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セミナーD
「SF映画の動向と特殊映像の必要性」

雨宮慶太(イラストレーター・映画監督)
樋口真嗣(特殊映像演出)
コーディネーター:江並直美(アートディレクター、(株)デジタローグ取締役主幹)
 

TOPeAT`98 SeminarASeminarBSeminarCSeminarD98ゲスト一覧

■SeminarD

江並直美氏

●江並:私は非常な怪獣映画のファンです。昭和30年代に東宝の怪獣映画をリアルタイムに見た人間ですので、非常にその影響が強いわけですね。「本とコンピュータ」という本の創刊号のインタビューの内容で「私は1970年の万博を見て、この仕事を選んだ」というふうな締めくくりになっているんですが、実は東宝の怪獣映画というのは大きな存在だったわけです。今日は非常に優秀な二人をお招きして、実際に作られた映像を見ながらお話を伺えるということで私自身がもうワクワクしてきました。お二人が普段どのようにしてものを作って、またどのようなことを考えているかを中心に話を進めていけたらと思います。まずは樋口さんからいろいろ作品を見せていただき、そのあと雨宮監督にゲームを見せていただいて、それで最後にちょっと話をしてまとめてみたいと思います。

●樋口:今日は私が一昨年作った「ガメラ2」という映画の主にデジタル構成とかを中心にしたカットだけを抜粋して編集したものを持ってきました。時間としてはだいたい15分くらいになると思います。このビデオは、全ての作業が終わった後に「合成部門」といって主に合成する人たちが集まってパーティをするんですけど、その時に流したフィルムです。編集段階でいろいろ切られた部分も前後でクッションといって大体6コマずつ入っているんですが、これも一通 り入っていますので多少印象が違うかと思います。

●江並:今の目はオプチカルなんですか。

●樋口:オプチカルです。これは怪獣の主観なんですけども、赤く光っている部分を赤い箱にしておいて、赤いキー信号を抜いて、発光しているように見せてます。これはただ雪をだぶらせているだけなんですけども、街灯の周りだけ別 に雪を足してます。金沢の方は雪国だから分かると思うんですけど、ああいう降り方するかなって思います。これは札幌の街の中に草体という宇宙植物が生えて、それが空中に電磁波を放出した影響でオーロラみたいなのが出来ちゃうというところですね。これもオプチカルの合成でやっています。今だったら大概デジタル合成でやっちゃうんですけど、この当時はまだ、かろうじてオプチカル合成というものが残っていまして。これはデジタルですね。シネオンというシステムを使っています。本番中にこれだけのタイミングを合わせるのは非常に困難なので、あらかじめNTSC上で合成して、タイミングを見はからって、それからタイミングを全部コンバートして、シネオンの状態で合成しています。ここはネオンの光を合成しています。

●雨宮:これ35で撮って、後でビデオっぽい処理をしているんですか。

●樋口:そうですね。スーパーインポーズされてる表示は全部本物からです。これはうちの合成の親分の松本さんという人が、雨宮さんの映画もよくやってる人ですけど、渾身のオプチカル合成です。結構、オプチカルに執着のある人で、オプチカルでもここまで出来るんだという意地を、なんか見せてもらったカットなんですけど。これはCGです。全く現場では素材を撮っていません。奥にある雲はCD-ROMでよく売っている、雲の素材写 真集を貼り合わせて。

●雨宮:こういうカットは絵コンテだけで指示しちゃうの。

●樋口:絵コンテを描いて、どんどん細かいとこは全部作業しながら詰めていく形ですね。この人は「北京原人」の女の人ですね。

●雨宮:この水がすごく良くできてたよね。

●樋口:細かい白い砂を高圧の空気で吹き出しています。あんまり長く見てるといろいろバレるんですけど。オープンでやると風で飛ばされちゃってよくないですよ。この辺は劇中に出てくるニュースの映像で、わざとらしい走査線を入れて、よりテレビっぽさを強調させています。これは奥のガメラと手前の管制塔を合成しています。管制塔の周りにガメラが入る場所がなくって。これはフィルムの傷消しです。特に何か合成しているって訳じゃありません。これは光線が出ているんですけども白くてよく分かんないかな。 編集段階でかなり切っちゃったんですけど、ここはガメラの中に入ってる大橋くんという役者さんが着ぐるみ着たまんま自力で飛んでいるんです。


雨宮慶太氏

●雨宮:トランポリン使ったんですか。

●樋口:自力です。入魂の演技だったんですけど、どうしても何か、欽ちゃんぽい。 欽ちゃん飛びっぽい感じだっていうんで、間にワンカット入れちゃったんですけどね。

●雨宮:これはちっちゃいレギオンですか。

●樋口:ええ、実際に大きいレギオンで地面もぐって行くと、非常にセットの規模とか大きくなっちゃうんで、全部バラバラに撮って一つの絵にしました。ここは色が付いてる絵から、だんだん白熱した環境を表現するためにフィルム全体に脱色をかけて、しかもオーバーラップをかけて、ちょっとわかりずらいかもしれないですけどマット合成になっています。手前の実景の風景と奥のミニチュアセットが、四つも五つも重なり合って、しかもそれを1カットでやんなきゃいけないという。見ている人は分かんないと思いますが、やっている人からは相当恨まれた記憶があります。これは演習地ですが、戦車が動かせないということだったので、別 の場所で撮ったものを合成しています。いくら自衛隊が協力してくれても、実際に戦車を表に出すってことはやはり相当問題があるらしいんで、富士山の麓に富士学校という戦車の学校があるんですけど、全部そこで撮影して、さも街中を走っているように見せてます。この辺はなんだか分かんないですね。ナイターで戦車はやめた方がいいですよ。戦車は迷彩 効果が高すぎて、何にも。

