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セミナーB
「アニメーションの現状とデジタルの関係」

石川光久(プロダクションIG代表取締役)
菅野嘉則(日本テレビCGディレクター)
田中誠一(CGディレクター)
徳永元嘉(ウオルト・ディズニー・アニメーションジャパン(株) エグゼクティブプロデューサー)
コーディネーター:掛須秀一(ポストプロデューサー、映画編集、ジェイ・フィルム代表取締役)

TOPeAT`98 SeminarASeminarBSeminarCSeminarD98ゲスト一覧

■SeminarB

掛須秀一氏

●掛須:今日はここにお集まりの皆々様ですが、田中君は現場の人ですけど、残りのお3人の方はプロデューサークラスの方です。日本のデジタルアニメーションの状況について、今後どうなっていくとかそういったことに詳しい方達です。今関わっている最新のアニメーションの情報も今日見せてもらえそうなので楽しみにして下さい。お話も一杯したいですが、皆さんが持ってきてくれた最新映像もたくさんありますので、それらも挟み込みながら進めていきたいと思います。まず、ディズニーアニメーションジャパンの徳永さんに口火を切っていただこうと思います。

徳永:私どもの会社の方では昨年の春から、アニメーションのセルに彩 色をするっていうのがあるんですけども、セルを一切なくして完全コンピューター化が始まりました。あのディズニーのスタジオが日本の中にもあることを知らない方がほとんどのようなので、日本の中でどういう作品を過去手掛けてきているかというところを少しビデオでお見せします。これはもうみなさまご存じの「くまのプーさん」という作品なんですが、昨年の8月にアメリカで25年ぶりの劇場用ということで公開された作品です。日本では今年の8月か7月の末にはビデオとして販売されます。実はこのアニメーションはバックグランド、背景ですね、セルキャラクター全て日本の東京のスタジオで制作されております。多くの方々がこういう作品は全部アメリカで制作されていると思っているようですが、日本だけでなくアジア周辺諸国においてアニメーションの制作はかなり盛んに行われております。

掛須:アメリカ本社側で作っている部分と、アジア界隈で作っている比率とではどれ位 のバランスなんですか。

徳永:バランスですか。やっている職種が違うんですが、たぶん今の日本のアニメーションの現状もそうですけど、セルでやっているプロダクションにおいては、かなり海外にセルを発注しているような形です。これは「ガーゴエルズ」っていうんですが、日本語に直訳しますと、鬼瓦っていうやつですか、よく屋根の上についている鬼瓦ですね。ヨーロッパの方の建物にもノートルダム寺院なんかにああゆう鬼瓦のようなものです。これはディズニー初めてのアクションムービーだということでオーストラリア、東京、ロサンゼルスでコンペを行いまして、東京のデザインでいこうということで、ディズニーでは初めてアメリカからはずれた国でキャラクターのデザインからバックグランドのデザイン、ストーリボードから全て制作した作品なんです。

●掛須:これは全てシナリオから完全に日本のオリジナルって感じですか。

●徳永:脚本は、向こうの方で担当しておりますけども、その後、本の脚色だけは東京で行いました。今のが春からとりかかっている「ポカホンタス2」っていうビデオ作品です。 セルを一切廃止してやりまして、最初本当にコンピューターっていうものが導入されたときにスタッフ間における混乱が、コンピューターを使うことによって今まで確立されていたそれぞれの職人さん達の仕事の領域がお互いに犯されだすっていうんですか、境界線がはっきりしなくなった部分ができました。混乱と対立の中で今制作中なんですが、便利になったところは、はっきり言って映像表現だけではありません。実際今までのアニメーションは一カ所の中での共同作業が基本としてあったわけです。どうしても紙のやりとりがありました。うちで行っているのは例えばある部分だけはカナダのスタジオでやってもらい、専用線を使って東京のスタジオに送り最終的に緩みの調整であるとかレイヤーの調整を東京の中で仕上げていくという、今までセルでやっていた時には考えられないシステムをもう本当に現実としてやっています。昨年の春までは考えられなかったことを行っているわけですが、先週からは完成されたデジタル映像を、今まではそれをDLTにはきだして航空便を使ってロサンゼルスに送っていたんですが、その日にできた映像を東京の人達が帰る前にスイッチ一つで送っておけば翌朝にはロサンゼルスの方にもう届いていると。人はいなくて、後はコンピューターが自動的に送っていくというわけです。

●掛須:もう一年中つなぎっぱなしの状態ですか。

●徳永:多分そうですね。

●掛須:それでは次に、オムニバスの田中さん。今、押井さんと「ガルムセンキ」という名前の西暦2000年公開といっているけど、そこのデジタルエンジンって言う新しい会社が萩窪にできましてそこのスタッフとして今出向されていらっしゃるんですけども、その辺も含めてちょっとお話を聞かせて頂きたいと思います。

 


田中誠一氏(中央)、菅野嘉則氏(右)

