かれていないアートといいますか、たまごっちもその中の一つだと思います。


●ブラウン:こういう道具ができたことで、今までできなかった人ができるようになった。自分ではできないと思っていた人ができるようになりました。コンピュータを利用すれば自分のつくりたかったものができるようになるということがあるでしょうね。一つの魅力は、コンピュータがやさしくなったので、道具自身が楽しければ自分がつくりたいと思うようになる。道具が出てくることで、新しい表現が生まれやすい状況になっています。

●服部:こういうふうに誰もが河口さんになり得る時代に、教育の方ではどのような対応をお考えですか。

●鈴木:今、見せていただいたように内的な世界としてのサイバースペースとコンピュータ社会という意味のサイバースペースがあると思いますが、河口さんの場合は、プログラム自身までも自分でデザインしてしまうということですが、インターネットなどが社会化された時に、メディアに対する教育がこれまでも欠けていた世代にとって、どういう状況がやってくるのか興味があります。

●服部:今までモノをつくらなかった人間が、コンピュータによってモノをつくる可能性を持ったというわけですが、これからは、例えば私自身が茶の湯を実際に体験するとかいったことの意味があるのでしょうか。

●河口:私自身は、大学でメディアアートを4年間でやろうということは考えません。結局、社会の方がどんどん進んでいってしまって、流行を追う“原宿化”みたいになってしまう。追っかけっこになってしまいますから。基本的にメディアのノウハウの技術というのが危ういわけです。自分で表現したいことが、よい特徴があればあるほどおもしろいのではないかと思います。金沢というのは、そういう特徴という意味では、大変恵まれているのではないかと思いますが。

●服部:今後、デジタルが出てくることで、オリジナリティが一般 化してしまうというベクトルと、だからこそつくった人のオリジナリティが問われる時代なのかもしれません。河口さんと論議しているといくら時間があっても足りませんが、また機会があったら、お話しさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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