●雨宮:ナイターをつぶしでやるっていうのは、最初からプランとしてあったの。

●樋口:そうですね。つぶしっぽいやつ。1984年の「ゴジラ」とかって、つぶしでもなくって、ライティングされたナイターじゃないですか。どうしてもあれが怪獣物やるときに納得がいかなくて。

●雨宮:怪獣の上からキーライトがきてるような。

●樋口:ええ。この辺はプログラムで書いたアニメーションなんですけど、演出家っていうのはわがままなもので、手前のこの当たりにきれいに線がきて欲しいけどプログラム上ではどうすることもできなくて、往生した覚えがありますね。 これはアニメーションじゃなくて、実際の曳光弾なんですけど、どう見てもアニメーションにしか見えません。お気づきにならないかもしれませんが、このカットって、実はずーっとカメラが動いてまして、それが後で、ものすごいしんどいことになって、あのカットだけで3ヵ月かかりました。


樋口真嗣氏

●樋口:こういう飛影のところは、昔ながらの伝統的なエフェクトアニメーションでやってるんですけど。

●雨宮:今の火花は生ですか。

●樋口:ええ。何で生でやっちゃったんだろうな。これもワンカットのように見えますが、ガメラとレギオンは別 々に撮っていて、さもワンカットでこうカメラワークで動いたように見せる火球の軌道をつくるのに、ものすごく時間がかかったカットでしたね。実は光線の色って、そんなにないじゃないですか。原則として赤、青、黄と緑ぐらいしか。あん時これ使っちゃったから、じゃあ今度はこれって。

●雨宮:これ劇場で見たときに、火のイメージだからオレンジだと思うんだけど、金色を狙ってるのかなって感じしたんだけど。

●樋口:これは金色を狙いました。 黄金というか、この辺で色数のインフレっていうんですか、赤やオレンジにしちゃうと火球と同じになっちゃうんで。使える色がだんだんなくなってくる非常に深刻な問題で。

●雨宮:今の撮りきりなの。ワイヤー消してるの。

●樋口:いや、消してないです。これは奇跡的に見えなかったんです。その分の合成のお金が浮いたので、今のは表でガメラの作り物をグーッと上に吊り上げているんですけど、途中で空舞台とオーバーラップさせて、徐々にガメラが雲の中に入っていくっていうようなシーンをご褒美でやらせてもらえたんです。線が消えたから。はい、以上です。これで「ガメラを見た」という気になったら、大きな間違いですから、みなさん是非レンタル屋とかで見てください。

●江並:今見てもやっぱりすごいね。ここにいらっしゃる方はオプチカルとは何か、デジタルとは何かを、おそらく全部理解してると思うけども、知らない人のために簡単な説明をしておきましょう。オプチカルは、非常に日本の伝統というか日本だけじゃないですが、昔、円谷英二が「ウルトラQ」を作るときに、オックスベリーというところのオプチカルプリンターを買って、複数のフィルムを一つのフィルムに合成をしていく仕掛けな訳です。ですから非常にアナログティックというか職人芸の世界ですね。これは日本エフェクトセンターでやってるんですか。

●樋口:オプチカル合成は主に、エフェクトセンターとイマジカです。

●江並:国内にはあんまりオプチカルプリンターがないわけなんですね。

●樋口:「タオの月」もそうでしたが私の映画とか、雨宮さんの映画とか、日本の映画の半分近くは、イマジカです。

●江並:オプチカルの合成技術は、今までの随分いろんな特撮映画を支えてきたわけです。もう一つ、今回もデジタルが使われているけれど、みなさんご覧になってて、どこがオプチカルでどこがデジタルか分からなかったですよね。解説を聞いて「ああ、なるほど」と。でも見る側にとってそういうことは、実はあまり大切なことではないと僕は思うわけです。一番思ったのは、今お話を聞いてて驚いたのは、フィルムを脱色したり、更にそれをオーバーラップをかけるとか。そしてコンピュータのこともやっている。つまりこれは樋口さんが映画フィルムとコンピュータというシステムを非常に理解しているからこそ、初めて絵が出来るんじゃないかなというふうな感想を持ちました。

●樋口:ありがとうございます。そういう意味で言うと「ガメラ2」って、やはり過渡期のものなんですよね。

●雨宮:僕なんかもそうなんだけど、真ちゃんとか僕は変わり部屋であの映画を作ってる。というか、あのガチガチの、もろオプチカルっていうか、CGワンカット使ってれば大騒ぎしてた時代から、ここ5年くらいで、今もうCG使っても屁とも思わないような時代になった。5年前と今とじゃ、やっていることが見方が違ってきている。 そういう意味では「ガメラ2」っていうのは本当に過渡期じゃないかなと。

●江並:海外の特撮映画とルックスが違うというのかな、画質が随分違うけれども、例えば「ガメラ2」を映画館で見た時に一番思ったのは、着ぐるみの怪獣映画と分かっちゃうんだけど、ドキドキするっていうのかな。昔、東宝の「ゴジラ」とか「モスラ」を見てた時にも分かっているけどなんかこう感動する美学みたいなものがね、あるというと誉めすぎかなと思ったりもするけれど。