●田中:先にオムニバスの話をさせていただきます。オムニバスジャパンっていう会社はポストプロダクションっていう編集、主にデジタル編集なんですけど編集とCGプロダクションが重なっていまして、主な仕事はCMとかイベント映像、ゲームなどのオープニングを作っている会社なんです。アニメーションとの関わりは「パトレイバー1」の収録を手伝ったときからのお付き合いだったと思うんですけども、本格的に押井さんと関わりだしたのは「パトレイバー2」で、その後ご縁があって「攻殻機動隊」と続いたんですけど、割と限られた予算の中で如何に多くの事をやるかっていうのが割と大きなテーマだったんです。監督の押井さんが望まれたことは、デジタルを利用した映像で如何に面 白いことができるかみたいなことだったので、いろいろと新しいことを試させていただいたんです。もはや今となっては、マシンの値段もどんどん下がってきて、だいたいはデスクトップかそれこそホームプロダクションでもできるレベルになってきたんですけども。
去年、石川さんの方からお仕事を頂いて「エヴァンゲリオン」の劇場用最新作の「まごころを君に」のラストシーンの方でCGをというかデジタル映像ですけど、使わせていただいたんです。主にやったことは普通 の手描きでやるとあまりにも手間がかかりすぎるもので、登場人物の綾波というキャラクターが何万人も泳いでいるところ、後に数万の十字架が飛んでいくというところとラストのエンディングタイトルです。CGで4分半ぐらいのタイトルはそうそうないと思いますが、これだけのキャラクターをまともに3Dで作ると容量 が入らないんで、一枚の絵にして増やしたという形です。この十字架と合成下のキャラクターが動いているもの自体はアニモでいただいたデジタルペイントで塗ったデータを取り込んでそれにCGの地とか、こういった十字架をパーティクルと呼んでいるんですけどツブツブのアニメーションを入れたやつです。これはデジタル合成なんですけど、もう無限大まで拡大縮小していくというのと、これは星なんですけど同じ大きさだと普通 の撮影だとあっという間に映らなくなってしまうんで少しずつその場で大きくしながら、サイズを小さくしていくというものです。普通 CGというのは、透過光といってポケモンで有名になりましたけど、ピカピカの処理がやりにくいんですね。今回は劇場作品ということもあって、フィルムレコーダーというフィルムに落とす作業があるんですけど、その時点で普段やっちゃいけないんですけが、モニターに超フラットになったブラウン管があるんですけども、それとフィルムの間に絵をぼかすディフィルジョンフィルターっていうものを入れて二重撮り、三重撮りっていう普通 はCGではやらないんですけど、それで露出をオーバーさせて光っているが如く見せたという。

掛須:フィルムレコーダーの出力レンズとフィルムの間にフィルターを突っ込んじゃったってことですか。

田中:そういうことです。マニュアルではやってくれるなと書いてありました。 要するにデジタルの今のところの問題点っていうのは、8ビットと業界では言っているんですけども256色の段階しか持たないんですね。それでふわっとしたグラデーションをかけるとガタガタになっちゃうところがあるんですよ。こういうのをフレアって呼んでいるんですけど、こう、ふわっとした感じですね。それをフィルターを使うことで光学的に処理できるので、もう無限大の階調を得られます。

●掛須:フィルムレコーダー自体、露出の開角度を変えて20露光とか30露光とかできるわけですか。

●田中:はい、巻き戻してもう一回やるということができます。

●掛須:アナログのオプチカルプリンターみたいな使い方をしたっていうわけですね。

●田中:そうですね。アイデアはそこからきているんです。何で昔からやらないんだといったらいろいろとまあ、ハードウェア上の制限があったんで、できないって事があったんですけど。 最新作の話しをします。先程紹介された押井監督の最新作品でバンダイビジュアルとデジタルエンジンとかで作っているんですけど、「ガルムセンキ」っていいまして、石川さんと押井さんと、一部、オムニバスが手伝わせていただいたんですけども、パイロットフィルムを作りまして、今日こちらに持ってきたのは3分の短縮バージョンです。デジタル実写 といっているんですけども、基本的には実写、アニメ、CG全部デジタルにしたやつを再構成して映画にする。みんな素材にしちゃえという、ちょっと乱暴な映画なんです。それを目指しているんですけども果 たしてどこまでいけるでしょうか。

●掛須:これから見ていただくのは一昨年作られたパイロット版ですね。 デモンストレーション用に作られたパイロットなので、実際の物とはだいぶ違ってくるかと思いますがとりあえず、こんなような作品を作っているっていうことで。これは、セルは全然作ってないんでしたっけ。

●田中:これは、基本的にアニメとこれはSGIですね。デジタルアニメーションではあるんですけど。

●掛須:今聞き直してみると、この音楽が川井憲次さんのやつがもろにパトレイバーだね。キャラクターの方がまだきっちりラインができてないって感じがするね。

●田中:イメージ的にはほとんどこれと変わってないんですけど、これを如何に実写 になるか、実写っていい方は多分あんまり正確じゃないかとは思うんですけど。

●掛須:造型は模型も使ったりするんですか。

●田中:それも可能性はありますが、まともには使わないと思うんですけど。もうなりふり構わずっていうところがモットーの映像になりそうです。

●掛須:身長180センチ以上のやつを500人集めろとか言ってましたね。

●田中:アニメーションを作るときにレイアウトっていうシステムを使うんですけどもそれを実写 の方に応用できないかっていうことで。

●掛須:このパイロット版でさえ、一般の人の前にさらけ出すのは初めてなんでしょ。

●田中:一応これはプレスで1回発表しただけです。なかなか門外不出なもんで。

●掛須:今ここで見てるカットなんか1回も本編中にでてこないことになりますから貴重な物ですね。ちなみに私が編集してるんです。西暦2000年の夏に公開できたらいいなって言うことですね。それでは今の話を引き継いでプロダクションIGの石川さんにお話を聞こうと思います。石川さんは「パトレイバー1」から「パトレイバー2」、「攻殻機動隊」とかいろいろ田中さんたちと一緒にやっていらっしゃって、僕はその作品のほとんどの編集を手掛けているわけなんですけど。最新の話題を含めたものとか「攻殻機動隊」のプレイステーション版メーキングの貴重な物がありますので、それをかけながらお話をしていただきたいと思います。


石川光久氏(左)、徳永元嘉氏(右)

●石川:今「ガルム」がでてきたんでそこから入りますけれども、「ガルム」のパイロットフィルムを作ったときは、アニメーションのパートをデジタルで同時期併行して作りました。「ガルム」は制作費20何億といわれてますので、お金もスケジュールもスタッフも機材もあります。それに対抗するのは、お金も機材もスケジュールもなくて作ったのは、これから見せますプレステ版の「攻殻機動隊」のメーキングなんです。これは2年半前に作り終わって、それから2年半はデジタルという波というか風というか、それが吹いて、現在のIGまでに変化した経過をお話できたらなと思います。 この「攻殻機動隊」のメーキングは今年の4月にバンダイビジュアルさんからビデオで発売されて、5月にLDに出ます。発売前にお見せできるということですが、今回はつまんで見てもらおうと思います。レイヤーというのは、通 常の日本のアニメーションのセル画でいうとセル枚数と同じですね。

●掛須:これは、セル画を描くのと段取り的には同じですよね。作画の人間がいて、背画の人間がいて。それは、旧来アニメーションをやってきた人達が手掛けていると。処理が全部、デジタルになったということですね。

石川:そうですね。基本的にはアニメーションの作り方をうまく応用していったって感じですんなり入れましたね。

●掛須:その辺が、先程のディズニーの徳永さんが言っていたみたいに、頭っからデジタルでやっちゃってるのとまたちょっと違った部分ですね。

●石川:この辺もですね、手作業の力っていうか、アニメーターの力って凄いんだなあって思いましたね。ここで専門的なことに入りますので。

●掛須:これは、最初から3Dで作ったわけですか、それとも2Dから3Dに変換しているわけですか。

●石川:それは両方ですね。3Dからプリントアウトして作画はそれを参考にして描いたり、両面 ありますね。

掛須:3Dを先に作っちゃってから2Dに落として作画の方に戻すという逆効果 もやっているわけですね。

●石川:それもしてます。やはりアニメーションとCGの組み合わせというのは凄い難しいなっていうことは、CG屋さんは凄く感じるんですよ。ただCGをCGとして見せない、違和感がないというのは、IGが持ってきたアニメーションのシステムをうまくCGのスタッフと融合できたっていうところです。 IGには凄く若い集団がいっぱいいまして、例えばこういうのを作ろうといった場合にはデジタルでやるんだっていうことで、音楽も中で作ったんですよ。そういう面 では本当はお金があればオムニバスジャパンさんとかノンリニアの先駆者の掛須さんに頼むんですけど、頼まずに全部インハウスっていうことで作らせていただきました。

●掛須:でも、音楽を専門にやってた人に頼んだとか。

●石川:違いますね、これも趣味で好きだったデザイナーが音楽もやってみたいということで、これを作ってもらったんですけど。

●掛須:音楽用ソフトを買ってそれでやってみたと。

●石川:そうですね。その辺はサウンド機材もそこそこは揃えましたね。

●掛須:動画枚数と製作期間ってどの位になるんですか。

●石川:オープニングで4000枚って言われてますので日本で。相当かかったと思いますけど。

●掛須:4000枚だと今のテレビアニメーションシリーズが約2本できますよね。

●石川:テレビシリーズの10倍の密度だと思ってもらったらいいんじゃないでしょうか。それでですね、「攻殻機動隊」のオープニングでやったという作品というと「テイルズオブディスティニー」のアニメパートとか、「サクラ大戦」のオープニングと本編もやっています。後は「鉄拳3」や「ゼナギアス」もやってたりして、今、売れているゲームにはIGが相当関わっているんじゃないかと思っています。「功殻機動隊」の完成版をちょっと見てもらいましょうか。

●掛須:劇場版の「攻殻機動隊」に比べたら草薙素子のキャラが随分色っぽいね。

●石川:そうですね。劇場版は原作の士郎さんのキャラじゃなくてアニメーション用の新しいオリジナルで作ったんですが、今回のゲームに関しては、士郎さんの原作のキャラクターを活かしたアニメーションを動かそうと、原作のマンガですね。それを大事にしたんです。これは士郎さんのキャラクターのイメージに近いと思いますね。

●掛須:今、一方では完全にノーデジタルで全くのアナログアニメーションも片っぽでやってますね。また何で。

●石川:それはですね、多分自然じゃないかなーと思うんですけどね。これはかっこよく言えば時代が要請してきたっていうことだと思うんですけど。こうやってゲームを作ってきて、ずっとアニメパートだけとか、デジタルだけではIGとしては物足りなくなるわけですね。今年の6月、7月、10月、11月に2枚組でCD-ROMの4タイトルのゲームを出そうということで、2年前位 から作ってきたものが今年完成します。まず6月に「ダブルキャスト」これはアニメーションを使ったサイコスリラーで、劇場版を1本作る位 のクォリティで作ってますので、市場に出たときはそれなりの反響になると思います。なぜIGでゲームができたかっていうと、今、アニメ界からゲーム会社に、お金のあるところに人材って流れていってしまうのが自然だと思うんですよ。でもIGは映画を作ってきて、面 白いものを作ってるっていうことがあって、大手のゲームメーカーからもIGに入ってきてゲーム開発をしたり、プログラマーから入ってきてやろうっていう人も中には、いるんだということです。これがIGの強みだと思ってます。IGは今まで準備段階で体力を整えてきたんでこれからはどんどん露出していって、いろんな若いスタッフにチャンスを与える環境を作っていきたいと思っています。ここにいる人も含めて、プロデュースからいってもやはりチャンスを与えることが最高のプレゼントだと思っていますので、このあたり是非よろしくお願いします。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  掛須:自分のところで作るゲームから人材募集まで一気にやっていただきました。ありがとうございました。それでは最後になりましたが菅野さん。スタジオジブリで「もののけ姫」のデジタルCG室長でしたか。菅野さん説明してください。