●樋口:そうですね。なんか能の世界ですからね。 能とか浄瑠璃では黒子とかいろいろバレてるじゃないですか。浄瑠璃とかって、お客さんにはバレてるけど、なんかこう見えないわけですね。こうクッと首を向いただけで、それは悲しみなのかとか、あれはあの時のあれだとか、いろいろそういう歴史を紐解いていくと、あの操作はきっとこういう意味をなしているに違いないとか、分析できるわけじゃないですか。それに限りなく近いのかなと。

●江並:そういうふうなことは、能とか見て意図してやっているんですか。

●樋口:そういう訳じゃなくて、なんか同じような日本人の心に訴えかけるものとして、日本人にしか分からないものなのかと。外国人は全然分かってくれないですからね。何見てもファンキーだとか。 それで徐々にオプチカルプリンターも現役を引退したりして、自分でもコンピュータ様のお世話になるようになり、コンピュータの虜になっていくわけです。いろいろとあんな事もできんじゃないか、こんな事をできんじゃないかと、徐々にデジタルの表現の可能性というか、デジタルの落とし穴にズルズルと。落とし穴というか、底なし沼ですね。底なし沼にはまっていくんですけども。去年公開した「新世紀エヴァンゲリオン」という映画の、実写 パートの中で出てくる、第三新東京市の電車の窓から見てる景色というものなんですけど、実際に電車の窓から見るとあれなので、川を越える陸橋みたいなところから車で。なぜこういうところを選んだかというと一番、障害物がないところだったからです。なぜ障害物がない方がいいかというと、モーショントラッキングといって、動いているものの座標を、ずっと追いかけ続けなきゃいけないんですね。例えば奥の山が見えたと思いますけど、山の何カ所かにポイントを設定します。どういうふうに揺れてるか、その揺れを今度は合成するビル街に適合させて、全くさっきの下絵と同じようなビル街の揺れ方を再現させています。

●雨宮:これも揺れが干渉してる全体画面ですか。

●樋口:ええ、だからこれだけ見ると、ガクガクしてると思うかもしれませんが、後でその理由が分かります。実は今、あのペタッとしてるように見えたビル群は、実は3Dでこのようにモデリングしてたんですけども、多分できあがったのはジワーッとして微妙な差でしか感じられないと思います。でもその微妙な差というのが、中途半端な位 置にある奥行き感というものを醸し出すんではないかと。あと影の落ち方とかは、やっぱり頭の中で想像して描くよりも、実際に光の位 置や物の形というものを、計算して出した方が遙かにリアルなものになるという判断からそうしました。ただそれだけでも足りません。電車ですから、このような実写 から描いてあるとおり全部見せるといろいろ問題があったり、格好悪いんで、このように手前を横切る電線とか、ビルとか、看板とかそういったものでチラチラと見せています。

●雨宮:手前の素材はCGなんですか。

●樋口:別撮りというか、あの中に撮ったものを貼り合わせて作っています。完成したカットがこれです。手前の絵の揺れと、奥のビル街の揺れは、ほとんど分からないのではないかと思います。有り難いことに多くの人が「これは新宿で撮ったんではないか」と言ってくれまして、それは非常にありがたい賞賛の言葉ですが、「実はね」って言いながら「あんなビルねぇよ、新宿には」とニヤリとするのが、こういう仕事をする時の最大の喜びであります。今のものよりも、もう一押ししてみようとか、いろいろ考慮して時間が許される限り直せるので、最終的にこういう色を補正して、もう少しフィルムのザラザラした感じとか、生々しさっていうのを加えて少し寄ってます。さっきぐらいの引いたサイズだと、余りにも何か、全部見てって感じになっちゃうんで、少し寄って、もう少し臨場感みたいなのを出してみました。

●江並:これは全部コンピュータの上で合成をしているわけですか。

●樋口:そうですね。3Dのデータ、奥のビルはエレクトリックイメージで、手前のトラスとかが3Dスタジオのマックスで、コンポジットは全部アフターエフェクトです。

●江並:マッキントッシュですね。それはすごい。樋口さんはいらっしゃらなかったけど、昨日もハリウッドの人が来て、さんざんマック、マックとか言って、叫んで帰ったんですけど。でも実際これだけの画像としては大きいと思うんですけどもマッキントッシュで作業することは、パソコンにとって負担ではないんですか。

●樋口:そうなんですよ。すごい不思議な話なんですけど、アフターエフェクトが使われたのって、ここ最近のことではなくて、まあ3年、4年ぐらい前からですが、その時と比べてマシーンのスピードは格段に早くなってきてるのに、作業にかかる時間って変わんないんですよ。倍以上、早くなってるはずなんですけどね。 かかる時間は一緒なんです。何かっていうと、その間はトライ・アンド・エラーみたいなことで。何回もやっちゃ直し、やっちゃ直しが出来て、どんどん質を高めていけるっていうのがデジタルの最大の利点だと思うんですよ。オプチカルだったら、それが出来ないから逆に、一発勝負の巧みの技というものが要求されるわけですけど、どっちがいいかは今の私の立場としては何か非常に難しいですね。