●菅野:熱い話の後でちょっとクールダウンしながらいこうと思います。僕は日本テレビというテレビ局の局員です。テレビ局の人間がなぜアニメーションというか、スタジオジブリでCGを使ったアニメーションをやったのか。そこから話し始めた方がよいかなと思います。雰囲気が突然変わりますが。テレビ局っていうのは、いろんなCG映像を作ってますがその中でデジタル映像はだいたい2つに分けることができます。ひとつはリアルタイム、生ですね、生で映像を生成する。もう一つはノンリアルタイムというか、プロダクション系CGというか時間をかけて作るものがあります。だいたいこの2種類に分けられておりまして、まぁ僕はどちらかというと後者、時間をかけて映像を作るというような作業を今していますテレビ局でどういうCGを作っているのかというと、ひとつが気象情報ですね。リアルタイムのCGです。こういったアメダスの画面 、これは気象庁ないし気象協会から雨量のデータを取ってきて、それを基にビジュアルライズするというような作業をしています。
また、最近始まりましたが、バーチャルスタジオといってCGスタジオですね、CG専用のスタジオでセットをCGで作る。こういったブルーのスタジオなんですけども、それを合成するとこうなる。これは「所さんの目がテン」のセットなんですがこういったセットのデザイン等もやっております。ここまでがリアルタイム系のCGの範疇に入ります。これ以外に番組のオープニングあるいは解説画面 、これは「知ってるつもり」の解説画面ですが、といった作業もしています。それ以外に実は番組自体をシリーズで作ってしまおう。あるいは日本テレビが出資する映画のCGパートの作業もしています。このあたりの作業が僕の仕事の一番のメインのところなんです。こういった流れで実はスタジオジブリとお付き合い始まっていろんな映像を一緒に作ってきました。
スタジオジブリというのは、この下の方にざっと作品がありますがこういった作品を作っています。そしてこの作品の中でも「平成たぬ き合戦ぽんぽこ」以降ですね。この4作品が何らかの形でデジタル映像を使った作品ということができます。僕もこの「平成たぬ き」からスタジオジブリの作品に参加しています。「平成たぬき合戦ぽんぽこ」は1994年公開の作品ですが、この中のCGパートを日本テレビの社内で作っています。このカット、一見してすぐに分かるんですが、図書館の中の本棚を3Dでつくっていると。これがジブリで使われた最初のデジタルのカットです。

● 掛須:何気ない使い方をするんですね。初期の頃はというか。

●菅野:そうですね。先程の図書館とこういったゲーム画面ですね。最初の作品で取り組んだものは、手描きではできないカットあるいはやりにくいカット、CGだとばれてもいいようなカットをやってきたということです。この「平成たぬ き」で1つ問題になったのはその色のキャリブレーションの問題があるんですね。やはりコンピューターを通 すものと、直接フィルムに撮影したものとでは色が変わっちゃうという現象があるんです。そのあたりをテーマとして取り組んだのが次の「耳をすませば」という作品です。こちらは3DのCGというのは一切使っていません。その代わりその描いた素材をデジタル上で何レイヤーも合成する。先程ちょっとお話しにでてましたけども、セル重ね6枚とか7枚重ねるとだいたい下の絵が色が変わっちゃったりしてそれが限界なんですが、デジタル上で合成すれば何枚何十枚でも合成できると。そういう作業をこの「耳をすませば」という中でやりました。

●掛須:この段階ではまだ最初のセル部分をフィルムで撮ってスキャニングしていますか。

●菅野:そうですね。セルないし美術の素材です。

●掛須:まだスキャナで取り組むっていう状況ではなかったんですか。

●菅野:1回フィルムにとってフィルムスキャニングする。直接はスキャンしてません。

●掛須:やっぱりフィルムからスキャンした方が画質の質感とか色っていうか。

●菅野:やはり色管理ができるんですよね。

●掛須:それに合わせて周りのトーンを合わせればいいと。トーンの合わせる基準ができるんですね。

●菅野:それでフィルムというかジブリの社内にある撮影台を基準にしたと。これ短編なんですが、3DのCGが若干使われています。この次のカットからが3Dですね。ここで見えてくる都市、これも実は3Dで全部ビルが建っています。ただできるだけ二次元っていうかセルの世界に近づけるようとしていますから、なかなかこう一見して如何にもパースが動いているような映像にはしていません。「もののけ姫」ではジブリの社内に今のセクションを作りましてそちらで自主制作をしています。これ予告編なんですが、先程も体内に泡が出てくるようなカットであったりとか、あるいは、こういった背景が動く背景動画のカットですね、これもデジタル合成です。この蛇のような化け物がありますが、ああいうものは、全て3DのCGで作ったカットもあります。あるいはこういう血糊ですね、口の周り、こういうのもコンピューターで貼り付けてあります。

●掛須:それは何でまた。セルでできそうなのに。

●菅野:エアブラシ、ブラシのタッチなんで動いちゃうんですよ、何枚も。

●掛須:動画にしたときにムラがでるというか、動きに変化が出ちゃうってことですね。

●菅野:あとこういった爆発もの。爆発も元は人が描いた動画なんですがそれをコンピューターの中で加工して構成したものです。とはいえ「もののけ姫」はジブリとしては最初に社内にセクションを作って取り組んだ作品なので、まだCGはマイナーです。1時間10分前後の本編中に大体コンピューターで作った映像というのは15分くらいです。その中でも3DのCGを作ったのは2、3分くらいです。こういう爆発も割とコンピューターならではというかコンピューターがあったからこそ密度の高い映像を得られたということです。

●掛須:これはセルアニメーションをやってきた人だと、ああなるほどなーと思うんですけどね。光り物とか水の質とか。それをあえてコンピューターで処理したってことのリアルさを出すために使っているって感じですね。

●菅野:ジブリでそういう作業をしてきて、現在は日本テレビの方で、テレビ屋ですから、これから映像の環境がいろいろ変わってきますが、メディア環境の中で新しいソフトの時代が到来するかと思うんですけど、そういったソフトを割とこうアニメーション技術といったものを核にして何か新しいジャンルを切り開いていけないかなあと、今考えていろいろと作業をしているところです。