●江並:昨日もマック以外に叫んでたのは、アフターエフェクトって叫んでましたね。萩野総合プロデュサーが、アドビの人がいたら泣いて喜ぶだろうと言ってましたけど。

●樋口:そうですね。今はNT版も出てるんで、どっちでも使えて。

●江並:シリコングラフィックみたいなワークステーションを使わなくても、こういうパソコンで、こういう作業が進んでいる。でもやっぱり機材とかソフトがあっただけじゃダメで、当たり前のことですが、イメージがあって、ちゃんとしたクリエイティブがあるからこうなんですね。特に最後の納品カットがすごいですね。あれはやっぱりフィルムになってからさわる訳ですか。

●樋口:いや、あれは最終的にそのフィルムグレーンって現場で撮ってもらったグレーのコマがあって、それを拡大してフィルムの粒子だけを乗っけると、かなり綺麗なというか、実は汚いんですけど、綺麗なフィルムぽさっていうものが再現されるんです。他のカットが結構、4倍くらいの増感の撮影だったので、それをリファレンスにして、こんな感じでやっちゃえ、やっちゃえと。変な話なんですけど最近の風潮としてデジタルのカットって、むしろああゆうノイズっぽさであったりとか、ハレーションであったりとか、通 常の撮影をする場合に一番忌み嫌うものなんですが。そういうものを排除するためにフィルム会社の人たちはがんばってるし、撮影部のみなさん、現像所のみなさんもがんばってるんだけども、実際にデジタル系の映像でフィルムっぽさを再現する時は、そういうのを率先して画面 の中に入れていくっていうのが、矛盾しているんですけどね。むしろそういうのがあった方がいい感じになってる。

●江並:なるほど、じゃ、次のリールを行きましょう。

●樋口:「エヴァンゲリオン」のこういうカットもありましたけども、これは使いませんでした。使わなかった理由は見ればわかりますが。さっきの合成カットですけど、一番わかりやすいbefore、afterっていうのは、こうなります。この手前をジョロジョロ横切る雑物が、いかに重要かということが、これで分かっていただけるかと思います。スカスカの中でずっと見続けてたら、あれは結構辛いものかもしれませんが、宴会芸の見えた、見えないっていうのと同じ理論ですね。これもほとんどフルCGで、なぜこのようなものをお見せしているかというと、いかに私が徐々に古式ゆかしいものから、デジタルの方向に道を踏み誤っているかということで。これはもう全く素材とか撮っていません。フルデジタルです。

●雨宮:これはオールCGですか。

●樋口:ええ、こういうのは素材を組み合わせてます。素材のライブラリーCD-ROMは江並さんとこで出してるやつじゃないですよ、あれは使えないですから。

●江並:お金払ったら使えるんすが、アメリカ製のやつですね。

●樋口:アメリカのやつですが、みんなが使っちゃってるから、もうまたこれかっていう雰囲気です。もう一つ要素としてあったのは、手ぶれですね。

●雨宮:そういうプログラムっていうか、手ぶれのデータってあるんですか。

●樋口:あります。手ぶれというか、何か乱数みたいので、適当に座標をいくつか勝手に設定してくれるやつがあって、アフターエフェクトのプラグインで、プロバージョンしかないんですけど。

●江並:もう1本いきましょうか。

●樋口:「ガメラ2」のあと、ちょこちょこ細かい仕事をしながら、ずっと準備をしてて、私の人生のかなりの部分を裂いてしまっている、押井守監督と一緒にやってる「GRM」のパイロットの短いやつと、制作発表の時に流したやつです。これはパイロットというか、動くイメージボードみたいなことで作っておりますので、アニメーションの手法です。アニメーションだと3DのCGで作られてますけれども、実際は実写 映画になります。イメージボードだけでこれだけ動くものを作ってしまうくらいの超大作だったんですが。

●雨宮:今、セルアニメで見えてるようなその絵が実写になると。

●樋口:そうですね。実写なり、実写クオリティの3DCGになる予定です。

●雨宮:見た印象がいわゆる実写の映画になるってことですね。

●樋口:アニメだったらどんなに楽なことか。

●雨宮:これは結構デザインとかもう詰まった世界なのかな。まだこれから変容していくんですか。

●樋口:もう、だいぶ変わりました。「ガメラ2」やってる頃にこれを押井さんが作ってて、実は俺、全然これの制作にはタッチしてないんですよ。セルアニメじゃなくて、アニモっていう、さっき向こうのフォーラムで何か話題に登ってた、デジタルのコンピュータ上で制作するソフトで作られてます。

●雨宮:この映画では真ちゃんは、いわゆる特技監督になるの。

●樋口:ええ。そのあと実際に実写でやるとどうなるべーかというテストとかを今やってる最中です。これはその時のものを適当に組み合わせて作ったやつで、余り見せたくないので、ぼかしたり、何かしたり、いろいろしてますけど、ちなみにシネスコなんですよ。 まあ2000年完成予定ですんで、是非見てください。

●江並:今度は雨宮監督のいろんな作品を見ながら話を進めてみたいと思います。

●雨宮:今、樋口真嗣さんが、デジタルに段々移行していくっていう話がありました。彼もやhり映画の仕事から来て、特撮という分野の中で、技術の併用があったっていうのは、流れを見て非常にわかりやすかったですけど、僕は実際にデジタルとかっていうのは、そんなに濃くないんですけども、仕事柄使うことがあると。10年前「未来忍者」という作品で監督デビューしまして、そのあと5本くらい映画撮って、2年間お休みしてたんですけども、その2年間に何してたかっていうと、ゲームを作っていたんです。そのゲームを作っているときも映画と同じような感覚で撮ってたと。僕はアニメーションっていうのは、あんまり監督するっていう感覚じゃなかったんですけど、終わってみて、非常にアニメーションの監督やった感じに近いなというのはあったんで、ちょっとその一部を紹介できればと思います。

●雨宮:これはエニックスってメーカーなんですけども、あんまり本数的に売れませんでした。セガサターンとプレイステーションの両方どっちがいいかって選択の余地があったんですけど、その当時エニックスの人が、ドラゴンクエストはサターンで出るぞって言ってたんで、サターンを選んだんですけど。今、雨宮慶太監督作品と出たのは、一応自分の満足した映画の一貫だということで撮ったので。昨日、宮本さんがマリオを見せながら箱庭の構築をやってきたとおっしゃっていたんですけど、このキャラクターは僕が高校生の時からずっと考えてたキャラクターです。アニメーションで置き換えて表現しているんじゃなくて、手と足と羽のパーツを全部別 々に描いているんですよ。その別々にあるパーツをいわゆる貼り付けて見せてるって感じなんですけど。これが自分の家です。基本的には島の中を探索して、いろいろな物を集めたりする。自分が島の中で集めてきた物を標本にしてくれる人がいて、標本にすると、こういうふうにキャビネットに飾れると。この余白に余ってるところにも物が飾れたりするんですが、こういう余白な部分って映画では絶対出来ない。一応物語があって自分が行動した行為が全てそのゲーム中に反映されます。自分がやった行動が本になるんですね。映画の主人公を自分にダブらせながら映画を見るというのはなかなか出来ないことなので、映画でやれないことをここでやろうっていうのが、かなり反映されています。これは街の中で会ったキャラクターの図鑑みたいなものですね。この作品で僕がしたのは、美術監督みたいなキャラクターデザインと全体の演出を一緒にやるっていう感じでした。最初こういうふうに出会った生き物とか拾った道具が本になっていくということを思いついて、出来たら結構おもしろいなと思たんですが、やりましょうっていざ決まった時に「これ、全部描かなくちゃいけない」って後で気がついて、これははっきり言って死にました。

 
  樋口:間に人形アニメとか入ってるんですね。それはがんばった人へのご褒美ですか。

●雨宮:がんばった人へのご褒美というよりも、そのムービーを見ないとストーリー全体が見えてこない構造になってます。どうも映像関係の人とか映画監督がゲームを作るっていうと「ムービーが入ってます」が非常に売りになっちゃうような傾向があったので、なるだけそういうふうにしたくなくて、実写 ムービーはオープニングもエンディングもほとんど使ってないです。劇中の中でムービーを使って内容に絡んでいく。お友達っていうのがいて笛を吹くと、この子は空飛んでくれる子で、こう持ち上げてくれるんですよね。また笛を吹くと、この子は帰って、別 の友達が来るんですよ。背景は、アニメーションの「カリオストロの城」とか、宮崎さんの作品の背景を描いてる人に頼んだんですけど、絵の具で描いたものを取り込んで加工して、草とかそういったのを微妙に動かしてます。サターンの特性でスクロールしないと次の画面 にいけなかったので、スクロールして次の画面を読み込んでる時に、ちょっと芝居でガープが振り向いてるような感じにしました。基本的に字幕って言うよりは、何をしゃべっているか分かんなくて、そのしゃべってる感覚をテキストデータで指示させると、大体こんな感じの雰囲気のゲームを作ってたんですけど。

●江並:やはり普通の本編を作るのと、ゲームを作るのは随分やり方が違うと思うんですけど。

●雨宮:やってるジャンルって僕とか真ちゃんはすごく似てると思うんです。僕の場合だと特撮パートもそうだけど映画全体を作んなくちゃいけないていう仕事が依然としてガツンとあって、どんどん映画を撮ってく中で、映画の中で言いたいテーマってあるじゃないですか。友達が大事だとか、お父さん、お母さんを大切にしようみたいな非常にくさいテーマって映画でずっと避けてきて、割と醒めて撮ってきた感じの部分がゲームだと、プレイステーションで「パル」っていうRPGの演出をやった時もそうだったんですが、ゲームだと非常に素直にそういったメッセージが入れられるなあっていうことが2本続いたので。今考えているのは、なんでそういうテーマはゲームだと出来たのかなっていうのと、これからまた次の作品を撮っていく中で、多分ゲームを得たものの方が大きいから、ゲームをやって失ったものっていうのは、すごくちっちゃいと思うんだけど、そういったものを今度、気にしながら作品を作っていければいいなという感じがするんですけどね。 今日はお見せできなかったんですけど、この作品の中に実写の映像が入ってまして、トゥルーモーションっていう画像圧縮で絵を見せていくものがあるんですけど、まだ売ってますから是非このゲームを買ってプレイしていただきたいんですけど、そのトゥルーモーションの映像を作るスタッフっていうのが、実は「ガメラ」チームであったり「ゼイラム」のチームであったり、いわゆる特撮映画をやってる人達が勉強しながら撮った映像なんです。圧縮した絵を見せていく行為の中で、通 常見ているフレームはビデオとかテレビだと秒30フレームって言われてますけど、トゥルーモーションの場合だと画像を優先し絵の綺麗さを追求する時は、非常にフレーム数が落ちて12フレームとか、ひどくなると8フレームとかになります。動きを優先させコマを滑らかにしたい時には、画面 が非常に小さくなってくるんですよ。それでどっちを選択していくかっていうことをカメラマンとか技術と作ったんです。今後、映画に限らず、圧縮していく作業はどんどんリアルに追いついてくる状況になると思うんですけど、今まで平気でやってきたことが出来なくなる弊害が起きてくるかと。このゲームに関してはコマ撮りの人形アニメーションをやったんです。要するに秒30フレームを前提に作って、30コマのアニメーションをやるんですけど、最終的に12コマになっちゃうから、じゃあ12コマでいいのかなっていう感じでやると、すごいコマ撮りが多くて全然使えなくて。本当は撮影日数がギュッと短くなるから、12コマにしたいわけだけど、それが読めなくて出来ない。 それとサターンの特性なのかトゥルーモーションで再現された絵を見ると赤系が非常に弱くて。いわゆる映画の場合、普通 にパンすればいいんだけど、どんどん一つの画面の中で使っているパレットを置き換えていく見せ方なんですね。そうすると赤いものがフレームインしてきた時に、急にパンの速度が落ちたりするんです。それを阻止するために、例えばこっちの画面 と赤いものとの中間色をフィルターで背景に少し入れて、若干パンが滑らかになるようにしたりしました。それがすぐデジタルの特撮カットをこれから撮っていく時の何か応用になるかっていうことじゃないんだけども、何となく今までと違う撮り方、意識の置き方っていうのかな。今まではどちらかと言うと被写 体に対して意識の置き方っていうのに非常に気を使って仕事をしてきたんだけど、それ以外のところに意識をおいて絵を撮っていくようになるのかなという感じがしている今日この頃と。これは僕より全然技術的なことに詳しい真ちゃんの方が一番直面 している問題じゃないかなと思うんですよ。いわゆるミニチュアっていうか、撮りきりとデジタルとのせめぎ合いっていうのか、今まで割と撮りきりでやってきたけど、もうみんな満足してないんじゃないかなって。