●掛須:この辺で全体の話をしていこうと思うんですが、アニメーションとデジタル、昨今ではもう当たり前のように耳に入れられてしまった形にはなってはいるんですけど 、まだまだ実はデジタルで作っているアニメーションはそんなに多くはないと。特にCMであるとか、テレビ等で使われているものは結構目に付くようになりましたけれど、本格的に映画全体に取りこんでいる作品はまだまだ少ないですよね。今後先駆者となる人達がここにいらっしゃるわけなんで、その辺が今どう変わってきているのかということを中心に話を進めていきたいと思います。
まず石川さんに聞きたいんだけど、オープニング映像やゲームでオール3Dをやってる片方で、「人狼」なんていう完全アナログの作品をやっている。このプロダクションIGの中におけるバランスとか、比重というか、それと人材はどういう形になっているんだろう。何でわざわざ若い、もの凄く若いスタッフでオール手作りアニメーションっていうか、アナログアニメーションに取りかかろうとしているのかということを聞かせてください。

●石川:3年かかって今年の9月に完成予定の「人狼」という押井守原作・脚本、沖浦監督というのを本当にアナログで作っているんですけども、アニメーターの数と力量 は、ちょうど今がピークというか、なかなか若い人材が育っていかないという環境を含めまして、今じゃないと作れないっていう危機感もありますし、逆にやっぱり時代って必ずデジタルの風が吹くっていう時にですね、逆にまた失っちゃいけないものっていうのが絶対にあると思うんですよ。そういう面 ではアナログで今まで映画をアニメーションで作ってきた技術っていうのを当然継承しなきゃいけない。これを守っていかなきゃいけないっていう両極面 で考えているからこそ、逆に映画に関してはもうアナログでいこうということで。 掛須:ああ、なる程。世の中がみんなデジタルという方向に向いているさなかに若い人達がもう徹底的にセル枚数をどんどん使いまくって作るという、スケジュールもかなりオーバーしているという、とんでもない作品を手掛けているわけで、ちょっと楽しみであるんですけども。徳永さんに聞きたいんですけど、ディズニーは元々、アニメーションの老舗であって手描きで、今でこそモーションキャプチャーって言葉になってくるんだけど、昔でいうところ、実写 で1回人物を撮ってそれをなぞってリアルな動きをつくってきたという歴史のあるアニメ制作をやってきた。その中で日本はどのディズニーのアニメーションの部分をやり始めたりする問題とか、それをまた原画から全部をデジタルにしていこうという動きをとっている部分もあるわけなんだけどディズニーとしてはどういうことなんだろうね。

●徳永:それは表現方法ですか。

●掛須:やはりそれこそアナログ的なアメリカの文化と日本のアニメーションの育ち方の違いがあるにも関わらず、それをデジタルにしていっちゃう、全てそれを処理してくっていうのはどういうところからそう考えてきたんだろうね。ディズニーの本社の方かな。

●徳永:確かに映像表現方法の中でもあるかもしれないんですが。僕はディズニー本社の人間ではないので、はっきりしたことは言えませんけれど、営業的にかなりディズニーっていうのは本当に大きな会社で、そのものを作っていく人達と、変な言い方ですけど、作ったものでビジネスを展開していくという人達とは全く考え方が違うということが多々あると感じられるんですよね。

●掛須:デジタルでやるという中に、例えば動画というか、あるパターンを分析してデータにしていって、よりコストを下げるとかっていう方向もあるわけですか。

●徳永:コストを下げるよりは、むしろ今アメリカの方では、いつからでしょうか「美女と野獣」以降かなりアニメーション映画には人が入るということで、短期間に作っていこうという。

●掛須:なるほど、製作期間を短くするために。それがためなのか、世界中にディズニーはスタジオを展開して、ネットで24時間体制で稼働するなんていう方向性をとっていますよね。その最先端をいっているわけですね。

●徳永:今まだ世界中にと言ったら大袈裟ですけど、実際あるのはアメリカ本国以外にはオーストラリア、カナダ、フランス、東京だけですから4カ国ですよね。デジタルを使ったところで表現とは違う分野で、例えばカナダの場合ですと、バンクーバーとトロントで、時差が3時間もあるところで同じものを共同作業できると。基本的に多くの日本のアニメーションの場合は、フィルムができてから声を入れますよね。ディズニーだけではないんですが、ワーナーブラザーズにしても アメリカのアニメーションは、先に役者の声を入れて、それに合わせて絵をおこしていくんですよ。よく向こうの人達にも驚かれるのは、日本にいるアニメーターというのはみんな英語が分かるのかと。分かるんじゃなくて、言葉を特に英語の場合アクセントなどがありますから、言葉を音楽のように聴いて、それに合わせて絵をおこしていくという技術は、聞いている限りにおいてディズニーは、日本、韓国、台湾、中国、フィリピンとアジアの国にはもう10年も前から仕事を発注してますけど、日本にスタジオができたっていうのはそういう日本の優秀なアニメーターの人達の力っていうのが多分にあったと思うんですけど。

●掛須:ディズニーの動きの特徴的なものっていうのは、日本のアニメメーターにもう全部浸透したっていうことなんですね。

●徳永:うちで働いている人達はですね。

●掛須:田中さんに聞きたいんですけど、やっているCGの中でもどちらかというと、実写 との組み合わせっていう作業が多かったですよね。完全にアニメーション、アニメーションという形ではないですよね。

●田中:アニメーションと仕事をしだしたのは、オムニバスでは「パトレイバー2」以降ですから、最初はそれでも手探りで初めてたんで、結局「パト2」の時は、押井さんが逆にCG、CGした絵が欲しいっていうことがあったんで、一部だけなんですよ。いわゆるアニメと融合してどこにCGを使ったか分かんないっていうのが、それが数カットしかなかったんで、あとは表示映像っていってるんですけど3Dワイヤーフレームです。