●樋口:だからもう何かしらのデジタルスルーであるとか、絵を加工してるってのがデフォルトになりつつあるんですよね。

●江並:もうそれだけ加工されてて当たり前みたいな。撮りきった絵っていうものがなくなってきているというそういう感じですか。

●樋口:ええ、だから本当もう「モスラ」だって、すごいカット数です。正月にやった「モスラ2」すごいもんね。

●江並:樋口さんはゲームとか作んないんですか。

●樋口:うーん。

●雨宮:ゲーム好きみたいですよ。「ガメラ」の撮影中に「バイオハザード」やってたって話があるからね。

●樋口:まだちょっと、ウラクレア編が。 やっぱりものを作る以上は優れた観客でなきゃいけないと思うんですけど、ゲーム下手なんですよ。そういう意味でいくとお客さんでいるのが精一杯っていう状態で。だから自分の中で、こういうゲームが作りたいとか、そういうのって何か恐れ多くって。ゲームを作る以上は自分でトランプか何かの新しいゲームでも10種類くらい考えつかないと、ゲーム作る免許皆伝ってもらえないんじゃないかなと思って。 恐れ多くって。

●江並:今日はゲームの話をすると、これまたいろいろ出来ると思うんですけど、もう少し雨宮さんの映像を見てみましょうか。まだありますか。

●雨宮:映像は「ゼイラム」のオープニングだけ持ってきてるんですけど。僕が初めてデジタルに関わった作品です。これですね。家にあったマッキントッシュで、そのマックのスイーベル3Dというソフトで全部作ったんですよ。これはオプチカルです。これはデザインしたやつをオプチカルにしました。これはマット合成なんですけども、いわゆる車と道以外は全部イラストです。雲がゼイラムの顔してるんですよ。この後、物語の舞台になる三笠町というところに車が入ってって、今で言うとバーチャルリアリティっていうか仮想空間を彼女が仕込んでいると。この辺の映像は全部マッキントッシュで、一人の人間が毎日徹夜しながら作ったんです。まだノウハウがなかったんで、マックで作ったやつをフィルムに持っていくという技術はあったんだけど、非常にコストがかかるっていうんで、もう質を取るか量 を取るかで、僕は質よりは量の方を取ったんです。かんめん撮影の粗い画像でいいから、こういうCGの絵をいっぱい入れたいと。

●樋口:コマ撮りですか。

●雨宮:いや、コマ撮りじゃなくてリアルタイムです。

●江並:これはマッキントッシュでアニメーションを作ってるわけですね。

●雨宮:ええ、リアルタイムで全部流してるっていう、街並みの次のカットが出てきますけど、簡単なこういったデータも全部スイーベル3Dで作ってます。 これは随分前ですね。6年ぐらい前です。

●江並:じゃあマックがまだすごく遅かった頃ですよね。

●雨宮:ええ、かなりね。家にあるコンピュータでここまで出来るのかと。かなり作り込めて椅子が見えたりとか、家の中も見えるんですよ。

●江並:よくそんな頃のマッキントッシュでこういうのを作ったなって感じがしますね。かんめん撮影もなかなかいい感じですね。

●雨宮:実は一番最初にマックでCGやったのは、江並さんとやった東京パンですか。

●江並:あの点字映像のやつね。

●雨宮:あれもやっぱりスイーベル3Dでやったんですけども、作ったマザーシップもどきのやつのテクスチャーデータを、今から言うの恥ずかしいけど、黒い点々があって、それをコマ撮りでとってオプチカルでグローかけてダブらすっていう、非常に今考えてダサイんだけど、そん時は手書きじゃ描けない立体感にすごい感動していたんですけど。 当然現場も進化していって、今のが「ゼイラム1」なんですけど、「ゼイラム2」の時には現場にマックがある環境で撮影したんです。マッキントッシュのモニターの中にボブっていうコンピュータのキャラクターがいて、主人公のイリアと喋ったり掛け合いをするんですが、「ゼイラム1」の時は掛け合いをビデオを1本、1本変えてやってたんだけども、「ゼイラム2」の場合は現場にマックを直接持っていって操作して、スピードもコントロールしながらやったということで、徐々に進歩していったんですけどね。 ただ「タオの月」とか、もうあそこまでテクスチャーが複雑なやつとか、光源検査をしなくちゃいけないものは、やっぱり限界があるので、がんばれば出来るかなっていう感じなんだけど、あんまり本人はがんばりたくないと。そういうことで、だんだん家のマックじゃないCGをどんどん使うような環境になってきているのが現状です。

●江並:やっぱり雨宮さんも映画を作る上においては、結構もう最近はデジタル合成をやってるわけですか。

●雨宮:結局、何か見たことないものを見せ続けなくちゃいけないっていう使命感がずっとあって、それを全うするためには、別 にデジタルじゃなくてもいいんですよ。ホンダのロボットがあるじゃないですか。あのP3を借りてきて着ぐるみを着せて撮るとか、そういうのもおもしろいかなと思うんですよ。あと本当に10メートルくらいの人、インドかどっかで探してきて着ぐるみを着せるとか、それって見たことないでしょ。今、7、8年前と比べるとあんまり誉められないですよね。昔はまだ日本で特撮やってるとか、何と言うか「まだやってるの」っていうか。

●樋口:いまだにそうですね。 雨宮:今はみんな、こなれてきちゃってるから、もっとって感じじゃない。昔は朱鷺じゃないけど、絶滅させてはいけないと、日本特撮の火を消すなと非常にそういうのがあったんですけど、今はもう特に今年なんか特撮バブルの年ですから。「ガメラ3」もあるし、ハリウッドの「ゴジラ」もあるし、「学校の怪談4」もあるし、「北京原人2」はないと思うんだけど、そういう意味では特撮バブルなので、やって当たり前、見たことないものを見せないと非常に反応がないという感じになってきました。やっぱりそういう時に、デジタル様っていうのがいいかなと。まあデジタル様だけがいいとは思わないんですけども、一応ちょっと勉強しています。

●江並:実は、お二人に非常に単純な質問がしたいんです。今日、若い人も随分来ていて、こういう仕事に憧れてる人とがいっぱいいると思うんですけども、特撮の監督あるいは、特撮映画を作る監督に一体どうやってなったのか。一体どうやったらなれるのかを、お一人ずつ簡単にご意見をお伺いしたいんですけども。まずどうやってなられたんですか。

●樋口:歴史を紐解いていくと、特撮監督という業種は、あくまでも撮影所というものが機能してた時代のなごりなんですよ。怪獣映画っていうのは撮影所があってその中で全部映画がコンプリート出来た時代のものですから。それが今、撮影所というシステムがほとんど崩壊してしまった中で、じゃあ怪獣映画を作るには、一からやらなきゃいけないし、逆に物や人を集めたり、育ててたり、そういうことを原則として誰もしていないんですよ。だから言っちゃえば、なろうと思えば誰でもなれるし、作品があればねっていうことだと思うんですよ。自分の場合でも「ガメラ」の時に、最初は金子さんが自分でやるつもりだったらしいんですけど、他に誰も決まってなかったし、やらしてって言ったら、やらしてくれたんです。やらしてって言う図々しさと根拠のない自信ですかね。

●江並:でもやはりそれまでにフィルムとか撮影とか特殊効果 に対することは、何らかの形で吸収してたわけですよね。 どうやって吸収したんですか。学校は無いですよね。

●樋口:学校じゃなくて、やっぱり現場に潜り込んで、その時に教えてもらったりとか。

●雨宮:最初、どこの現場に潜り込んだの。

●樋口:「ゴジラ」復帰第1作の1984

●江並: 1984年の「ゴジラ」というのは、今お二人の周りで活躍しているスタッフが、結構入ってたんじゃないですか。

●樋口:そうですね。木所さんという雨宮さんの映画とか僕の「ガメラ」シリーズを一緒にやってるカメララマンとかとは、そこで出会いました。

●江並:撮影所が本気で怪獣映画を作ると、スタッフが育っていったという一つの例かもしれないですね。

●雨宮:ただ育てばいいってもんじゃないと思うんだけど。でも昔と今とでは、育ってはいるなっていう感じはしますね。東宝とか毎年撮ってるから。

●江並:雨宮監督はどのようにしてなったんですか。

●雨宮:僕は映画監督になるっていうのは全然なかったんですけど、映画「未来忍者」がデビュー作なんですが、それの原作を見た時にどうしても自分で撮りたくなって、その原作を持っているゲーム会社の社長に撮らせてくれっていうふうに直接本人に言ったのが始まりです。その社長さんが、撮ってもいいよって言ってくれたので、それからですね。持ち込みとか、真ちゃんが今言ったけど、やらしてって自分でいうのが結構大きくて、そういうことの積み重ねで来てると思うんですね。 「未来忍者」をやって、もう映画を撮らないで一生の思い出にしようっていうふうに思ったんですけども、やっぱりまた撮りたくなって、ギャガって会社からじゃあ何かやんないか、3千万で好きに撮っていいからって。それで「ゼイラム」を始めたんですが、9千万かかっちゃったっという繰り返しですね。