●掛須:「あぶない刑事リターンズ」のミサイルカットなんていうのも全部みんなそうですよね。今、アメリカ映画なんかを見ると、もうCGなのか実写 なのか分からないってところまでリアルな世界にもってきてますよね。ああいったこと、オムニバス的にはもう完全に技術的にできるようになったんでしょうか。

●田中:時間と予算さえあればってことになりますけどね。

●掛須:本当に今回の「ガルムセンキ」っていうのは、ハリウッドと肩を並べて戦おうっていうようなコンセプトでやっているわけなんで。先に実写 映像を撮って、それをCGで全部加工してアニメーションの技術で。

●田中:制作方法はアニメーション的なコントロールの仕方です。要するに大量 の絵をコントロールするっていうのが、結局アメリカだったらアメリカのCGプロダクションの分散作業方式か、後は世界中で多分うまくいっているのがそれか日本のアニメーションの制作方法じゃないかと思うんですよ。

●掛須:最近の映像で、「スポーン」なんていうのは世界3カ国でしたっけ。30何カ所のプロダクションに分けて出したなんて、それこそ日本のアニメーションの外注の発注の仕方に近いことをやって、ああいうことは予算内でできたのかなーっていうふうに思ったんですが、それを「ガルム」っていうかデジタルエンジンはやろうという方向なんですかね。

●田中:基本的には、逆に押井さんの考えとしては「攻殻機動隊」のパイロット版をIGで作った時に手元にスタッフが、デジタルのスタッフがいるっていうのは、すごく自分の意図を伝えるためにすごくありがたかったっていうんですよ。劇場版の「攻殻機動隊」の時はオムニバスとIGの距離が1時間くらいあったので、週に1回くらいしかチェックしに来れなかったんですね。こっちとしてはできた結果 くらいしか見せられないんで、こういうのができましたって見せるんですけど、終わってからたまにメーキングじゃないんですけど、途中経過を見た時に「ああ、こっちの方がある意味ではおもしろかったね」っていうようなこともあったんです。だから今、贅沢を言うと途中経過すら見たいと、なるべくスタッフも手元におきたいということでデジタルエンジンを作った。

●掛須:「攻殻」と「パトレイバー」とやっていた中では、アニメーションは元々レイアウトがあり、きちっと、どことどこの作業分担ができますよね。ここはCG部門で作って、ここはセル画でやりましょうみたいな。CGとアニメーションの同時並行作業ができるじゃないですか。ほぼ同じくらいの製作期間がかかって、最後のマッチングするっていう段階では、ほぼスケジュールがコントロールできるわけだけど、今度の「ガルム」っていうのは実写 で全部、先に着ぐるみ付けて芝居を撮ってからCG処理をしようっていう発想でしょ。これは仕上げが大変なんじゃないの。

●田中:だから最初に本編撮影があって、それは前に作り物とかのオブジェクターなんかのCGも作っちゃうんですけども。実写 の時に使うCGを先に作らなくちゃいけないと、要するにモニターとか写ってますよね。ああいうのを先に作っておかなきゃいけないんです。

●掛須:じゃあ、もう例えば、CG部分で何か動画とからむみたいなところがあったら、先にそれができてて、ワイヤー程度のものの動きだけが。

●田中:それが先ほどから言っていたレイアウトっていうのがあると、基本的には設計はもう先に前倒しでできると。

●掛須:細かいタイミングのズレなんかは後で直すとして、基本的なものを作っておきながら現場で、片方でフィルムで撮っているんだけど、モニター上で見ながら合成した画像で「ああ、こんなふうになるんだろう」ってシュミレーションしながら撮ろうっていう。

●田中:多分シュミレーションまで必要とするものは先に前倒しでやっちゃえると思うんですけどね。現場の実写 のいいところというと、結局の現場のフレキシブル、現場の雰囲気とも言えるんですけども、それでいい絵が撮れることもあるんで。それを優先するカットは結構、割と融通 をきかしたレイアウトにして、素材待ちで後から加工しようと。

● 掛須:実写の映像だと、手持ちでこうやったりなんかすると、ちょっと1フレームずれただけで、CGを合わせるのに大変なことになるわけなんでしょ。オートモーションカメラを使うとか、そういうことになるのかな。

●田中:今回結構、割り切っちゃってて、実写はなるべくそういうのがいらないカットにして、後はいろいろと押井さんのもくろみでDV使ったりとか、3光カメラや8ミリカメラ使ってやったりなんか、いろいろと。

●掛須:菅野さんに聞きたいんだけど、そうするとちょうど今の話は先ほどの話の中に出てきたバーチャルスタジオの設定環境と似てません。バーチャルスタジオの発想って、3Dそのものをデータとして用意しておいて、スタジオ内でカメラが動いたりするとそれに合わせてパーツが変わったりするっていうシステムをとってますよね。

●菅野:そうですね。CGを使って擬似的な空間っていうか、セット空間を作ってその中に人を入れ込もうという発想ですから、そこでそのセット費が安くあがるとか、そういう狙いはないことはないんんですけども。バーチャルスタジオを進めていく上で重要なのはそういう例えばカメラのパン情報、あるいは、その動いてますよね。カメラの絶対値座標が今スタジオ内のどこにあるかというような、様々な撮影に関わる数値化できる情報を取得して、それによって何らかの絵を生成する。そういう思想が一番重要なんですよね。だから今まで、職人の勘とか、このぐらいがいいかなーと思っていたのを1回こう数値化できると、数値化することによって何か新しい表現に踏み込んでいけないかと、そんなことを今考えて進めているんですね。

●掛須:フィルムで撮る実写の世界では先に撮った映像で1フレーム1フレーム合成して、CGのパースの変化を作っていくと大変なことになりますよね。ところが逆に、元々のCGのデータとリンクするようにカメラがX・Y・Z軸のデータを逆にもらえれば3Dのパース変化ができるというシステムがもうできていますよね。

●菅野:そうですね。いかにそれを放送局ですから生でやるか、その場で作るか。そこが実は今、表現の上限がどうしても低くなってて、そこそこの映像しかまだ出ないんですけどね。

●掛須:いわゆるモーションコントロールカメラ、ハリウッドで合成のマット抜きみたいなことをするために、最初は開発されましたよね。それは今、逆で実写 を撮るときにそのX・Y・Z軸のデータを逆に全部キープしといて、それから3Dを生じゃなくて後作業ですると、データ変化にもなるっていうことですかね。

●菅野:そうですね。そのデータをためておけば、後で当然ハイクオリティな映像制作にも使えると。

●掛須:一番聞きたいことは、実はジブリの中でどうしてそのCGを使うっていうところまでの発想を変えてこれたのかっていう、そこが聞きたいなって思うんだけど。

●菅野:いや、発想自体はまだ変わってないんじゃないですかね。しょうがないんだともうデジタルやらなくて未来はないんじゃないかというような、何となくそういう雰囲気が会社全体にこう漂いはじめて。

●掛須:それは菅野さんが入って啓蒙してきたってことじゃないの。

●管野:啓蒙というか、でもスタッフ全員でそういう情報はなるべく出そうっていうことはしてましたし、実際にそのCGスタッフが全然異物として入り込んだんじゃなくて、やっぱりその今までアニメーターをやってた人が入ったりとか、あと制作側からもその辺の情報をちゃんと取る人がいたりとか、そういうことで一緒に1つのチームとしてやれるっていう雰囲気がでてきたからうまくいったんじゃないでしょうかね。

●掛須:この今の話っていうのは、この4人の全く共通点じゃないところですよね。つまりジブリっていうのは全く、大アナログ大会の中にCGができる人がスコーンと入ったわけじゃなくて、アナログの人達がCGに変化してきたわけでしょ。ところがプロダクションIGは、CGはCGだけでスコーンと入ってきた連中がたくさんいるわけだよね。だからそれで片っぽではゲームやっている、片っぽではオールセルアニメーションをもう10何万枚、枚数かけてわっと作ってるそういう状況もあるし、ディズニーはディズニーで先ほど言ったような歴史的な文化の流れみたいなものを組んだデジタル化みたいな。オムニバスの田中さんに関しては、もうそれこそ実写 の方で、メインは実写の方に合わせたCGを作っていく。もう会社の構造が全然違うわけですよね。それがこう、ここに一堂に会するとおもしろいなあと思うわけです。
それでみなさんにお聞きしたいんですけど、今後このCGの表現の行き着く先と、問題はやはり日本の場合これだけのものが確かにできるとは言ってもコストの問題があるじゃないですか。タイム、コスト、クオリティ。TQCなんていうけども、そういうのものに関してはどこまで行けるのであろうか。つまりジブリさんが「もののけ姫」で配収200いくらまでいきましたか。

●菅野:配収はまだ108億ぐらいじゃないですか。

●掛須:それで制作費が6億ぐらいでしたっけ。

●菅野:制作費は24億ぐらい。本当にそうなんです。

●掛須:機械に金食い過ぎた。そうなってくれば、そこまで利益を上げれば、20数億かけることは可能だと思うんだけれど、そこまで馬鹿当たりする作品が出てくるのであろうかとかね。ジブリはそれで会社がつぶれてもしょうがないと思って勝負に出たんだろうけど、今後こういう勝負がみんなやれるのかなって言うことを一人づつ聞きたいんだけど。ディズニーとしてはどうなんですか。オリジナルディズニージャパン作品っていうのはそういう形でやろうっていう発想もあるんですか。 徳永:できたら本当にやりたいって思ってます。うちで働いているスタッフもそう思ってますけど、ディズニーっていうそのブランドの中での手かせ足かせっていうのは多々ありますので。

●掛須:それこそディズニーって名前が付いちゃったら、もうそれで売れちゃうわけでしょ。保証されていますよね、ブランドとして。グッチみたいなブランド名がくっついているようなもんだから。(笑)

●徳永:ええ。先週、このホームビデオを今回ここで上映するにあたって、発売される前のビデオなんで、OKかどうかっていう承認をとったんですが、日本の中で年間2480万本くらいビデオが出てまして、そのうちの840万本くらいが「ブエナビスタ」発売のビデオらしいんですよ。ディズニーマークのついてるやつです。日本だけではなくして、アジア周辺諸国までになりますし、ヨーロッパ諸国でも売れてますし。マーケットは大きいですね。

●掛須:プロダクションIGとしてはどうなんですか。今やってる「人狼」のコストが相当オーバーしてきているんだけども今後はどういうふうな。

●石川:そうですね。ここにいる三者の方とは、IGとはぜんぜん比べものにならないくらい、もう会社組織が違うんで、ちょっと比べるのは失礼なんですけども。思ったのは、IGが作ってきたものは、日本だとほとんどそんなに知られてないと思ってはいるんですが、海外ではアメリカのハリウッドなんかのIGに対する信頼度とか技術の高さを認めてもらっています。そういう点では日本の企業の方はまず名前を先に大手とか。若者もそうですが、ここにも随分若い人が来ているんですが、ブランド志向が強くて、ブランドで入ってしまうところがあると思うんです。でも結局は、今作っている人間っていうのは、例えばハリウッドへ行くことがIGの今後のデジタル化とか、映画を作る上での方針かっていうとそうじゃなくて、基本的にはそこにいるスタッフ、今いる人間が何をやりたくて、みんな何に向かっているのかっていうことをつかんで、機械が云々、デジタルが云々っていうよりもやっぱり人間の能力を発揮できる会社としての、ステージっていうか舞台を作ってきた延長線で今後考えていけば自然でいいんじゃないかなと。