●江並:例えば昔の監督の人だと、助監督として誰かに弟子入りして。

●雨宮:僕は助監督経験は全くなくて、監督って何やるのかまず分かんなかったですね。でも監督でないとダメだって、好きに撮れないって言われたので。だから1本目は本当に手探りでやって、かなりひどかったんじゃないかなと。

●江並:樋口さんもどなたかに付いたってことはあるんですか。

●樋口:私は結構、絵コンテをやっていて、そういう意味では助監督としてではないですけど、いろんな監督に付いたことは。

●雨宮:真ちゃんの場合は、ストーリーボードっていうか、特撮のコンテでやってて、僕はそこで知り合ったんですよ。昨日も映画の話とか、今日も利重さんとかの話を聞いてると、助監督が監督になるっていうことが、今少なくなってきて、いきなり監督になる人が多いと。ただその人たちに共通 しているのは、やっぱりシナリオが書けたりとか、一つ何かあるってことを言ってました。樋口真嗣っていう特技監督が出てきたっていうのは、やはり演出的なストーリーボードがきちんと描けるっていうところがあったからだと思うんですよ。当時ストーリーボード描いてる人ってあんまりいなかったよね。僕は逆にショックだったんですよ。ハリウッドの「バック・トゥ・ザ・フューチャー」展とかを見に行くと、ストーリーボードがあるじゃないですか。ハリウッドとかそれで食ってる人がいっぱいいるんですよ。日本にはそういう人はいないって思ってたから、彼と最初出会ったときに「それで仕事してる人いるんだな」って。

●樋口:最近、仕事ないんですよ。

●雨宮:ストーリーボードの。 うちで何か出しましょうか。

●樋口:誰も声かけてくれないんですよ。

●江並:それは監督になっちゃったからじゃないですか。

●雨宮:監督になってから書くのと、いわゆる特技監督で書くのと、やっぱりちょっと感覚的に違うんですか。

●樋口:それはもう全然違いますよ。

●雨宮:監督で書くと、それがいわゆるハンコになっちゃうじゃない。そういう快感と危険っていうのはあるのかな。どうなの。俺がやってるコンテって現場でかなり流動的に変えたりとかが多いけど、特撮のコンテって手前のミニチュアとか結構緻密じゃない。その辺はどうなの。

●樋口:だからそういった意味でいくと、自分の場合ちゃんと修行のように描いてますけどね。自分の時の方がむしろストイックになりますよ。人に頼まれたコンテって、喜んでもらわなきゃいけないから、もう過剰なまでのサービスを「こんなんどうでしょ」っていうような。だから使われないのかな。

●江並:最後に一言ぐらいで、これから一体何をされるのか、お一人ずつお願いしたいと思います。

●樋口:実は私かけもち状態です。あまりそういうことはやったことがなかったんですけど今、人生はじまって以来のピンチです。1本は先ほどご覧いただいた押井守監督の「G.R.M」で2000年公開予定なんですけど、そちらの方が準備とか非常に時間がかかって、私のすることがいっぱいあるんだけれども、室内の作業で何か気が変になりそうになったので、、外に出してくれってわがままを聞いてもらいました。それで2月から1年間「ガメラ3」という映画をやります。5月の中旬ぐらいにはクランクインして、今までよりもデジタルの仕上げの作業は長めに期間を取って、来年の3月公開予定です。

●雨宮:僕は「三日月」ってタイトルの巨大ロボット物の映画を作ってます。クランクインが多分、4月の頭ぐらいになると思うんですけども、製作期間は来年いっぱいまでかかると思います。再来年ぐらいには全部出来るっていう感じかな。これは今日、お世話になってる江並さんがプロデュースをして、僕が監督する1回目の作品なんです。それとアフタヌーンの連載がいくつ休めるかで、まあ「三日月」だけに今かけてるという状況です。

●江並:自分がおもしろいと思うことを人に伝えるということ。今、非常にアニメーションのブームであるわけだけども、やっぱり日本のこういうふうなスペシャルエフェクト、特撮映画の脈々とした歴史があって、それを次の世代へつないでいくと、今日はそういうふうな感じがしました。私が最近思っていることを少しだけ言うと、デジタルになってくると現場というのが無くなります。例えば映画の撮影現場というのは、いろんなスタッフが集まって、そこでいろんな学ぶことがあるわけです。ところがコンピュータでやっていくと、一人で全部やっちゃいますから、本当にパーソナルなクリエイティブになってくると。これは非常にいいことでもあるけれど、大きなデメリットというのは、人の仕事が見えにくくなってくる。 つまり、後ろから見て盗むというような共同作業の中で得ていく、その体験値いわゆる経験値っていうのが、非常に生まれにくくなっているんじゃないかなという気もします。逆にこういう映画の世界でも、人材不足というような話も出てましたけど、これからデジタルであること自体が、当たり前のことになっちゃうんじゃないかと思うんですが、だからそういう時代を迎えながら、今後ますますこういう分野が進んでいくことを私は願ってるし、また、その為には今日来ていただいた、このお二人の方というのは、非常に重要な方々じゃないかなと思います。どうも両監督、今日はありがとうございました。

 
(セミナーでの発言から一部を抜粋して掲載しています)
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