●掛須:いわゆる作家中心主義の会社ですね。4℃っていう大友さんの会社もあれば庵野君とこのガイナックスであるとか、ジブリなんかもそうだと思うんだけど、作家が中心になって好きなもの、やりたいと思うものを作ってきてる会社の1つですね。ただ、そうなってくると今度は予算と企画みたいなものが、絶えずこう危なっかしい世界でやり続けなきゃいけないっていうのはリスクが大きいですよね。

●石川:そうですね。その辺を含めてですね、押井さんと付き合っているのは、結構そのお金っていうのは、やっぱり売れて欲しいというのは、それなりに出していくタイプだと本人も思っているんで。そのあたりはIGでやる場合は会社ちっちゃいですから、庵野監督しかり大友さんしかりですね、冒険的なリスクを背負って興行成績の上がらないような映画は作っちゃいけないというところから入ってもらっていますんで、その点はすごく助かっていると思いますけど。

●掛須:今回は沖浦と心中しないようにがんばってくださいね。
最後になりましたけど、今度は僕の方の現状というのをお話ししまして、ちょっと見てもらってお終いにしようと思っております。 DTSというデジタル・シアター・システムと言いまして、CD-ROMから音を出すというシステムが「ジュラシックパーク」以降開発された技術としてあるんですね。それは大きな洋画系な劇場に行きますと、日本では200館ぐらい設置されていますが、こういう迫力のある音の広いサウンドが聞けるわけですね。日本の場合まだまだデジタルドルビーといわれるものもまだ数本しか作られていないんです。 そこで今回、岩井監督と作った松たか子主演の「4月物語」完全な自主映画なんですね。岩井君のポケットマネーというか、プロダクションマネーで作られた映画なんですが、どうせ大手の配給網にかからないのならば、いっそ思い切ったことをやろうじゃないかって言うことで、デジタル・シアター・システムっていう日本初の挑戦をしてみました。本当でしたら、ここにパイロット版でも持って来てDTSでCD-ROMから音を出すと「これだけ音がクリアーで音の分離性がすごいんだよ」ってお見せしたかったのですが。残念ながらほんの数日前にできたばっかりなので。 DTS社が今年、来年にかけてDTS専門のレーザーディスクを出してくるんですが、今、現段階では、日本では見れません。今日はここにその何枚かのレーザーディスクを持って来たのですが、これをかけるには専用のレコーダーが必要になりまして、特別 に分離をさせるためのシステムが必要になるんですね。
それで、そのレコーダーが今、日本に1台しかないけどその1台が金沢に来ちゃってるから東京にはない。ソフトも日本に5枚ぐらいしかないけどそれを4枚持って来てしまってるので残りはないというような世界なんですが、この家庭用のレーザーディスクが、どのくらいの映像でどういう音の迫力かを最後にみなさんに見て楽しんでいただこうと思います。「デイライト」の迫力のあるシーンになったら止めちゃいますけど、音が右へ行ったり、左に行ったりするんで、ちょっとその辺がおもしろいぞーってところを見てもらいます。この辺で止めて。はい、どんどん見たくなっちゃうでしょう。ざっと説明しておきますと6つのスピーカーを使ってます。真ん中にセンタースピーカー、画面 に向かって左にLRとありましてあと後ろにスピーカーが2つあります。そこにあるでっかいスピーカーの一番上にのっかってるのがスーパーウーハーといいまして、20ヘルツから、人間の耳に聞こえない低音、腹にずーんとくるような低周波を出しているんです。このスーパーウーハーは音の方向性が分かりませんからどこに置いてもいいわけで、この5つのスピーカーが基本的にメインになりまして、どこに音が定位 しているかっていうことをはっきりさせているわけです。だから作り方がちょっと変わってきまして、普通 は前にあった音楽が自分の頭の中、上とかちょっと後ろ側にあったりして、台詞は前にあって。あと方向感覚がわかるようなSEが、いろんな方向につっこんでいるという作り方になっているわけなんですね。その辺がちょっと特徴なんですが。
それではこのシステムが立ち上がるきっかけになった「ジュラシックパーク」のティラノザウルスのシーンを。 映像が出る前に話しつないどきますけども。このシステムはCD-ROMとか今まで出てきたシステムをうまく利用して作られたものなので、音はCDとかCD-ROMとか音が出れば一番いいに決まっているというのが先にあり、それとフィルムというアナログのものをどうリンクさせ、つなげていこうかというシステムとして立ち上がったものなんです。だから発想自体が今あるものところから、つなげてきたっていうことで、そういう意味ではコストも安く、尚かつシステムとして完成していったり、これから進化していくといういろんな意味で進化論を持っているんですね。『このDTSは「ジュラシックパーク」から使われ始めました。この雷の音と恐竜のティラノザウルスの声と、それから足音のクリアーさと、その迫力と、その表現をスピルバーグがこだわることによってこのシステムが進化してきました』って話がDTS専用のレーザーディスクの裏側に載ってるんですね。これは全部のパッケージに載ってますが、これが代表するシーンなんです。最後になりましたけど、まずDTSのロゴを1回見せてもらえますか。頭にDTSっていうロゴがつくんですけどこれがおもしろいんですね。最後に「アポロ13」の発射シーンをお見せします。今のティラノザウルスもそうですけどそれこそみんなアニメーションなんですね。最後に出てきます「アポロ13」もアニメーションというか、そのデジタル技術を駆使して作られたものですからまんざら関係ないことはないと。今のロゴを見ると一番わかりやすいですね。音がどっちの方向から来ているのかというのが。それから低音域や高音域がどこまで表現できるかっていうのがわかります。家庭のレーザーディスクでこれだけの迫力が出せるということですからね。音の世界がちょっと参加するだけでずいぶんと絵の迫力が変わってしまうということです。 どうもありがとうございました。

 
 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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